8月31日(日)


梅田―難波 心斎橋―梅田


大阪―塚本 塚本―大阪


阪神梅田―杭瀬 杭瀬―阪神梅田


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前回の続き。

1日のことを書くのに3週間もかかってしまい、すっかり肌寒くなっているのに暑い日の旅記事を書いている。完成するのは一体いつになるのやら。


『ベルばら』を見終えて劇場を出ると、既に陽は落ち、夜の7時半。

やはり無性に腹が減った。


新梅田食道街で何か食おう。そう思いながら阪急かっぱ横丁を歩いていると、カレー屋発見。



何やえらいオムライスが目立つな~。

カレーもオムライスも大の好物。どっち選んだらええねん?

そんなことを思いながらショーケースを眺めまわしていたら、下の方に如何にもお得な相盛りメニューがあるじゃあ~りませんか!

その中で、特に目を付けたのが「ピッコロX」。

ハンバーグ入りの「ピッコロH」と迷ったが、昔から「エックス」と名のつくものは何だかカッコよくみえてしまうワタシ。

「仮面ライダーX」、「ポーラX」、「マークX」…。

己の直感を信じ、「ピッコロX」を注文する。


カウンターの向こうでは、ベテランそうなコックさん然としたおっちゃんが忙しく立ち働いている。バイトの兄ちゃんでないところが気に入った。


ほどなく出てきたのがこちら。


下にご飯が隠れており、言うなれば“コロッケオムレツカレートマトソース添え”といった塩梅。

千切りキャベツも盛られているところが、何だか学食のカレーぽくて良い。


カレースタンドのチェーン店だということは一目瞭然。ボリュームだけを期待して入ったようなものだったが、野菜をふんだんに煮込み、スパイスが効きながらもマイルドなルゥで、トマトソースによる味変もよく、自分としてはここは「当たり」の店であった。


「サンマルコ」といい、ここといい、大阪発祥のカレーチェーンに外れなし。

ますますそんな印象を深くした。


今、調べてみたら、以前心斎橋のアーケードを歩いた時に見つけた、2階に空中ブランコがぶら下がっている喫茶店と同じ系列らしいのだ。



次の来阪時には、是非ここも訪ねてみよう。


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ピッコロカレー・阪急かっぱ横丁店


大阪市北区芝田町1-7-2 阪急かっぱ横丁内


11:00~22:00

→ H.P.

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空腹も癒された。

阪急梅田を抜け、JRの大阪駅を目指す。

歩道橋を上った先に行けと案内矢印があるが、こっちへ行くと、延々歩かされた上に更にエスカレーターで上り、ホームをまたぐ大きな橋へ連れて行かれて遠いからなーと、言う事聞かずにそのまま歩道橋脇道をすり抜ける。その先に大きな横断歩道があり、そこを渡ったほうが何となく近道の気がする。


前に来た時はなかったと思ったが、歩行者信号の脇に、「あと何秒」とデジタル表示されるようになっており、「30秒」、「15秒」、「10秒」、「5秒」と実に細やかに切り替わる。

さすが、いらちの街大阪。

こちらも歩きが早足の点では、大阪人にも負けないいらちだから、これは随分有難い。

新宿の大ガード辺りにも導入してほしい装置だ。


JR大阪駅の人波をかき分けかき分け、漸く東海道線「普通」に乗り込む。

阪急に対抗してか、大阪を中心に「JR神戸線」、「JR京都線」、「JR宝塚線」などとしきりに言ってはいるが、東北本線の中電区間のことを「宇都宮線」と無理に呼ばせようとしているのと同様、違和感を覚える。


新快速や快速ほど混まずに電車は大阪駅を出た。

随分昔、まだ関西に住んでいた時分、「ブルーライナー」時代の新快速で、何度も通った淀川を渡る。延々と続く鉄橋と、ゴトンゴトンとけたたましく響く走行音が、昔から全く変わらず、懐かしい。


ほどなく電車は隣の駅・塚本に着いた。

ここで降りるのは初めてだ。

南側に一段高く、高速道路が並行しているのが、阪神電車ぽい。

ホームの階段を下りて、東口に出た。如何にもJRの駅という感じの、どこか大味な雰囲気が漂っている。


アーケードには進まず、銀行脇を東へ進む。

食品スーパーを横目に進むと、右側に灯りが漏れた建物の裏面が見えてきた。銭湯だと直感する。果たして「松の湯」という銭湯であった。

オレンジ色のテントが夜闇に鮮やかだ。

思っていた以上に、程よいレトロ感が漂う。

ここを訪ねる予定ではなかったが、帰りにここにも寄ることにしよう。


ひとまず先を急ぐ。

左に曲がり、少し進むと、大きな車通りである。信号を渡ると、町は徐々に住宅街の表情を見せ始めた。

コインランドリーの角を曲がり、新しめの一軒家が立ち並ぶ脇に入ると、この一帯だけ区画整理されていないごちゃごちゃとした細道になる。

その入口の角に聳え立つ煙突が姿を現した。

ぼんやり灯る街燈に、トタンで覆われた煙突。脇には材木がものものしく立てかけられ、煙突がなければ木工所のような趣き。

この佇まい。道が舗装されておらず、電信柱が木製なら、1970年代といっても十分通用する光景だ。

脇に白いモルタル造りの建物が連なる。

ここは前々から訪ねたかった銭湯なのだ。

感極まって、思わず建物の周りをぐるっと1周してしまった。

暖簾をくぐると、適度に改装されてはいるが、木の引き戸が渋い玄関が現れた。


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市乃湯


淀川区塚本4-16-25


16:00~24:00 水曜休

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引き戸を開けて中に入る。

番台のおかみさんが静かに迎えてくれた。

先客は既に上がった1人しかいない。

脱衣所も適度に改装され、さほどレトロ感はないが、とんがった角地を反映してか、左辺がスパッと斜めにカットされた台形の形をしている。


浴室に入る。貸切状態だ。

白いタイル壁はこの上なくシンプルで、奥に向かって左側と、正面奥にカランがある。奥のカランの下は錆の赤みが付いている。

右側に深い主浴槽、その奥に浅い子供風呂。へりの黒御影石が重厚な表情を見せ、静かな佇まいである。


壁面のタイルはよく見ると浮き出し模様がついていた。

カラン前に腰掛け、洗面器に湯と水をブレンドしようとしたら、水も湯と同じくらい熱く、そのまま被るには熱いので、大阪銭湯らしく、へりの腰掛けに座り、ざぶざぶと浴槽の湯を汲み出して身体にかけ、最後に洗面器に汲んでカランの前に戻ってきた。

中央の、丁度主浴槽と子供風呂の境目辺りに排水溝があり、そこに向かってタイルの床が緩く傾斜している。


いよいよ湯に浸かる。

浅い子供風呂に身を横たえてみた。ほぼ寝そべる格好となる。ぬるめのお湯が気持ち良い。

続いて隣の主浴槽へ。

こちらのほうが湯は少し熱い。底からこんこんと湯が湧き出てくる。


実に静かだ。


番台のおかみさんと少し話をした。

東京から旅行で昨日から来ていること、趣味で宿を脱け出し、夜な夜な銭湯巡りをしていること、そんなことを告げた。

東京はオリンピックが決まり、大変でしょうとおかみさん。再開発が進み、古い街並みが消え、銭湯の廃業も多いと話す。

それに比べれば、大阪はまだ古い街並みが多く残っている。

それでも客足が随分と減った。この辺には銭湯が3軒あるが、駅前の松の湯さんでもお客さんの数が減ったようだ。いつ閉めようかと思っている。

そう仰っていたが、これほどの静寂感が漂う、趣ある銭湯は、出来うる限り残してほしいものだと願う。


暖簾をくぐり細道へ出ると、入れ違いに2人連れの若い男達が、暖簾の奥に消えていった。


来た道とは違う道を辿り、表通りへと出た。

振り向くと、駐車場越しに煙突が静かに聳え立っていた。

塚本駅方面へ戻る。


屋根のある「モータープール」と名の付いた立派な駐車場の佇まいが懐かしい。

駅前の商店街の外れに、先ほどと変わらぬオレンジ色のテントが煌々と明かりを灯していた。

家族連れが中から出てきた。

入れ違いに中へ入ってみる。

駅前という好立地ゆえか、客はそこそこ入っている。

脱衣所も浴室も広い。

入ってすぐ、手水鉢があり、右手側の壁沿いにL字形にシャワーとカランが並んでいる。

その反対側、女湯との仕切壁に面するように浴槽がある。


やはり大阪銭湯らしく、へりの腰掛けが周囲を取り囲む。

左奥から電気風呂、白湯。右隣に奥から寝風呂。ここはジェットになっている。その手前が深くて広い主浴槽。やはり底から湯がこんこんと沸き出していた。


脱衣所から浴室へと入る出入口上にはモダンなタイル貼りが見られ、その脇にはアフリカのものだろうか、或いは東南アジア系のものだろうか、木の大きなお面が掲げられているのが異彩を放つ。

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松の湯


淀川区塚本2-25-17


15:00~23:00 金曜休

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外壁に「ミネラル温浴泉」の看板が誇らしげに掲げられている。

先ほどの松乃湯の浴室内の壁にも同じ表示があった。


すぐ隣の間口が低い寿司屋が実に渋い表情を見せている。ここはいずれ是非寄ってみたい店だ。


短いアーケードに行ってみた。

既に夜9時を回っているせいか、居酒屋以外は軒並みシャッターを閉じる中、本屋が一軒開いている。黄色い回転書架が実に懐かしい。

大昔、町の本屋さんといえば、こうした黄色い回転書架に絵本、店先の平台には「めばえ」や「小学○年生」といった子供向け雑誌。それが定番であった。

駅に戻ろうとして、ふと駅前の喫茶店に目が留まった。

かき氷の看板に引き寄せられ、そのまま中に入ってみた。

山荘のロッジ風の内装が、落ち着かせてくれる。

湯上りに冷たいかき氷にありつけるのは有難い。


「マンゴーデラックス」と「ミルクコーヒー」。随分と迷ったが、「ミルクコーヒー」にした。


ほどなく氷が運ばれてきた。

意外と大きな器に氷が盛られ、バニラアイスが誇らしげに鎮座する。

コーヒーシロップと練乳の取り合わせが、「コールコーヒー」という古い呼び名を思い出させる。バニラアイスの甘みも加わり、甘いコーヒーフラッペが懐かしく感じられる。

喫茶店のかき氷らしく、粗挽きのザクザクとした食感だが、それが湯上りの火照った身体には有難かった。

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ケニア


淀川区塚本2-28-24


8:00~23:00 無休

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再び塚本駅。大阪行の電車を待つ。

外側線を通過する新快速は勿論のこと、内側線を通過する快速でさえ、猛スピードで通過し、まともな静止画像に収めることはできない。



下り「普通」が完全に停まった時の写真だけが、唯一まともな写真になった。

漸く上りの「普通」が来て、それに乗り込み1駅。大阪である。

これで大人しく宿に戻れば良いものを、尚も懲りずに今度は阪神梅田を目指す。

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今では少数派になってしまった赤胴車の、甲子園行急行が停まっており、これに乗りたいが、向かう先が杭瀬なので、どうせ乗っても野田までだ。諦めて隣のホームの普通に乗る。

途中の小駅に停まる度に、客が降りていく。

短い駅間の中、それぞれ需要があるのがわかる。

電車はやがて杭瀬に着いた。ここで降りるのも初めてだ。

高架線沿いに少し東へ進み、左折する。左手側に公園を臨みながら、北方へ直進する。

途中、いい具合に草臥れた銭湯を見つけるが、目的地はこの先にあるので我慢してスルーする。

やがて道が交錯する広い場所へ出て、すぐ先の国道へ至る。少し西へ戻って渡った先、夜闇にもくっきりと煙突のシルエットが浮かんでいた。

狭い路地を少し進むと、目的地が姿を現した。

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第一敷島湯


尼崎市杭瀬本町1-25-5


15:00~23:00 火休

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小ぶりの唐破風屋根が何とも愛らしい門構えである。

脱衣所もこじんまりとした綺麗な作りだ。


既に遅い時間だったせいか、他に客は誰もおらず、ここも貸切状態。


浴室は向かって右側にカランが並び、左側の女湯との境壁際に浴槽が並ぶ。

手前の円形の主浴槽がひときわ目を引く。

なみなみと静かに湯が湛えられ、底の方からこんこんと湯が湧き出ている。

主浴槽の円の一部が欠けたように、奥の浅い浴槽に接し、更にその奥に薬湯がある。

そこは「氷的クール」と書かれたぬるめの湯で、身体を伸ばし、十分寛ぐ。


仕切壁には松の枝が水辺の断崖絶壁に掛かる中、一筋の滝が流れ落ちる構図の、美しいモザイクタイル絵。


白壁を背景に、浴槽や床を彩るタイルの種々様々な意匠に目を奪われる。市松模様、小石模様、縦割り文様…等々。


とりわけ目立つのが円形主浴槽の縁に配された、薄緑色のタイル。カマボコ型に盛り上げられるように小さな長方形のタイルがびっしりと並ぶさまは圧巻。


十分堪能し、身体を拭き拭き、スカールを飲みながら、番台のおかみさんと少しお話した。

狭いのでサウナなどは作れないと仰っていたが、これだけ見事なタイルの意匠はそうそう見られるものではない。


門構えも、脱衣所も、浴室も、全体的に小じんまりとした作りの中に、美麗という形容がピタリと当てはまる、そんな銭湯である。


玄関にこんな壁新聞を発見した。

おかみさんのお手製なのだろうか。

地味だが、こんな営業努力が感じられるものを見つけ、何だか嬉しくなった。

まだまだ活力を感じさせてくれる愛さるる銭湯。

また訪れたいと思う。



表へ出ると、既に辺りの民家はひっそりとした表情を湛えていた。

国道へ出る。歩道橋際で向こうにひっそりと煙突が聳えている。

再び国道を渡り、元来た道を駅へと向かう。

途中、何だか物々しいお城の白壁みたいなのが延々と続くな…と思って、後で調べてみたら、神社だった。


先ほど通りすがりに見つけた白川温泉という銭湯は、既に閉まった後だった。

まだ中から煌々と明かりが灯っている。

阪神電車の杭瀬駅へ再び戻ってきた。

カーブした駅の、他に誰もいない上りホームで電車を待っている。

やがて静かに下りの普通が停まり、出発していった。

上り線は、直通特急、急行と立て続けに猛スピードで通過していった。


漸く来た普通電車に乗って梅田へと向かう。

梅田に着くと、先ほど目の前を通過していった、「“たいせつ”がギュッと」のラッピングが施された9000系電車が停まっていた。

1日1本しかないレアな「特急・神戸三宮行」になっていたので、近くに寄って記念撮影。

三宮寄りの先頭車のほうが、間延びしない締まった顔付をしてはいるが、流石に6両分歩く気力はもう残ってはいなかった。

ホテルの朝食バイキング→すっちー→アメリカン→まんだらけ→長大ソフトクリーム→ベルばら→カレー→銭湯梯子→氷→再び銭湯。

…漸く長い一日が終わった。