本来、今日は別のテーマを考えていたのだが、予定を変更してお送りする。
先週金曜日、24日の『爆報THEフライデー』2時間スペシャルで、佳那晃子さんの近況が放映された。
同番組名での記事は、以前島田陽子さんが出演された時に使ったので、重複を避けるために上記タイトルとしている。

昨年1月にご自宅で倒れられ危篤と、インターネットのニュースで読み、大きな衝撃を受けた。
クモ膜下出血だという。
一時期は頻繁にTVドラマに出ていたのに、ある時期から姿を見なくなったと思っていたら、週刊誌で腎臓を患っていると知った。長い闘病生活から漸く脱し、舞台の仕事に復帰したと書かれており、一安心したものだったが、その後暫くお見掛けしないと思っていた矢先のことであった。
往年の美人女優が変わり果てた姿で、痛々しい反面、嘗て売れっ子だった放送作家の夫君が、自身の追い詰められた生活をも顧みず、献身的な介護を続けている。というのが番組での取り上げられ方であった。
番組の取材でカメラを向けられれば、もしかしたら何らかの反応が見られるのではないか。その一心で取材を承諾されたのだという。
無論ご本人の知るところではない。幾ら夫とはいえ、本人の承諾なしに、意識のない闘病中の姿を世に晒して良い筈がない、という批判も多いという。
往年の姿が美しければ美しいほど、そのイメージのままにしておいてほしい。そっとしておいた方が良いのでは。そういう論調である。
だが、そのヴェールを剥ぎ、現状を知らしめる決心を夫君にさせたのは、人知れぬ介護生活を続けることができないほど、それだけ追い詰められた状況だということなのかもしれない。
カメラを向けられれば、妻の女優魂が、その意識を呼び戻してくれるかもしれないという思いを、「そんなアホな」と片付けてしまうのは簡単だが、どんな声でもいい。今の状況を世に知らせることで、何らかの声援が欲しい。そんな思いからだったのだと思う。
実際、「佳那晃子さんを応援する会(http://www.kanaakiko.net/)」というサイトがあり、夫君のブログに詳しい闘病状況が綴られている。
現在、佳那晃子という名をきいて、パッとわかる人は以前よりは少なくなってきた気がする。
ところが『爆報』放映後、検索で1位になった時もあったようだ。
このような形で、再びこの方の名が知れ渡るというのは、何ともやりきれない思いだが、番組中で奇跡の復活を信じて一筋の光明を照らすような終わり方をしていたのが救いである。
夫君のブログを読むと、立ってリハビリとも書いてあり、番組に出ていたよりは回復に向かっているように思える。
とかく直接関係のない人間は、眉を顰めて批判がましいことを言いがちだが、暖かく見守るしかないではないか。
*********************
古くからの友人で、昔のTVドラマや特撮番組に詳しいN君という方がおり、偶に会うとそんな話題が必ず一度は出るのだが、何年か前に『快傑ズバット』の話から、私が佳那晃子さんの名前を出してみたところ、即反応があり、流石N君と思ったものだった。そんな友人がいることを有難いと思っている。
まずはその辺りから。
佳那晃子さんは以前は大関優子という、より本名に近い芸名であった。
1980年の映画『ザ・ウーマン』出演を機に現在の名に改めている。

『快傑ズバット』第3話「悲しき純金の天使」に大関優子名義で出演がある。
非電化時代の八高線が舞台で、金子という駅が出てくる話がある。
美人の若い看護師がディーゼルカー車内でチンピラに絡まれているところを早川健(演:宮内洋)が助けるという場面が冒頭で出てくる。
この美人看護師役が大関優子(佳那晃子)さんである。
鉄道ファン的見地からいえば、往年の八高線の沿線風景と車両が存分に堪能でき、おまけに確か「キハ35900番台」というステンレス製気動車まで出てくるのだから涙モノだ。(前面に朱帯が入った後の姿)
さて、かいつまんで筋書きをいえば、金バッチ連合という悪の組織に純金製の天使像が狙われ、早川健がその護衛を買って出るが、同じく金バッチ連合に兄を殺され、恨みに思っているしずか(大関優子)を助けた縁で行動を共にしていたところ、実はしずかこそが金バッチ連合のスパイで、一度は早川健に隠し持っていたピストルを向けるものの、改心したところをあえなく殺されてしまい…といったところである。
ちょっと余計なことを書くと、冒頭オープニングの始まりのセスナから早川健が降り立ち、ポーズを決めた後、「ベベン、ベベベベン…」と曲の前奏が始まり、「か・い・け・つ ズバ~ット」っていうお馴染みの箇所で、最初の1・2話だけが、「か・い・け・つ ズバ~ット」の声が妙に甲高くちっとも強そうに聞こえない。
初めて見た時、ものすごく違和感を感じたものだったが、この第3話からドスの効いた強そうな声に変わっている。
しかし、耳に残ってしまっているのは、この妙に甲高いほうである。
何だか「か・い・け・つ ズビャ~ット」といっているように思えてならない。
*****
佳那晃子という名をきちんと覚えたのは割と後になってからのことだが、比較的よくTVで見てきた女優さんの一人である。
私にとって印象深いものとして、筆頭に挙がるのは1990年の『土曜ワイド劇場』「妖しい稲妻の美女 江戸川乱歩の「魔術師」」のヒロイン役である。

天知茂氏が亡くなった後、6作作られた北大路欣也氏が明智小五郎役を務めた内の最終作で、これはリアルタイムで見た。乱歩作品というのがものをいい、VHSの3倍速だが、放映当時録画したテープを今でも保有している。
「魔術師」は「江戸川乱歩の「美女」シリーズ」の最初期である2作目としても映像化され、本作はそのリメイク版である。
その時は、佳那晃子さん演じた役は夏樹陽子さんがやっていた。
北大路版になって、明智が妙にバードウォッチングやらマイコン(!)(~パソコンではなく敢えて「マイコン」といいましょう~)やら、いやに健全な趣味に興じる姿を見せつけられ、天知茂の妖しい中年男のダンディズムのようなものに密かな憧れを抱いていた私としてはどうにも納得がいかず、物語自体も「意外な犯人像」という視点がぼやけてしまうなど、当時はけなしてばかりいたが、こと「魔術師」に関しては出来が良く、寧ろリメイク版のほうが良いのではないか?とさえ思ってしまう始末である。
佳那晃子さん演じたヒロインの艶やかな魅力のせいであろうか?
(夏樹陽子さんには『エマニエルの美女』という大傑作があり、そちらの印象の方が遥かに強い。)
もっと突っ込んだ話もしたいところだが、推理小説愛好者のはしくれとして、敢えてネタバレになるようなコメントは避けねばならないだろう。
*****
佳那晃子さん関連で、個人的に他に是非とも触れておきたいのは、『華の誓い』という1991年夏に放映された昼ドラマである。東海テレビ制作のいわずと知れた“昼ドラ”の1つであった。
大筋は、父母を亡くし弟の面倒を見るために遊郭で身を売るようになった女性の一代記といったところである。
子供時代から話が始まるので、最初は、増田未亜さんという、後に『真珠夫人』で主人公の横山めぐみさんの義理の娘役を演じた女優が、若いというよりは少女時代に主役を務め、話が進んでから佳那晃子さんにスイッチした。
最初の舞台は青森で、今この文章を書いていて、増田未亜さんが津軽三味線を弾く姿が目に浮かぶ。
今にして思えば、既にかなりの作品への出演歴を持っていたベテラン女優の佳那晃子さんが、昼の連続ドラマに主演したというのは意外な感じさえするが、例えば『華の別れ』という作品では、手塚理美さんが主演なので、当時は決して珍しいことではなかったのかもしれない。
(現在放映中の『聖母聖美物語』の主演・東風万智子さんにしても、元は真中瞳さんなので、今となってはかなりベテラン女優といえるだろう。)
この枠が一般に知名度が上がったのは、2002年の『真珠夫人』がきっかけで、更には「ドロドロ」などとよく言われるようになったのは、2004年の『牡丹と薔薇』がきっかけだと思われる。
しかし、それ以前にこの枠のドラマを非常に有名にしたのは、1988年の『華の嵐』だと思う。(~高木美保さんの代表作といってよいと思う~)
その前の『愛の嵐』 (1986)(主演:田中美佐子)、『華の嵐』人気を受けて、メインキャストはそのままにリメイクした『夏の嵐』 (1989)、これらを合わせて当時「嵐三部作」と呼ばれていた。
当時は「ドロドロ」などとはいわれておらず、どちらかといえば骨太な文芸作品を原作とする波乱万丈の物語が『愛の嵐』、翌1987年『愛伝説』などの相次ぐヒットを機に増えていった。
それらは「グランドロマン」と銘打たれ、例えば
・『レ・ミゼラブル』を翻案した『愛無情』(1988年:主演:榎木孝明)
・トルストイ作『復活』翻案の『華の別れ』 1989年:主演:手塚理美)
・その後少女マンガ乃至はレディスコミック原作の
『風のロンド』(1995年:原作:津雲むつみ『風の輪舞』,主演:森口瑤子)
『砂の城』(1997年:原作:一条ゆかり同名作,主演:森下涼子)
『緋の稜線』 (1998年:原作:佐伯かよの同名作,主演:森下涼子)
などが原作翻案ものとして名が挙がる。
又、 『華の嵐』、『華の別れ』、『華の誓い』の3作をまとめて「華三部作」などともいわれていたようだ。
*****
リアルタイム視聴経験としては上述の2作が突出して印象深いが、他には1994年にフジTV「金曜エンタテイメント」枠で放映された『怪談KWAIDANⅢ 牡丹灯篭』のお露(「新三郎さま~」といって若侍に付きまとう姫君実は幽霊)も強く記憶に残る役である。
又、後で気が付いた、もしくは後で見たものの中では、
・映画『犬神家の一族』(1976年、市川崑監督)
・『横溝正史シリーズ / 三つ首塔』(1977年)
・『探偵神津恭介の殺人推理3 魔笛に魅せられた女』(1985年)
などが印象深い。

『探偵神津恭介~』のヒロイン役は、私がイメージする佳那晃子さんそのものといってよい和服姿の人妻で、恐らく吹き替えではあろうが、一人深夜の豪邸の浴槽に裸身を横たえつつ恐怖に怯える姿が拝める。
『横溝正史シリーズ / 三つ首塔』の佐竹由香利役は、大関優子名義だった時のものである。
ある富豪の遺産相続を巡って現れる主役:真野響子さんの、いとこたちの中に妙な興行師がおり、この興行師が夜な夜なセーラー服の美少女を鞭でいたぶり、最後は脱がせて晒し者にする、そんな扇情的なショーを演じる者がいる。そのセーラー服美少女役であった。

映画『犬神家の一族』は、いわずと知れた超有名作で、個人的には島田陽子さんの珠世さんの印象が極めて強い作品だが、青沼菊乃という、三姉妹に折檻され赤ん坊を奪われるという女工役が若かりし大関優子さんである。
蛇足ながら、横溝正史の『三つ首塔』には、「火曜日の女」シリーズ『いとこ同志』(1972)(主演:島田陽子)という作もあり、こちらは金田一探偵が出てこないという大胆な脚色がなされている。同じ原作のドラマ化同士なので、見比べてみると面白い。
こんなふうに佳那晃子(大関優子)さんは若かりし頃から、常にその容貌とは裏腹に、時に大胆な妖艶な役柄が多く、寧ろ上述の『快傑ズバット』における悲運の看護師役などは大人しい役だとさえいうことができるであろう。
*****
他に有名な作としては、
映画『四季・奈津子』 (1980年)
映画『魔界転生』(1981年、深作欣二監督)の細川ガラシャ夫人役
が挙げられよう。
細川ガラシャ夫人は色々な物語で語られるが、山田風太郎原作の『魔界転生』では、妖艶を通り越した魔性の女として描かれる。佳那晃子さんの代表作といってよいかもしれない。
レギュラーでこそないものの時代劇へのゲスト出演歴は多く、大関優子時代には「必殺シリーズ」への度々の出演がある。
(『必殺仕置屋稼業』、『必殺仕業人』、『必殺からくり人』、『新・必殺仕置人』、『江戸プロフェッショナル必殺商売人』、『翔べ!必殺うらごろし』…枚挙にいとまがない。)

中村敦夫主演の知る人ぞ知る名作『おしどり右京捕物車』 (1974)(~当初「必殺シリーズ」第4作の予定だったらしい~)へのゲスト出演、映画『はだしのゲン』の先生役など、Wikipediaを繙くと「へえ~」と唸りたくなるような出演歴もあり、これらはいずれも1度は見ている筈だが、特に『-ゲン』は全く記憶にないのである。
又、特に1980~90年代の2時間サスペンスへの出演の多さは特筆すべきものがあり、それでこの方の顔と名前を覚えた方も多いのではないだろうか。
上で挙げた『妖しい稲妻の美女 江戸川乱歩の「魔術師」』の前に、佳那晃子さんには実はもう1作「江戸川乱歩の「美女」シリーズ」への出演歴があった。
『妖しき傷あとの美女 江戸川乱歩の「陰獣」』 (1985)という、天知茂氏時代末期のシリーズのヒロイン・小山田静子役である。

貞淑な和服美人として明智探偵と出会うが、その首筋には大きなミミズ腫れが幾つもあって…という発端に始まり、やがて小山田という年の離れた富豪の夫がいること、夫婦の間には何やら秘密があるらしいことが明かされていく。
回想シーンではセーラー服姿の女子高生にもご本人が扮しているが、全くといってよいほど違和感がない。
想像シーンでは、逆にボンデージ姿で鞭打たれ、苦悶の表情を浮かべる閨房での姿。これもご本人が演じているが、この辺りは若かりし頃から美貌に似合わぬ大胆で妖艶な演技を特徴とした佳那晃子さんならではのものであろう。(夫役の根上淳氏の変態狒狒親父ぶりが堂に入っている。)
中尾彬氏が陰気な容疑者役で出ているのが意外で、自動車のトリックもちょっと無理があるような気もするが、明智探偵が車もろとも断崖絶壁から転落、爆死という衝撃的な場面もある。
しかし何といっても、本作一番の見所は、物語中盤、静子夫人と明智探偵が、犯人の監視を逃れるために2人で別荘へ落ち延びる場面であろう。
今でいうストーカーの影に怯えていた静子夫人が、遠く離れた別荘で、その心配から解放され、夫亡き後ずっと心に秘めてきた明智への想いが堰を切って溢れ出し、明智に切々と、しかし大胆に、妖艶に迫る。そのストレートな愛の告白に、さすがの明智探偵も圧倒され、口づけさえも交わすのだ。抑圧され、ひたすら耐え忍んで生きてきた半生。切なる願いが叶ったその刹那、静子の頬を涙が伝う。
その明智小五郎を演じた天知茂氏は、その数か月後、急逝した。
クモ膜下出血であった。
個人的に強く記憶に残る作品で、濃厚な大人のラブシーンを演じて見せた2人の役者が、28年の時を隔てて同じ病で倒れるとは、何たる皮肉な巡り合わせであろうか。
天知茂氏は倒れた後、そのまま還らぬ人となった。
奇跡的に一命をとりとめた佳那晃子さんには、叶うものならもう一度、あの艶やかで張りのある声と笑顔を見せてもらいたいものである。
私にとって、写真集まで持っている数少ない女優の1人である。
この文章は、一ファンの応援歌として書き記した。
以上、一部敬称略。
先週金曜日、24日の『爆報THEフライデー』2時間スペシャルで、佳那晃子さんの近況が放映された。
同番組名での記事は、以前島田陽子さんが出演された時に使ったので、重複を避けるために上記タイトルとしている。

昨年1月にご自宅で倒れられ危篤と、インターネットのニュースで読み、大きな衝撃を受けた。
クモ膜下出血だという。
一時期は頻繁にTVドラマに出ていたのに、ある時期から姿を見なくなったと思っていたら、週刊誌で腎臓を患っていると知った。長い闘病生活から漸く脱し、舞台の仕事に復帰したと書かれており、一安心したものだったが、その後暫くお見掛けしないと思っていた矢先のことであった。
往年の美人女優が変わり果てた姿で、痛々しい反面、嘗て売れっ子だった放送作家の夫君が、自身の追い詰められた生活をも顧みず、献身的な介護を続けている。というのが番組での取り上げられ方であった。
番組の取材でカメラを向けられれば、もしかしたら何らかの反応が見られるのではないか。その一心で取材を承諾されたのだという。
無論ご本人の知るところではない。幾ら夫とはいえ、本人の承諾なしに、意識のない闘病中の姿を世に晒して良い筈がない、という批判も多いという。
往年の姿が美しければ美しいほど、そのイメージのままにしておいてほしい。そっとしておいた方が良いのでは。そういう論調である。
だが、そのヴェールを剥ぎ、現状を知らしめる決心を夫君にさせたのは、人知れぬ介護生活を続けることができないほど、それだけ追い詰められた状況だということなのかもしれない。
カメラを向けられれば、妻の女優魂が、その意識を呼び戻してくれるかもしれないという思いを、「そんなアホな」と片付けてしまうのは簡単だが、どんな声でもいい。今の状況を世に知らせることで、何らかの声援が欲しい。そんな思いからだったのだと思う。
実際、「佳那晃子さんを応援する会(http://www.kanaakiko.net/)」というサイトがあり、夫君のブログに詳しい闘病状況が綴られている。
現在、佳那晃子という名をきいて、パッとわかる人は以前よりは少なくなってきた気がする。
ところが『爆報』放映後、検索で1位になった時もあったようだ。
このような形で、再びこの方の名が知れ渡るというのは、何ともやりきれない思いだが、番組中で奇跡の復活を信じて一筋の光明を照らすような終わり方をしていたのが救いである。
夫君のブログを読むと、立ってリハビリとも書いてあり、番組に出ていたよりは回復に向かっているように思える。
とかく直接関係のない人間は、眉を顰めて批判がましいことを言いがちだが、暖かく見守るしかないではないか。
*********************
古くからの友人で、昔のTVドラマや特撮番組に詳しいN君という方がおり、偶に会うとそんな話題が必ず一度は出るのだが、何年か前に『快傑ズバット』の話から、私が佳那晃子さんの名前を出してみたところ、即反応があり、流石N君と思ったものだった。そんな友人がいることを有難いと思っている。
まずはその辺りから。
佳那晃子さんは以前は大関優子という、より本名に近い芸名であった。
1980年の映画『ザ・ウーマン』出演を機に現在の名に改めている。

『快傑ズバット』第3話「悲しき純金の天使」に大関優子名義で出演がある。
非電化時代の八高線が舞台で、金子という駅が出てくる話がある。
美人の若い看護師がディーゼルカー車内でチンピラに絡まれているところを早川健(演:宮内洋)が助けるという場面が冒頭で出てくる。
この美人看護師役が大関優子(佳那晃子)さんである。
鉄道ファン的見地からいえば、往年の八高線の沿線風景と車両が存分に堪能でき、おまけに確か「キハ35900番台」というステンレス製気動車まで出てくるのだから涙モノだ。(前面に朱帯が入った後の姿)
さて、かいつまんで筋書きをいえば、金バッチ連合という悪の組織に純金製の天使像が狙われ、早川健がその護衛を買って出るが、同じく金バッチ連合に兄を殺され、恨みに思っているしずか(大関優子)を助けた縁で行動を共にしていたところ、実はしずかこそが金バッチ連合のスパイで、一度は早川健に隠し持っていたピストルを向けるものの、改心したところをあえなく殺されてしまい…といったところである。
ちょっと余計なことを書くと、冒頭オープニングの始まりのセスナから早川健が降り立ち、ポーズを決めた後、「ベベン、ベベベベン…」と曲の前奏が始まり、「か・い・け・つ ズバ~ット」っていうお馴染みの箇所で、最初の1・2話だけが、「か・い・け・つ ズバ~ット」の声が妙に甲高くちっとも強そうに聞こえない。
初めて見た時、ものすごく違和感を感じたものだったが、この第3話からドスの効いた強そうな声に変わっている。
しかし、耳に残ってしまっているのは、この妙に甲高いほうである。
何だか「か・い・け・つ ズビャ~ット」といっているように思えてならない。
*****
佳那晃子という名をきちんと覚えたのは割と後になってからのことだが、比較的よくTVで見てきた女優さんの一人である。
私にとって印象深いものとして、筆頭に挙がるのは1990年の『土曜ワイド劇場』「妖しい稲妻の美女 江戸川乱歩の「魔術師」」のヒロイン役である。

天知茂氏が亡くなった後、6作作られた北大路欣也氏が明智小五郎役を務めた内の最終作で、これはリアルタイムで見た。乱歩作品というのがものをいい、VHSの3倍速だが、放映当時録画したテープを今でも保有している。
「魔術師」は「江戸川乱歩の「美女」シリーズ」の最初期である2作目としても映像化され、本作はそのリメイク版である。
その時は、佳那晃子さん演じた役は夏樹陽子さんがやっていた。
北大路版になって、明智が妙にバードウォッチングやらマイコン(!)(~パソコンではなく敢えて「マイコン」といいましょう~)やら、いやに健全な趣味に興じる姿を見せつけられ、天知茂の妖しい中年男のダンディズムのようなものに密かな憧れを抱いていた私としてはどうにも納得がいかず、物語自体も「意外な犯人像」という視点がぼやけてしまうなど、当時はけなしてばかりいたが、こと「魔術師」に関しては出来が良く、寧ろリメイク版のほうが良いのではないか?とさえ思ってしまう始末である。
佳那晃子さん演じたヒロインの艶やかな魅力のせいであろうか?
(夏樹陽子さんには『エマニエルの美女』という大傑作があり、そちらの印象の方が遥かに強い。)
もっと突っ込んだ話もしたいところだが、推理小説愛好者のはしくれとして、敢えてネタバレになるようなコメントは避けねばならないだろう。
*****
佳那晃子さん関連で、個人的に他に是非とも触れておきたいのは、『華の誓い』という1991年夏に放映された昼ドラマである。東海テレビ制作のいわずと知れた“昼ドラ”の1つであった。
大筋は、父母を亡くし弟の面倒を見るために遊郭で身を売るようになった女性の一代記といったところである。
子供時代から話が始まるので、最初は、増田未亜さんという、後に『真珠夫人』で主人公の横山めぐみさんの義理の娘役を演じた女優が、若いというよりは少女時代に主役を務め、話が進んでから佳那晃子さんにスイッチした。
最初の舞台は青森で、今この文章を書いていて、増田未亜さんが津軽三味線を弾く姿が目に浮かぶ。
今にして思えば、既にかなりの作品への出演歴を持っていたベテラン女優の佳那晃子さんが、昼の連続ドラマに主演したというのは意外な感じさえするが、例えば『華の別れ』という作品では、手塚理美さんが主演なので、当時は決して珍しいことではなかったのかもしれない。
(現在放映中の『聖母聖美物語』の主演・東風万智子さんにしても、元は真中瞳さんなので、今となってはかなりベテラン女優といえるだろう。)
この枠が一般に知名度が上がったのは、2002年の『真珠夫人』がきっかけで、更には「ドロドロ」などとよく言われるようになったのは、2004年の『牡丹と薔薇』がきっかけだと思われる。
しかし、それ以前にこの枠のドラマを非常に有名にしたのは、1988年の『華の嵐』だと思う。(~高木美保さんの代表作といってよいと思う~)
その前の『愛の嵐』 (1986)(主演:田中美佐子)、『華の嵐』人気を受けて、メインキャストはそのままにリメイクした『夏の嵐』 (1989)、これらを合わせて当時「嵐三部作」と呼ばれていた。
当時は「ドロドロ」などとはいわれておらず、どちらかといえば骨太な文芸作品を原作とする波乱万丈の物語が『愛の嵐』、翌1987年『愛伝説』などの相次ぐヒットを機に増えていった。
それらは「グランドロマン」と銘打たれ、例えば
・『レ・ミゼラブル』を翻案した『愛無情』(1988年:主演:榎木孝明)
・トルストイ作『復活』翻案の『華の別れ』 1989年:主演:手塚理美)
・その後少女マンガ乃至はレディスコミック原作の
『風のロンド』(1995年:原作:津雲むつみ『風の輪舞』,主演:森口瑤子)
『砂の城』(1997年:原作:一条ゆかり同名作,主演:森下涼子)
『緋の稜線』 (1998年:原作:佐伯かよの同名作,主演:森下涼子)
などが原作翻案ものとして名が挙がる。
又、 『華の嵐』、『華の別れ』、『華の誓い』の3作をまとめて「華三部作」などともいわれていたようだ。
*****
リアルタイム視聴経験としては上述の2作が突出して印象深いが、他には1994年にフジTV「金曜エンタテイメント」枠で放映された『怪談KWAIDANⅢ 牡丹灯篭』のお露(「新三郎さま~」といって若侍に付きまとう姫君実は幽霊)も強く記憶に残る役である。
又、後で気が付いた、もしくは後で見たものの中では、
・映画『犬神家の一族』(1976年、市川崑監督)
・『横溝正史シリーズ / 三つ首塔』(1977年)
・『探偵神津恭介の殺人推理3 魔笛に魅せられた女』(1985年)
などが印象深い。

『探偵神津恭介~』のヒロイン役は、私がイメージする佳那晃子さんそのものといってよい和服姿の人妻で、恐らく吹き替えではあろうが、一人深夜の豪邸の浴槽に裸身を横たえつつ恐怖に怯える姿が拝める。
『横溝正史シリーズ / 三つ首塔』の佐竹由香利役は、大関優子名義だった時のものである。
ある富豪の遺産相続を巡って現れる主役:真野響子さんの、いとこたちの中に妙な興行師がおり、この興行師が夜な夜なセーラー服の美少女を鞭でいたぶり、最後は脱がせて晒し者にする、そんな扇情的なショーを演じる者がいる。そのセーラー服美少女役であった。

映画『犬神家の一族』は、いわずと知れた超有名作で、個人的には島田陽子さんの珠世さんの印象が極めて強い作品だが、青沼菊乃という、三姉妹に折檻され赤ん坊を奪われるという女工役が若かりし大関優子さんである。
蛇足ながら、横溝正史の『三つ首塔』には、「火曜日の女」シリーズ『いとこ同志』(1972)(主演:島田陽子)という作もあり、こちらは金田一探偵が出てこないという大胆な脚色がなされている。同じ原作のドラマ化同士なので、見比べてみると面白い。
こんなふうに佳那晃子(大関優子)さんは若かりし頃から、常にその容貌とは裏腹に、時に大胆な妖艶な役柄が多く、寧ろ上述の『快傑ズバット』における悲運の看護師役などは大人しい役だとさえいうことができるであろう。
*****
他に有名な作としては、
映画『四季・奈津子』 (1980年)
映画『魔界転生』(1981年、深作欣二監督)の細川ガラシャ夫人役
が挙げられよう。
細川ガラシャ夫人は色々な物語で語られるが、山田風太郎原作の『魔界転生』では、妖艶を通り越した魔性の女として描かれる。佳那晃子さんの代表作といってよいかもしれない。
レギュラーでこそないものの時代劇へのゲスト出演歴は多く、大関優子時代には「必殺シリーズ」への度々の出演がある。
(『必殺仕置屋稼業』、『必殺仕業人』、『必殺からくり人』、『新・必殺仕置人』、『江戸プロフェッショナル必殺商売人』、『翔べ!必殺うらごろし』…枚挙にいとまがない。)

中村敦夫主演の知る人ぞ知る名作『おしどり右京捕物車』 (1974)(~当初「必殺シリーズ」第4作の予定だったらしい~)へのゲスト出演、映画『はだしのゲン』の先生役など、Wikipediaを繙くと「へえ~」と唸りたくなるような出演歴もあり、これらはいずれも1度は見ている筈だが、特に『-ゲン』は全く記憶にないのである。
又、特に1980~90年代の2時間サスペンスへの出演の多さは特筆すべきものがあり、それでこの方の顔と名前を覚えた方も多いのではないだろうか。
上で挙げた『妖しい稲妻の美女 江戸川乱歩の「魔術師」』の前に、佳那晃子さんには実はもう1作「江戸川乱歩の「美女」シリーズ」への出演歴があった。
『妖しき傷あとの美女 江戸川乱歩の「陰獣」』 (1985)という、天知茂氏時代末期のシリーズのヒロイン・小山田静子役である。

貞淑な和服美人として明智探偵と出会うが、その首筋には大きなミミズ腫れが幾つもあって…という発端に始まり、やがて小山田という年の離れた富豪の夫がいること、夫婦の間には何やら秘密があるらしいことが明かされていく。
回想シーンではセーラー服姿の女子高生にもご本人が扮しているが、全くといってよいほど違和感がない。
想像シーンでは、逆にボンデージ姿で鞭打たれ、苦悶の表情を浮かべる閨房での姿。これもご本人が演じているが、この辺りは若かりし頃から美貌に似合わぬ大胆で妖艶な演技を特徴とした佳那晃子さんならではのものであろう。(夫役の根上淳氏の変態狒狒親父ぶりが堂に入っている。)
中尾彬氏が陰気な容疑者役で出ているのが意外で、自動車のトリックもちょっと無理があるような気もするが、明智探偵が車もろとも断崖絶壁から転落、爆死という衝撃的な場面もある。
しかし何といっても、本作一番の見所は、物語中盤、静子夫人と明智探偵が、犯人の監視を逃れるために2人で別荘へ落ち延びる場面であろう。
今でいうストーカーの影に怯えていた静子夫人が、遠く離れた別荘で、その心配から解放され、夫亡き後ずっと心に秘めてきた明智への想いが堰を切って溢れ出し、明智に切々と、しかし大胆に、妖艶に迫る。そのストレートな愛の告白に、さすがの明智探偵も圧倒され、口づけさえも交わすのだ。抑圧され、ひたすら耐え忍んで生きてきた半生。切なる願いが叶ったその刹那、静子の頬を涙が伝う。
その明智小五郎を演じた天知茂氏は、その数か月後、急逝した。
クモ膜下出血であった。
個人的に強く記憶に残る作品で、濃厚な大人のラブシーンを演じて見せた2人の役者が、28年の時を隔てて同じ病で倒れるとは、何たる皮肉な巡り合わせであろうか。
天知茂氏は倒れた後、そのまま還らぬ人となった。
奇跡的に一命をとりとめた佳那晃子さんには、叶うものならもう一度、あの艶やかで張りのある声と笑顔を見せてもらいたいものである。
私にとって、写真集まで持っている数少ない女優の1人である。
この文章は、一ファンの応援歌として書き記した。
以上、一部敬称略。