8月7日(水)


藤崎宮前―御代志―(北熊本)―上熊本―熊本城・市役所前


…熊本城…熊本城・市役所前―健軍町


―新水前寺駅前/新水前寺―水前寺


…モントレ…水前寺―平成…近藤製飴本舗…平成―熊本


熊本駅前―二本木口…田崎橋―蔚山町


…くすり湯…菊の湯…新町―通町筋


…ラフタイム…珈琲中川


熊本泊

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前々回の続き。


熊本行の電車に乗って、3駅先の平成という駅に降り立った。

見るからにホームを後付した雰囲気の新興駅で、大きな陸橋の下にある。

小さな川べりを少し歩き、踏切を渡って少し歩く。

全く腹は減っていない。

こんな状態ですぐさま次のかき氷を食べるのは無理だ。


そう思いながら尚進むと、大きな街道にぶつかった。

横断歩道の向かい側に「BOOK-OFF」があった。

少し時間をつぶそう。咄嗟にそんな考えが浮かぶ。


旅に出る時は今読んでいる本の他に、必ずもう1冊持って行く。

困るのはそれさえ読み終えてしまった時だ。

家には買ったまま読んでいない本が山とある。

それを旅先に取り寄せることなどできない。

差し当って読む本が無くなってしまった時の飢餓感といったら、もうどうしようもない。

そういう時こそ電子書籍だよ。

そんな声が聞こえてきそうではあるが、どうも考え方が偏屈で、データになぞ愛着が持てるか。そう思っている。


今回の旅では、幸い読む本のネタが尽きることはなかったが、それでも旅先でBOOK-OFFを見つけるとつい足を止めたくなってしまうのは、長年の経験ゆえなのであろう。

店内をブラブラ見て回るが、やはり欲しい本は見つからなかった。


同じ敷地内に「HARD-OFF」「OFF-HOUSE」もあった。

ハードオフがあるのは有り難い。

早速店内を物色して回る。


置いてあるオーディオ機器を見ていると、何となくこの地の平均的なオーディオ事情が見えてくるような気がする。

さほど高価ではない割と新しめのサラウンドスピーカーが目立つ。

きっと首都圏などよりも住宅事情が良いのだろう。

それほどのマニアではないが、リビングに大型液晶TV、AVアンプ、サラウンドスピーカー、それらを設置するだけの広さがあり、適当な時期が来たら買い替える。そんな客層を想像する。


こんなことを書くと如何にもブランド志向と捉えられそうだが、ピュアオーディオで、国産ならアキュフェーズ、ラックスマン、サンスイなどの機器が売られているのを見ると、前オーナーはきっとその道では一家言ある人物。そんなことを考える。


かれこれ10年ほど前になるが、地元に出来たハードオフで、サンスイの「C-2301」というプリアンプが売られているのを見つけたことがあった。

この機械は、この世にCDという規格が誕生してほどない頃に出た機種で、当時でも55万円位した。

AV(この場合は「オーディオ&ビジュアル」の略。Adult Videoに非ず。という考え方も、入力ソースの多様化もまだそれほど進んでいない時代のアンプである。

アナログ入力端子(注:レコードプレーヤー用のこと)は、MC,MM両方に対応した入力端子が2系統も用意され、シャーシも背面も銅板、端子は全て金メッキ、見るからにお金がかかった作りである。

バランス出力も備えているが、バランス入力はない。

当時の最高級機種で、状態の良さそうなものが、10万円で売られていた。

少し心が動いたが、メインシステムに据えるにはちょっと旧式かなと思えた。それで買うのをやめにした。


そんなマニアックな機器はあるか…?

そう思いながら店内を見回すと、インフィニティという米国のメーカーの大きなトールボーイ型スピーカーがあった。

昔、このメーカーの「カッパ」というスピーカーが雑誌で紹介されている記事を読んだことがある。この場合の「カッパ」とは「kappa」であって決して「河童」や「合羽」ではない。ギリシャ文字の「κ」のことである。記事にはこのスピーカーを駆動するのは難しいと書いてあった。

この時ハードオフに置いてあったスピーカーが「κ」かどうかまではわからない。だが、きっと前オーナーはその駆動に色々と苦労をしたのだろうな。ナチュラルな木目を見ながらそんなことを考える。


他にちょっと目についたのは、ジャンクコーナーに置いてあったビクターの「K2インターフェイス」という回路を搭載したCDプレーヤー位だろうか。


ハードオフと建物がつながったオフハウスにも寄ってみた。

ブランド時計にブランド鞄、贈答流れのタオルに食器、絵画に家具にスーツケース。こちらはどこも似たり寄ったり。そんなことを思いながら店を出た。


*****


こんなオーディオ薀蓄を思う内、いつしか満腹感が収まり腹がこなれてきた。


さあ次の氷屋を目指そう。

大通りから更に北へ、住宅街の合間の細道を進む。

先の方に団地が見えた。

その手前に目的地があった。


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近藤製飴本舗


熊本市中央区春竹町54


9:00~19:00

10:30~18:30(日曜)

不定休

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団地そばの駄菓子屋さんみたいな店構えだが、その名の通り本業は飴屋さんだということである。だがこの店が有名なのは、寧ろ自家製アイスキャンデーと夏季限定のかき氷であろう。

公式サイトはないが、facebook があり、ここにも「白くまかき氷・昔懐かしのアイスキャンデー、アイスクリーム」と記されているのである。


暑い日だったので平日夕方近いのに、結構お客で混んでいた。

駐車場はないのだが、店先がちょっとした駐車スペースになっていて、自動車で乗り付けてくる客も多い。

先客は慣れた様子の中年男性。幾種類もあるアイスキャンデーを物色し、今日は○○はないの?」などと店のおばちゃんに気軽に声を掛けている。

ざっと見て10種類位はあったが、彼が欲したフレーバーは、確かチーズケーキ味だったか、いちごミルク味だったか…?


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続いて自分の番が来た。

一番のお目当てはかき氷である。「白くま氷」の種類は幾つかあったが、最も美味そうに思えた「マンゴー白くま」を注文する。

しかしそれだけでは終わらせたくない。目の前にこれだけの種類のアイスキャンデーしかも自家製がありながら、それをみすみす逃す手はない。

「ミルク」、「和三盆黒蜜」、「マンゴー」を選択する。


かき氷は出来上がったらお持ちしますとのことだったので、店の外の縁台の腰を掛けて待つ間、先に紙袋を開け、アイスキャンデーを食べることにした。


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↑ミルク
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↑和三盆黒蜜
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↑マンゴー


「ミルク」はこの手のアイスキャンデーを食べる時、個人的には真っ先に選びたくなる味。濃厚で十分な甘さにシャキッとした食感が心地よい一品。


「和三盆黒蜜」とは珍しいフレーバーだが、仄かで上品な甘さが「さすが和三盆!」と唸らせ、黒蜜との相性はバッチリ。


「マンゴー」は氷と重なってしまったが、やはりこの色鮮やかな黄色を見せられて選ばない手はない。見た目通りの鮮烈な味だった。


そうこうする内、お待ちかねの氷が運ばれてきた。

先ほど応対してくれたおばちゃんが持ってきてくれたが、とても腰の低い感じのいい方で、丁重にお礼を述べた。


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器は小ぶりだが、とろとろっとしたマンゴーソースがたっぷりと。

早速匙を掬ってみた。


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すると独特な形に固まった微細氷の粒つぶが舌に感じられた。

噛むとシャキシャキ感がある。

ほどなくシャキシャキ感は消え、スーッと口に溶けて消えた。

氷が結晶のような固形を保っているから、ソースがいつまでも氷に絡まり、丁度カレーライスを食べているような具合である。

鮮烈なマンゴーソースのとろりとした食感。上に乗ったミカンとパイナップル、そして小豆。それらが味のアクセントをなし、紛れもなく「白くま」であることを主張する。


あっという間に平らげた。

よほど別の氷を追加で頼もうかとも思ったが、大して空腹ではない状態で、あまり無理はしたくない。

そういいながらも尚立ち去りがたく、アイスキャンデーと追加で買う。


先ほどの3本を選ぶ際に迷ったフレーバーを追加。

「カシス&オレンジ」「小豆」本当は「チョコレート」もいきたかったが、流石に口の中が冷え冷えになりそうなので、やめにしておいた。


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↑カシス&オレンジ
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↑小豆


「カシス&オレンジ」とはアイスとしては珍しいフレーバーである。カクテルみたいだが、無論酒は入っていない。恐らくカシスだけだと濃厚すぎる。オレンジの酸味と入り混じることで絶妙なバランスとなっている。


「小豆」だけかじった写真ですみません。

硬めのアイスキャンデーに、御覧のようにたっぷりの小豆。この粒つぶ感に皮の食感。井村屋の「あずきバー」ともまた微妙に異なる、もっと「小豆水を冷やし固めました」そんな食感がした。


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再び満腹感を得た。もうこれ以上は食べられない。


偶々雑誌の取材であろうか。若い女性の記者が店奥の製造現場に入り込み、再び店先に出てきていた。若い男性客にインタビューしている。聞くとはなしに話を聞いていると、どうやら彼は高校生の頃からこの店の常連で、成人後イタリア料理の修行に単身渡欧し、晴れて帰国後この地でレストランを開くということであった。


こうして店先の縁台で、アイスに氷にと食べていると、或いは近所の店屋のおかみさんが、或いは京都ナンバーの車で乗り付けた客が、或いは大きな荷台の自転車で中学生位の女の子が1人で、てんでにアイスキャンデーをまとめて買っていく。

かき氷を店先で食べる客もいるが、アイスキャンデーの人気がそれ以上に思える。


さてそろそろ退散するか。

熊本郊外にかき氷とアイスキャンデーの名店あり。

大満足にて店を後にした。


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再び元来た道を引き返す。途中でこんな謎の物件が売りに出ているのを目にした。


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平成駅で切符を買うと、ほどなく電車がやってきた。

この日の電車運は実に良い。

殆ど待たずに済んでいる。


今度は1駅、熊本駅に戻ってきた。

前の日は、跨線橋からそのまま2階の改札を出たのでわからなかったが、6年前、三角線に夕方乗った時、車内で鰻弁当を食べた。その弁当屋さんは健在であった。前回来た時は新幹線乗り入れ工事真っ最中であった。


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再び市電に乗る。

熊本城方面とは逆方面に乗り、終点・田崎橋電停で降りた。


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ここから少し歩き、お隣・二本木口電停手前まで来た。


欄干のある川の橋を渡る。対岸にはホテルがあったり、狭い道沿いにアパートがあったり。更に進むと熊本朝日放送というTV局の本社がある。

脇道に入る。それにしてもやけに駐車場の広いがらんとした雰囲気の場所だなあ。そう思って後で調べてみたら、この一帯、以前は二本木遊郭だったらしい。

少しうろうろ周りを歩き、車通りに出てから薬屋。並びの魚屋脇の砂利道を入ってみれば、目的地は見つけたものの、貼り紙を見るとこの日は休み。


どうやら、ここ泉湯は隔日営業しているらしく、この日は運悪く休業日に当たってしまったらしい。


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仕方ないのでそのまま退散することにした。

今度は二本木口電停から市電に乗る。

どうやらここは合同庁舎が目の前にあり、そこから帰宅する職員たちと共に電車に乗る。


熊本駅前を通り過ぎ、市の中心街入口・辛島町電停で降り、上熊本駅前行に乗り換える。


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石畳の線路敷が道路中央にある、趣ある裏通りといった雰囲気の通りを電車は進んでいく。

蔚山町という電停で降りた。

元来た道を少し戻り薬屋の角を曲がる。まっすぐ進み、突き当りを右に曲がる。暫く進んだ先に、次の目的地を示す電光板が目に飛び込んできた。


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くすり湯


熊本市中央区新町1-5-8


14:30~23:30

毎月5・15・25日休

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金物屋さん脇の路地を奥に進む。

お爺さんが植木に水やりをしていた。


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脇を通り暖簾をくぐるとお爺さんが慌ててやってきた。ここのご主人だったようだ。


脱衣所は渋い板張りの大広間で、一部に畳が敷いてある。

服を脱いで、丸籠に入れ、脇に置いた。

他に客は誰もいない。貸切状態であった。

木枠の引き戸をガラガラと開けて浴室へと入る。


浴室は綺麗な白黒模様のタイル貼りで、床はかなり広い。


浴槽手前にタイル張りの衝立状の場所があり、ここが島カランである。シャワーはない。洗面器に湯を出して手を入れてみたら、ものすごく熱かった。水風呂から水を汲んできては埋めて体と頭を洗う。


さて入湯。


浴槽は手前に一槽、奥に二槽ある。

手前の浴槽は一段上がった場所にあり、これが水風呂。

奥の中央寄りが主浴槽で、窓際の隅が丸くなった白濁湯のほうが薬湯である。

ゴムホースが渡されているのが独特である。


薬湯はかなり熱かった。


女湯との仕切り壁上に、蛍光灯が仕込まれた広告看板があり、毛筆書体でものものしい効能書きがえんえん綴られている。

確か、関西、中国、四国からも入湯云々…とあったと思う。

関東からだって来るのだよ。


薄暗い浴室は、湯治場の雰囲気に満ちた実に渋い濃厚な空間であった。


湯から上がると番台がおばあさんに変わっていた。

身体を拭く私の姿を見て、天井のプロペラ扇を回してくれた。

プロペラ扇も貸切だ。


浴室内も、脱衣所外も、ガラス窓の至る所にバッテン状にテープで補強がなされ、ものものしい雰囲気が漂う。

開け放たれた出入口の暖簾をくぐって外に出ると、そろそろ夕闇迫る頃となり、振り向けば路地の向こうの渋い湯へと至る板壁が先ほどよりも濃い色となっていた。もう少ししたら、きっと淡い赤い灯りがボーッと灯る光景が見られるのだろう。


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ここまで連日の歩き詰めで、気付けば足の指に水が溜まりだしていた。

湯上りで暑く、この後すぐ、近くの別の銭湯へ梯子する積りである。

靴下をはかずに裸足に靴を履いて歩くと、靴擦れが痛くて早く歩けなくなっていた。重い足取りで電車道へと向かう。


駐車場脇の自動販売機の前を、猫の親子が通りかかった。

母猫が子猫2匹を連れている。

遅れてついてゆく子猫に向かって、しゃがんでチョイチョイと声をかけてみた。

子猫は立ち止まり、こちらの様子をじっと見ている。


すると母猫が子猫に目線を送ったように思われ、子猫は母猫について物陰へと消えた。


「知らない人に声を掛けられてもついて行っちゃだめよ。

人間に気を許してはだめよ。」


何だかそう教え諭しているように思えた。


今どきの人間の親よりも、よほど猫の方がしっかりしているな。

そんなことを思いながら、次の場所を目指し、足の指は痛いが停留所1つ分歩いた。


以下次回へ続く。