随分前になってしまったが、『闇の帝王DON ベルリン強奪作戦』(原題:DON2)のことを詳しく書いた以上、本作を是が非でも観たくなった。


『2』では最初から刑務所におり、ドンと共謀して脱獄した後も、ドンの銀行襲撃計画の協力者として働き、ドンを裏切った後も結局返り討ちにあうという、今一つパッとしない悪役・ワルダン(演:ボーマン・イラニ)


そのワルダンがドンと死闘を繰り広げる、文字通りの堂々たるワルぶりを拝みたくなり、本作を探した。


だが、DVDは既に廃盤、Amazonではとんでもない高値がついている。


ところが世の中捨てたものじゃなし。レンタル店にはちゃんとある


早速借りてみた。


“ドン誕生秘話”とでもいえる本作。瀕死の重傷を負ったドンの替え玉に、陽気な青年が仕立て上げられ…という話だが、最後はアッと驚く大どんでん返しが待っている。


では詳しく筋を追ってみるとしよう。


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舞台はパリ。バレエ教室の裏、闇取引に単身訪れるドン。取引相手の裏切りに遭い、銃を突き付けられ、絶体絶命。だが見事返り討ちにする。

一方こちらはマレーシア・クアラルンプール。
デシルバ警視(演:ボーマン・イーラーニー)が目下の情勢を会議席上で説明している。

…ソ連崩壊後、多くの小国が誕生し、武器がテロリスト達に流れた。
一味のボスはボリス。ボリスは武器で儲けた金を麻薬取引につぎ込んだ。
その腹心がワルダンとシンガニヤ。
ボリスが後継者をワルダンに指名したことから、シンガニヤはボリスを殺害。ワルダンは行方不明となった。ワルダンは、顔も正体も、その一切が不明である。

そして現在は、そのシンガニヤの右腕・ドン(演:シャー・ルク・カーン)が、最も危険視される人物である。

ゴルフを楽しむドン。部下に警察への内通者がいることを見破り、制裁を加える。
国際警察のマリク部長(演:オーム・プリー)も捜査に加わった。

場面変わって体術の訓練に勤しむロマ(演:プリヤンカー・チョプラ)。兄・ラメーシュはドンの組織に潜入していたが、抜けようとしていた。
そんなラメーシュをドンが待ち構えていた。ラメーシュを祝福するかのように装って、ドンは手を差し出す。固く握手されたその手から毒針が刃を剥き出す。
ラメーシュはドンによって葬られる。

「ラメーシュ、ドンを棄てずにこの世を棄てろ。」

悲嘆にくれるラメーシュの恋人・カーミニ(演:カリーナー・カプール)
彼女はソニアと名乗り、とあるディスコで巧みにドンに近づく。

ホテルの一室。
際どい駆け引きを演じながら、やがてカーミニは上衣をはだけると、セクシーなカクテルドレス姿になり、ドンに挑みかかった。

「♪私の心はあなたに夢中…」
「YE MERA DIL」


カーミニの導きで警察がドンを捕えに来るが、ドンは巧みに窮地を脱し、カーミニは命を散らした。

一方競馬場。ロマは殺人を犯したと偽り、ドンに近づく。

他方デシルバ警視の元に、ドンが新たな麻薬取引にインドへ飛ぶとの情報が。

麻薬取引には常に危険が伴う。相手の罠を見破ったドンは、爆弾入りのアタッシュケースを投げつけ逃走した。激しいカーチェイスの末、追撃する警察を振り切り、ドンは難を逃れるが、血まみれの大怪我を負う。

突然始まる祭礼の儀式。
「♪人は百日百時間 どんな時であっても 神様を見ていないと 心の平安が得られない…」
「MOURYA RE」


現地住民の祭りの中で、歌い踊るドンの姿…!?!?…そう思ったら違っていた。
ドンそっくりの男・ヴィジャイ(演:シャー・ルク・カーン二役)であった。
デシルバ警視は彼に声を掛ける。ドンの身代わりに仕立て上げようとしているのだ。

ヴィジャイは一緒に暮らす少年・ディープーのことを心配するが、警視はディープーの将来を約束するという。
ヴィジャイは身代わり役を引き受ける決心をする。

*****

ジャスジート(演:アルジュン・ラームパール)はSEである。或る日突然彼は何者かによって拉致される。
妻を人質に取られ、金庫破りを強要される。
勤め先の社長しかアクセスできないパソコンに不正アクセスし、中のダイヤを持ち出させようというのだ。
脅迫電話の向こうで、妻の助けを求める声に、仕方なく要求を呑むジャスジート。
その様子に、脅迫者はこんな口を叩いてみせた。
「甘い言葉は糖尿の俺に毒だ」

遂に決行の日が来た。無事ダイヤを盗み出したジャスジートだったが、警察にあえなく御用。必死に妻の救出を求めるも、デシルバ警視は聞く耳を持たず、人質の妻は還らぬ人となった。

一方、とある病院で昏睡状態にあるドン。
デシルバ警視はヴィジャイをドンに対面させ、医師にドンの身体的特徴の全てをヴィジャイに写し取る手術をさせる。
ヴィジャイをドンの影武者に仕立て上げて、重傷を負った状態で組織に戻し、記憶喪失を装わせるのだ。
その時ドンは心臓発作を起し、医師の手当てむなしく息を引き取ってしまった。
このことを内密に、と医師に念を押す警視。

*****

時は流れ、刑期を終えたジャスジートが出所してくる。

一方、計画通りドンに扮したヴィジャイが、行方不明となっていたインド奥地で発見され、搬送される。
救急車を襲うシンガニヤ一味たち。その中にはロマの姿も。
クレーンで救急車ごと吊り上げるという大胆な作戦が当たり、無事ドンは奪還された。
記憶喪失を装うドン実はヴィジャイ。
彼は秘かにデシルバ警視と連絡を取り合っている。
失った記憶を取り戻すきっかけを得るべく、警視の車に追われ、逃亡劇を演じる。
そして遂にドンとしての記憶を取り戻した。

シャンパンタワーが聳えるゴージャスなクラブ。

「♪世間の人間どもがまた震え上がる。俺が登場したら次々と騒ぎが起きる…」
「MAIN HOON DON」


ドンの完全復活を皆が祝福し、妖しい悪の華が今、咲き乱れる。

全ての闇取引情報の入ったディスクを渡すべく、ドン(実はヴィジャイ)は警視に連絡を取る。
ドンの単独行動を阻もうとする動きが。首領・シンガニヤの命令だという。

一方警視はシンガニヤに引導を渡そうと決意を新たにする。
その口から、驚くべき独白が。
何と、顔写真のないワルダンの正体は、デシルバ警視だったのである。

~(インターミッション)~

翌日、列車の廃車体での取引を終えたその時、ロマが突然ドンに襲い掛かった。
兄の復讐のために今まで仲間のふりを装っていたのだ。
偽ドンがロマを取り押さえたその時、警視が現れ、真実を明かした。

デシルバ警視にディスクを渡すヴィジャイ。
警視はヴィジャイを始末しようとするが、シンガニヤが来ると聞かされ、銃から手を離す。

ヴィジャイとロマは、ディープーの元を訪ねる。
ディープーは約束通りマレーシアの国際学校に入れてもらい、元気に暮らしていた。
ロマはドンと誤ってヴィジャイを殺そうとしたことを悔いる。
ヴィジャイは、兄の仇であるドンそっくりの自分といて辛くないのかとロマを気遣う。

一方、ジャスジート。彼はデシルバ警視への復讐に動き始めていた。
警視の部屋を襲うジャスジート。
殺された妻と、行方知れずの息子の写真を見せると、そこにはディープーの顔が。
デシルバ警視は言葉巧みにその場で殺されるのを逃れ、別の事件捜査に出る。

とある高級ナイトクラブ。シンガニヤたちが高級車で乗り付け、ドン(ヴィジャイ)が迎える。
美女たちに囲まれ、ドン(ヴィジャイ)が唄い踊る。

「♪麗しい夜 酒のグラス酔いが回る 体もここ 心もここ とろけてる…」
「AAJ KIRAAT」


その会場に潜入したデシルバ警視は、腹心のウェイトレスを使って、シンガニヤを毒入りビールで殺害する。
やがて警官隊とシンガニヤ一味が激しい銃撃戦を繰り広げる。
(しかし、よくロマは流れ弾に当たらなかったな…と)
銃を突き付けられ、ロマと引き離されるドン(ヴィジャイ)。撃たれながらも一味を追うデシルバ警視。

地下駐車場へと舞台は移る。警視は車に拉致される。逃走しようとした車は壁に激突。炎上してしまった。

捕縛されたヴィジャイ。自分はドンの偽物だと懸命に訴えるが、唯一その秘密を知るデシルバ警視は車の爆発に巻き込まれ、既にこの世にない。
ヴィジャイは警視にディスクを渡したと主張する。
警視宅が捜索されるが、ディスクは見つからない。ヴィジャイを手術した医師は交通事故死したという。

ドンの仲間たちと共に収監されるヴィジャイ。
彼らはヴィジャイを襲おうとするが、襲うと彼が偽者だと知らせるようなものなので、敢えて手出しをせずにいる。

もっと警備が厳重な収監所へ一味を移送することになった。
輸送機上でヴィジャイは警官を襲うが、一味の男に不意を突かれて絶体絶命のピンチ。
脱出扉を開くと、男と共に機外へと放り出されてしまった。

激しいパラシュート争奪戦の末、ヴィジャイが勝ち取り、無事着陸した。

一方、ジャスジートとその仲間・ハーティム。デシルバ警視宅からディスクを持ち出しのは彼らであった。ディスクの中身を確かめ、それが売り物になることを悟る。

ロマはヴィジャイとの再会を喜ぶが、それも束の間、警察の検問に引っ掛かり、ロマを連れて逃走。

とあるパーティーで人々が踊る中に潜り込み、ロマとの駆け落ち話をでっちあげる。

「♪何と言えばよいのやら 俺たちの今の境遇を…」
「♪…ベナレス産のパーンを食べて、頭の中が冴えわたる…」

「KHAIKE PAAN BANARASWALA」

「♪とても変わった娘さん 人の心を騒がせる
何をやっても注目の的 彼女の輝く肢体が惹きつける
瞳には夢の世界 振る舞いには若さ
かぐわしい香りが 歩くとこぼれる
彼女を見ると心に火がつく 月のような美女 女神のような美女
月の女神のような美女 絶世の美女 魅力的な美女…」


一方、ジャスジートの元へハーティムから電話が。
ハーティムはディープーを誘拐し、ディスクを交換に渡せと脅迫する。
ハーティムが話をつけたディスクの買い手、それはロマであった。

取引現場に単身乗り込むジャスジート。
ディープーを誘拐した一味のボス、それは死んだはずのデシルバ警視、その実体はワルダンであった。
ワルダンは自らの正体を明かし、あの時の入れ替わり脱出劇の手口を得意げに語ってみせた。
長年警察に潜入していたワルダンにとり、己の死を偽ることなど朝飯前のことであった。

ディープーと親子の対面を果たすも、共に監禁されるジャスジート。
ディスクが探し出されるまでは、彼らの身は保証されている。
父子は脱出を図る。地上遥か上空、超高層ビルの渡り廊下の上を何とか辿り、地上へと逃げ延びた。

彼らの姿を偶然見かけ、後を追うヴィジャイ。ジャスジートは新たな敵と目し、ヴィジャイに襲いかかる。
ディープーの一声で両者の争いは収まる。
ジャスジートはヴィジャイにディスクを渡し、デシルバ警視は生きていて、その正体がワルダンであることを告げる。

ジャスジートはワルダンを展望台へ呼び出す。
指示に従い、金の入った鞄を投げ下ろすワルダン。
ディスクを受け取るべく最上階へ行くが、指定されたアタッシュケースにそれはなく、代わりに現れたのはヴィジャイであった。

遂に対決の時が来た。
互いに銃を構えあう2人。

ワルダンは高飛びをエサにヴィジャイにディスクの引き渡しを求める。
それに従ったふりをして、ヴィジャイは事前にマリク部長に連絡を取っていた。

警察のヘリが近付く中、ヴィジャイとワルダンの激しい攻防が繰り広げられる。

ワルダンを追い詰め、展望台から突き落とそうと迫るヴィジャイ。
間一髪のところで思い留まり、マリク部長にワルダンを渡した。

重傷を負ったヴィジャイは救急車で病院に搬送される。
駆け寄るロマ。ロマはヴィジャイに愛を告白する。

「俺もだ…山猫チャン」

ロマにはその言葉をどこかで聞いた覚えがあった。
…そう、兄の仇をとるべくドンの元へ潜入し、返り討ちに遭いかけた時、ドンが自分に投げかけた言葉。それが「山猫チャン」

ヴィジャイがその呼び名を知る筈がない。

…果たして目の前にいるのは…?!

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本作は結構人が死ぬ。
特にドンに復讐しようと近付き、妖しく誘惑したカーミニは不遇である。
組織のボス・シンガニヤも、あえなく毒酒で殺害される。
ドン(ヴィジャイ)がステージ上で美女たちと踊っている最中に、やられてしまう。
話を最後まで追った後、この場面を振り返ると、デシルバ警視(ワルダン)の策が巧妙だっただけなのか、或いはもっと裏の裏を読むしたたかな人物がいたということなのか。わからなくなる。
『2』では、ロマが最初から国際警察の捜査官として登場するが、本作では果たしてロマが警察の人間なのか不明である。
体術の訓練にいそしむ場面があるから、ロマも警察の人間なのか、或いは兄が闇組織に潜入していたから、その妹であるロマも身体を鍛えているというだけなのか。

ネタばらしになるから詳しいことは書かないが、ドンの精神力は大変なものである。それが『2』での裏の裏を読む緻密さにつながっているのであろう。
『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』では、シャー・ルク・カーンと対決する敵役・ムケーシュ役で出てくるアルジュン・ラームバールが、本作では妻を殺されて復讐に燃え、息子を守ろうとする懸命な父親役で出ている。
誤解からシャー・ルク・カーンとカンフー対決を演ずるが、息子のお蔭で和解し、協力者となっている。

そしてやはり本作でも峰不二子ばりのセクシー悪女が嫣然と微笑むのだ。

本作の陰の主役はやはりワルダンであろう。
「ロボワル」、「ワルダー」など…我が国でも“ワル”を体現するキャラクターにはわかりやすい名前がつくことが多い。
ワルダンというのも名前からして悪そうだが、単なる偶然なのだろうか。

デシルバ警視として警察に潜入している時のワルダンは、宇梶剛志氏にちょっと似ている気がする。
年代無視で勝手なことをいうと、シンガニヤは草野大悟氏でどうだろう?

だが、肝心のドンとロマに適役そうな日本人俳優が思いつかない。
…こんなことをあれこれ妄想するのも、濃いキャラ連発の外国映画鑑賞のお楽しみだったりする。

『DON2』「ボリウッド4」関連で、もし映像ソフト化されることがあるなら、是非とも本作とセットで出して欲しい。そんなことを思いながら、ディスクをレンタル屋に返した。

さて上の動画の引用で、魅惑のミュージック・ナンバーの数々は既に十分ご紹介した積りである。サントラ盤を早速手に入れたのは言うまでもない。
ikekatのブログ

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『DON 過去を消された男』
(原題:DON)

2006年 インド
カラー168分

監督・脚本:ファルハーン・アクタル
製作:リテーシュ・シドワニ
音楽:シャンカル=イフサーン=ロイ

主な出演者:
ドン/ヴィジャイ(二役):シャー・ルク・カーン
ロマ:プリヤンカー・チョプラ
ジャスジート:アルジュン・ラームパール
カーミニ:カリーナー・カプール
デシルバ警視:ボーマン・イーラーニー
マリク国際警察部長:オーム・プリー

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参考:各種紹介サイト
以上、敬称略