調子に乗って今宵は華麗に二連発。

今回のテーマは、4月中に是が非でも取り上げておきたいこの店。


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神田はカレー店激戦区といわれる。

私にとって原点は神保町の「ボンディ」で、幾度も行っているが、「ボンディ」贔屓が強いがゆえに、寧ろ他の店への訪問経験は少ない。


そんな中にあって何度も訪れているのが、ここ「共栄堂」である。


「スマトラカレー」を標榜するこの店は、無論カレーが看板メニューだが、冬季だけ登場する「焼きりんご」が隠れた看板メニューである。


そんなわけでどうせなら「焼きりんご」が供される10月~4月の間に訪れたほうがよい。


今季は2月と4月、2度訪れた。


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2月某日、夜7時半近くに行く。

靖国通り沿い、三省堂書店へ折れ曲がる手前、古本屋が立ち並ぶ対岸。

レンガ造り風建物1階の広く開いた階段を地階へと降りると、さながら喫茶店の如き大窓の広がる開放的な店内へといざなわれる。

流石にピークの時間は過ぎ、空席があちらこちら。


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愛想のいい若いウェイトレスさんに早速注文を告げる。

この日頼んだのは、「ビーフカレー」ソース大盛(1,300円+300円)、それと食後に「焼きりんご」500円)。


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ご覧の通り、如何にも濃厚そうな焦げ茶色のルゥで、クリームがサッとひとかけ。

昔懐かしいソースポットに山と盛られ、こぼさぬよう慎重にライスにかける。

意外なほどにルゥはサラサラとしており、ご飯にスッと染み渡るのを匙で掬い、一口。


最初は軽口にも思えるが、幾種類ものスパイスの味が複雑に絡まり、徐々に辛さが口中に広がる。

日本人の口に合うよう、食べやすくアレンジされていながら、スパイシーさも併せ持つ、この店ならではの味わいである。


付け合せのコーンスープは出てきたときはあつあつで、カレーと一緒に飲むと辛さが倍加されるから、元々甘党の私はカレーを全部平らげた後、一気にぐっと飲み干した。


先ほどのウェイトレスさんが足取り軽く絶妙なタイミングで、サッと水を注ぎ足してくれる。


それを合図にお待ちかねの「焼きりんご」が来た。


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見事なまでの飴色で、お好みでクリームをかける。

スプーンをナイフ代わりに切り開き、まずは身だけを掬いとって一口。

酸味とシナモン風味が効いた、濃厚で柔らかな食感が堪らぬ。

続いて皮も一緒に。

皮が加わると新たな食感のアクセントとなり、濃厚さが増す感じがする。

皮を残すのは勿体ない。


こうして、切り開いては身を一口、皮ごとスプーンで掬って一口。

それを夢中で繰り返す内、名残惜しくも全部なくなってしまった。


さてそろそろ帰るとするか。

そう思い、コップの水を飲み干すと、今度は老女といって宜しいような恐らくはこの店の大奥様なのであろう、見かけによらぬフットワークの軽さでササッと水を注ぎ足してくれる。

残すのも悪いので、もう一杯ぐびっとコップの水をあけ、上着を羽織りレジへと向かう。


応対してくれたのは先ほどの老婦人。


「カレーも焼きりんごもとても美味しく頂きました。

こちらのお店の焼きりんごを頂くのが、冬の楽しみでして…。」


そう申し上げると、思いがけない常連アピールの決めゼリフになったのか


「まぁまぁいつも有難うございます。」


丁重に頭を下げられ、却って恐縮する。


大井町の「ブルドック」といい、この店といい、大奥様というべきポジションの老婦人が給仕を取り仕切り、目を配っている店に外れはない。

というのが私見である。

長い経験に裏打ちされた行き届いた気配り、目配りは、店のちょっとした給仕をもの柔らかく、そしてキリリと引き締める。そんな風に思える。これは断じて若い娘さんにはできない芸当である。


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4月某日。暦は春だがやけに肌寒い。

自分にとっては月例の、書泉グランデ詣での後、「焼きりんご」への名残とばかり再びこの店を訪れた。

今回は休日の昼下がりゆえ、店内は結構混んでいた。


頼んだのは、「チキンカレー(1,100円)、食後の「焼きりんご」500円)は外せない。


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メニューをみると、カレーソースが味によって全種類異なると書いてある。


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そういわれてみれば、こころなしかルゥの茶褐色は、前回の「ビーフ」よりも僅かに薄い色にも思えるが、二つ並べて食べ比べてみたわけではないので味の微妙な違いまではわからない。

ほどよく煮込まれた鶏肉が、ソースに混じりあってこちらも美味い。


そしてお待ちかねの「焼きりんご」


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見た目はあつあつそうな濃厚な飴色だが、よく冷えていて、良い口直しになる。またたく間に全て胃袋に収まった。


混んでいるにもかかわらず、サッと水を注ぎ足してくれるタイミングの絶妙さは相変わらずである。


この日勘定台に立っていたのは、白髪混じりの角刈り短髪の体格のいい男性。恐らく店をとりしきる大将であろう。


「とても美味しく頂きました。」


そういいながら、財布に1,600円ちょうどあったので差し出すと、


「かたじけないっ。」


元気よく、実に元気よくそう仰ったのである。


実生活の場において、人から「かたじけない」と言われたのは生まれて初めての経験であった。


御身は武家のご出身でおじゃりまするか。


そっちが武家なら、こっちは公家にでもならねば対抗できぬではないか。


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この店は、カレーを注文すると、実にあっという間に運ばれてくる。

その速さは感動的ですらある。

本来の意味でのファーストフードを体現したカレースタンドなのだといえよう。


近年行列店となってしまった「ボンディ」や、明大生御用達の「まんてん」

これらの店で長時間並ばずとも、神保町に「共栄堂」あり。

ここなら殆ど待つことなく、美味しいカレーにありつける。


それに絶品「焼きりんご」が待っているのでおじゃる。


…失礼。まだ公家言葉が抜けきっておらぬわいなあ。

って今度は歌舞伎調か…!?


4月も残りあと2日。

「焼きりんご」が食べたくなった人、急がれたし。


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スマトラカレー共栄堂


東京都千代田区神田神保町1-6

サンビルB1


TEL:03-3291-1475

11:00~20:00 (L.O.19時45分)

定休日:日曜日(祝日は不定休)


4/29(月) は営業、5/3(金)~5/6(月)はお休み。


データは公式サイト より。

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