前回あれほどマサラ映画について熱く語った手前、カレーについても書きたくなった。
2か月半の沈黙を破り、「華麗行脚」復活である。
2度目の『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』が終わったのは夜の6時半過ぎ。
頭の中には賑々しいインド音楽が未だ鳴り響き、この日の晩飯は何としてもカレーでなければならない。インド腹指数が最高潮に達し、さて渋谷でカレー、どこにしよ?
思い浮かぶは「ムルギー」。ひと際高い丘の上にひっそり佇むホテル街。その一角に渋い店構えを見せるこの店は、今は昼しかやっていない。
文化村の先、松濤方面に向かう先に突如現るログハウス。「リトルショップ」の「気まぐれカレー」も恋しいが、こちらも昼の開店後、行列必至の売り切れじまい。
ならばと思いついたのは、「ムルギー」と並ぶ渋谷カレーの老舗の一翼、ここ「いんでいら」である。
ヤマダ電機脇の抜け道を通り、道玄坂へ至る。この道沿いには、地下にカレー店が入るビルが2つあり、これまで幾度も間違えていた。
坂の上のほう、「すし台所屋」そばの地下にあるのが「パク森」、かつてシネセゾン渋谷が入っていた「プライム」のすぐ先、「道玄坂センタービル」地下にあるのが「いんでいら」である。
*****
階段を下りてすぐ左に曲がるとお目当ての店はあった。
この日はこれから大雨の予報だったせいか、狭い店内には奥のテーブルに若者たちのグループが集っているだけであった。やがて彼らが店を後にすると、まだ夜の7時だというのに、店内は貸し切り状態となった。
メニューの貼紙をみる。
基本的には、欧風の「いんでいらカレー」、インド風の「カシミールカレー」、「ベンガルカレー」の3種類からなるのは昔から変わらない。
*****
かつて「いんでいら」は渋谷駅東側、明治通り沿い1階に本店を構えていた。
いつの間にかこの場所から撤退し、今は海鮮丼屋になっている。
随分昔、一度だけこの場所の「いんでいら」に行ったことがある。
その時は3種類のカレー盛合せがメニューにあり、初めてだったのでそれを頼んでみた。
「いんでいらカレー」、「カシミールカレー」までは良かった。
だが、3つめの「ベンガルカレー」を口に入れた瞬間、舌を刺すような強烈な刺激が襲った。
辛い…辛すぎる…
この強烈な刺激。
子供の頃、当時食卓に上るカレーといえば、ハウス「バーモンドカレー」かグリコ「ワンタッチカレー」の甘口だったものだが、一度だけ父のリクエストで「ジャワカレー」辛口が出たことがある。
10歳にも満たぬ子供の舌には、刺激が強すぎた。
水をガブガブ飲んで、途中であえなく降参。
そのことを思い出した。
大人になって、大分カレーの辛みに免疫ができ、辛さ○○倍といった特殊なものでなければ、大抵のカレーは大丈夫。
そう思っていたが、吹き出る汗と涙と鼻水。もはや食べ続けるのは無理。そう判断し、断腸の思いで残して帰った。
*****
そんなわけで「ベンガルカレー」はやめにしておく。
欧風の「いんでいらカレー」にしておくのが最も無難な選択で、「ビーフステーキカレー」というのに著しく心惹かれるものを感じたが、つい先ほどまで濃厚なボリウッド映画に浸ってきたのである。
何としてもインドぽいカレーを腹に収めたいと思った。
その時目に飛び込んできたのは、脇に貼られた「ポークとカシミールチキンカレー」の文字。
よしっ、これにしよう。
…十数分後、店のおじさんが持ってきたのがこれ。
2種類のルウがご飯を境に皿上に盛られるか、あるいは2種類とも小皿に盛られてご飯と別に出てくるか、てっきりそう思っていたが、予想に反して「欧風」が1枚皿に盛られ、オプション的に「カシミール」が小皿で出てきたのが面白い。
さてお味は…。
トロリとした食感にマイルドな風味の「いんでいらポーク」は思った通りの味。
「いんでいらポーク」だけを少し食べ進め、ぽっこり空きスペースができたところで、「カシミールチキン」を流し込む。
こちらはサラサラとしてスパイスの味が効いている。
だが激辛ということもないほどよい辛さで、マイルドな「いんでいらポーク」とは好対照。
両者を適度に混ぜ合わせると一層複雑な味わいとなる。
決して量は多くなく、あっという間に食べ終えたが、自分好みの欧風と、スパイシーなインド風の両方が味わえて、まずは最前からのインド腹を満たすことができた。
「いんでいら」は昭和30年の創業。
岡山名物の「えびめし」は、元はこの店が発祥だときいたことがある。
今度は「元祖えびめし」いってみるか。
甘党の舌には、寧ろこちらのほうが合っているのかもしれない。
*****************************************
いんでいら 道玄坂店
東京都渋谷区道玄坂2-29-6
道玄坂センタービルB1F
TEL:03-5458-8154
営業時間:10:00~22:00
年中無休
データ、渋谷道玄坂商店街振興組合公式サイト より
*****************************************


