駅弁大会の後半にのみ登場する行列のできるパン屋さんである。

大阪・ミナミの更に南方、南海電車・岸里玉出駅すぐ高架下に本店はある。


これで3年連続並び、毎年大量にパンを買って食べている。

駅弁メインの会場で、何で大阪から来た菓子パンにこんなに列ができるのか?と訝りながら、暫く敬遠してきたが、一昨年の平日、「これだけ人気なのだから、それだけのものがきっとあるに違いない。」そう確信して試しに並んでみたところ、以来この店に並ぶのが毎年の習慣となってしまった。


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昨年までで十分味わい尽くしたと思ったから、今年こそはパスしようかと当初は思っていたのだが、後半戦初日11時半の販売開始寸前の時間、思ったほど列は長くないのを発見する。

そうなるともういけない。嵩張る大荷物は避けねばならぬ状況下で、やはり甘い誘惑に負けて並んでしまった。


ところが一向に列は進まない。丁度大きな柱の脇に並んでいた。柱の横から首を突き出すようにして、向こうの店の様子を窺うが、お店の人たちは、先ほど大量に運び込んだ木製トレイを並べ、何やら懸命に作業してはいるものの、並んでいる客が捌けていく気配はまるでないのである。


「まだ動きませんねぇ…」最初はそんな言葉から、すぐ後ろと更にその後ろにそれぞれ1人で並んでいた女性客たちと、立ち話を始めた。

どちらの方も、この店は数年来毎年並んでいるという。私よりも遥かにキャリアは長いようだ。


やがて少しずつだが漸く列が動き出した。

手にしたチラシを見つつ、やがて「どの弁当が美味しいか?」という話になった。


私の2つ後の年配の婦人が、「ぶりかまめし」の名を挙げた。

我が意を得た気分である。

私のすぐ後ろの推定50代のご婦人は、「ぶりかまめし」を召し上がったことはないようだった。それで2人して、“ぶりかま”が如何に美味しいか、懇々と切々と説いた。

ついつい嬉しくなって、「この地下でも、最近は東京駅でも、3月頃までは売っていますよ。輸送ですが。」そんな話にまでなった。


やがて柱の向こうに列が進むと、仕切りロープの向こうに、このお店の大将(社長)の見覚えのある細長い赤黒い顔が見えた。

前にいた若い男女の客も常連らしく、この後、出張販売に来る場所と日程を聞いていた。

やがて列が更に少し進み、私の立っている目の前に大将が居る格好になったので、もう一度出店の予定を聞いてみた。チラシにメモする。


「確かこちらは、本店が岸里玉出にあるんですよね?是非一度本店に伺いたいです。」と私。

「いや~そんなわざわざ本店まで来てもらわんでもよろしいワ。難波の高島屋にも店ありますよってに。」と大将。


大将がその場を去ると、周りに並んでいた人たちから、先ほど聞いた場所と日程を、今度は私が尋ねられた。

老若男女。姿形も、恐らく勤めも境遇もそれぞれに異なれど、これだけは同じだと絶対に言い切れるのは、皆玉出木村屋のファンだということだ。

でないと出店初日、販売開始時間に、わざわざ1時間近くも並ぶものか。

皆、それぞれこの店の甘いパンを愛している。それだけは間違いない。妙な仲間意識が生まれる。折角だから、その時周囲にお教えした情報を、ここにも書き記しておこう。


西武百貨店池袋店:4/26~5/1

伊勢丹新宿店:6/26~7/3

小田急百貨店新宿店:9/11~17


これの前に、たまプラーザにも3月頃初めて行くと仰っていたが、具体的な日取りはメモしそびれてしまった。

前から京都では頻繁に出店していることは知っていたが、こうしてみると意外と東京にも頻繁に来るようだ。


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それから尚も待つこと十数分。漸く売場の前に来た。お盆を渡される。

広げられた木箱には色とりどりのパンの山。店員さんの商品説明に耳を傾けつつ、買うパンを選ぶが、凡その見当はついている。ついてはいるが、目の前のパンを見ると、ついついあれもこれも、と予定以上のパンをお盆一杯に盛り上げた。


結局殆どの種類を買ってしまった。8種類計14個。3,000円に少しお釣りが出る程度である。大きな手提げの紙袋に入れてくれた。


この後買った駅弁を下に入れ替え、注意深く持って帰った。大量の駅弁もあるから、食べ切るのにひと難儀だったが、結局1週間ほどで全て食べ切った。


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・ベネティアーナ(1/2サイズ) (472円)(写真左)


この店の看板商品。

柔らかめのクッキー状の生地に粉糖がまぶされ、アーモンドが散りばめられている。中はふわふわ。オレンジピールの酸味と甘みが嬉しい。

フルサイズ(丸ごと1個)だと、945円。


雪山パン (525円)(写真右)


中央が山型に盛り上がった、粉糖が山ほどまぶされたパン。というよりはドイツ菓子「シュトーレン」の小型版といったほうが近い。

ヘーゼルナッツ、レーズン、チェリー、オレンジピールと中の具材は多彩。甘い菓子パンばかりの中にあって、ひと際甘い。高価だが、シュトーレンだと思えば割安である。長さは20cmくらい。


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石焼きいもパン (1袋441円)

石焼きいもを模した5cmくらいのサイズのパンが5個。サツマイモをたっぷり使ったしっとりとした中身に、芋の皮風味の外側がアクセントとなる。黒ごまがまぶされ、焼いもぽくしてあるのが楽しい。これも他店のものに比べると甘めの味付け。


あんデニッシュ? (189円)(写真左下)


正確な商品名は忘れてしまった。デニッシュ生地の中身はたっぷりの粒あん。それに餅。求肥餅か?これも甘い。


・練乳ロール (189円)(写真右下)

白いふわふわのロールパンに、クリームが入っている。そのクリームが練乳というのが珍しい。そのため、ものすごく甘い。


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・マロン? (284円)(写真左上)


これも正確な商品名は忘れてしまった。クッキーを練りこんだような甘いしっとりとしたケーキのような生地の中に、甘く煮込まれた栗が3つ。生地の密度が濃いので、結構食べごたえがある。


ロールデニッシュ (189円)(写真右上)


ロールケーキ状のパンだが、外側はパイ生地。表面には粉糖。中身は甘いバナナである。バナナをフランボワーズ・ソースなどにしても美味しいと思うが、バナナで甘くしているのが、この店ならではの味である。


ウィンナーショコラ (231円)(写真手前)


ドーム状のチョコレートパン。中身はたっぷりのカスタードクリーム。カスタードも甘いが、それ以上に上にかかっているチョコレートが、ミルクチョコで、ものすごく甘くて肉厚。唯一の欠点はこのチョコがボロボロと崩れてしまうこと。チョコレート好きのためにあるようなパンだ。


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今回は来ていなかったが、前回は「マルガリーデン」という名の、ひまわりの花のような形をしたメロンパンもあったと思う。バターの味が効いて香ばしくて美味かった。


今年並んだ時は、まだ行列は会場の7階で留まっていたが、その後の土曜昼には上の8階に至るほどの大混雑。行列が更なる行列を呼び、こんなに並んだのだから、まさかパン1個で済ませられるはずもなく、そこでついつい沢山買う。

お店の方の呼び込み、売り込みもすごい。ひと際活気に満ちている。


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昨年も同じようなことを書いた気がするが、以上のように随分甘めの味付けの菓子パンばかりである。「下品な甘さ」などと言われることもあるようだが、私はこの店の甘いパンが好きだ。

それは遠い昔、ダイエットとか健康に良いとか、そんなことがうるさく言われ出す前の、砂糖の甘さが豊かさの象徴だった時代の名残を感じさせるのである。

上等のアイスクリームでいえば、1970年代の「レディーボーデン」は甘かった。

幼少期、そういう味に憧れた。そんな郷愁を感じる。

だから糖分摂りすぎなのは承知の上で、年に一度沢山買う。


お店の大将は、わざわざ本店まで来てもらわんでも…と仰っていたが、その内本店行きまっせ。

まぁその後毎朝甘い菓子パン食べる覚悟で行かなあかんけど。


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玉出木村屋


大阪市西成区玉出中 2-1-1