今夜「TBSチャンネル2」で、『愛といのち』というTVドラマを観た。
若かりし島田陽子さん主演の、前々から是非一度観たいと思っていたものである。
恋人との結婚を控え幸せの絶頂にあった娘が死の病に侵されるが、母はそのことを娘には告げず、恋人は残された時間を彼女と共に生きる決意を固め、結婚式を挙げるが…。
まずは作品データから。
(以下、敬称略)
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『愛といのち』
1973.9.30放映 TBS
プロデューサー:石井 ふく子
監督:坂崎 彰
脚本:橋田壽賀子
出演:山岡久乃、島田陽子、山本圭、緒形拳 他
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綾(演:山岡久乃)は、夫との死別後、呉服店を営み、女手一つで一人娘・直子(演:島田陽子)を育ててきた。
直子は恋人・信隆(演:山本圭)との結婚を控え、式や新居の準備に忙しくも幸せの絶頂にあった。
かねてより胃痛を訴えていた直子を、綾は「結婚前は健康診断をするものよ」と病院に行かせた。
綾は担当医師(演:緒形拳)に内密に呼び出され、直子が若年性胃ガンに侵されていることを告げられる。
医師は明日にでも入院し手術を受けるよう勧めたが、完治はできず、あと一、二年の命、もし手術しなければ半年の命だという。
亡き夫もまたガンに罹り、手術を受けて苦しみながら数年の闘病の末、命を落としたのを目の当たりにした綾は、娘にも同じ苦しみを味わわせたくはなかった。
綾は信隆にだけ直子の病のことを打ち明けるが、信隆は結婚を諦めず、直子と共に生きていくことを決意する。
やがて二人は予定通り式を挙げた。最初に出会った思い出の鴨川の海へ新婚旅行へ向かい、幸せをかみしめる。
新婚生活を迎え、甲斐甲斐しく夫の世話をする直子。
やがて直子が吐き気を訴え、心配する綾と信隆だったが、直子は「赤ちゃんができたの」と頬を染めた。
だが医師の説明は残酷なものだった。妊娠は気休めの嘘で、病の進行ゆえの症状を、本人にはそのように説明したのだという。
綾は産着を縫い、直子の元へ届けるが、姿を見せた直子は元気を装ってはいるがやつれている。
思わず入院を勧める母。
「…わたし、まだ家のことできるのよ。
信隆さんに少しでも何かしてあげられる間は、信隆さんのそばにいたい。
わたし、やっと信隆さんの奥さんになれたんだもの。
別れて暮らすなんていや。
二度と入院なんていわないで。」
だが、ついに直子は食べ物を受け付けなくなり、倒れてしまう。
夫に自ら「病院へ連れて行って」と告げた。
綾は医師に「今からでも手術してほしい」と哀訴するが、すでに全身にガン細胞が回り、手の施しようがないという。
ある日、「少し気分がいいの」という直子の望みを容れ、信隆は思い出の海へ直子を連れ出す。
「初めて会った時も、あなたにおぶってもらった。」
「…空も砂もあの時のまんま、何も変わっていない。
でも幸せだった。本当に…。
海も見られたし、もう何も思い残すことなんてない。」
病室に戻った直子は医師の処置で一度は目を開きかけるが、そのまま息を引き取った。
泣き崩れる綾に、信隆は直子の遺書を見せる。
「病気のこと知っていました。
母さんも信隆さんも正直すぎて、あれでは誰だってわかってしまいますよ。
…でも、直は心から感謝しています。
母さんや信隆さんのお蔭で、直は残された半年を精一杯幸せな思い出を詰め込んで生きることができました。
赤ちゃんだってできたんですもの。今は何も思い残すことはありません。」
赤ちゃんを産むことを最後まで夢見て散って行った、今はもうもの言わぬ娘に、母は産着を被せ、泣きじゃくりながらこう告げた。
「直子、天国に行って立派な赤ちゃんを産むんですよ。これを着せてやってね。」
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出演者が皆、役柄にぴたりと嵌まり、過剰な演出がないところが却って心に沁みる。
昔、中野公会堂へ観に行った映画・『翼は心につけて』や、かつての夏休みの定番だったやはりTBSの昼ドラマ・『わが子よ』シリーズを思い出した。
「ドラマのTBS」といわれた時代の作である。
大分前にも「TBSチャンネル」で放映されたことがあったようだが、不覚にもその時は見逃している。
本年10月から、昔のTVドラマの多くが、新設の「TBSチャンネル2」での放映となった。
それにしても何故、今さら「スカパー!プレミアム(HD)」ではなく、旧「e2」のみでの開局なのだろう。
「スカパー!」自体は加入して10年以上になるが、まさかここに来て、本作のために旧「e2」に追加で入ることになろうとは思ってもみなかった。
『夜霧の訪問者』のために「衛星劇場」へ、『姐極道菩薩の龍子』のために「V☆パラダイス」へワンポイントで加入したこともあった。今回も似たようなものだ。
島田陽子さん出演作の数少ない放映機会なので、できうる努力はみんなする。
11月23日の再放送でもう一度観ることになるだろう。