『最強のふたり』は、事故で首から下が動かなくなってしまった車椅子の富豪・フィリップと、思いがけずその介護に就くことになったスラム街出身の黒人青年・ドリスの交流を描いた、実話に基づく話である。
気難しいフィリップが、自分を特別扱いせず、歯に衣着せぬ言動のドリスに対し、そのペースに巻き込まれジョークの応酬をしていく内、心を開放していく。
一方のドリスも、最初は拒んでいた、フィリップに弾性ストッキングを履かせたり、下の世話をしたりする作業を、いつしか受け容れている。
介護車で車椅子ごとフィリップを乗せるのを「荷物を載せるようだ」と嫌い、隣のマセラティに乗せて爆音で疾駆する。
スピードが出ない電動車椅子をバイク屋に改造させ、セグウェイを追い抜いて走る。
気持ちよさそうに耳たぶマッサージをしてもらいながら、心から楽しそうに笑うフィリップの顔がとても印象的だ。
弟がトラブルを抱えてドリスのもとを訪ねてくる。
「もうやめにしよう。君の一生の仕事ではない。」
フィリップは敢えてドリスにそう言い、ドリスは屋敷を去る。
新しい介護人がフィリップの世話に当たるが、何かと病人扱いする世話人にすっかり心を閉ざしてしまい、抵抗の表れなのか髭も剃らせない。
再びドリスが呼び戻され、髭もじゃのフィリップの髭をあたりながら、色々な形に仕立ててはフィリップをおもちゃにするドリス。
冗談口の応酬に、「やっと調子が戻ったようだな」と笑いかけるドリスの視線が優しい。
往復書簡を交わす相手の女性への、詩的表現に満ちた賛辞にまどろこしさを覚えたドリスは、彼女にコンタクトをとり、直接フィリップに会わす段取りをつけるが、土壇場で帰ってしまったことがあった。
物語終盤、ドリスはフィリップを海沿いのレストランへと連れ出し、フィリップを置き去りにしてその場を立ち去る。
戸惑いながらも席に留まるしかないフィリップ。
そこに現れたのは、恋焦がれていた件の文通相手の女性であった。
「うまくやんなよ」
窓越しにニッと微笑みかけ、気を利かせてその場を立ち去るドリスの笑顔が眩しい。
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階層とか人種とかそういった異質のものを超えて、人間としての本質的な部分で互いを受け容れ、相手を思いやる気持ちに満ち溢れている。
真の友情とか絆というものはそういうところから生まれるのだと思わされる。
お伽噺的だという感じもしないではないが、この物語が実話を基にしており、海辺のレストランをドリスが去ったすぐ後に流れるエンディング・クレジットで、そのモデルとなったPhilippe と Abdel の姿を目にしたとき、大いなる説得力をもって視聴者に一層の深い感動を与える。
コミカルな要素も織り込みながら、本作が決して乱暴な男の友情物語のみに終始しない印象を受けるのに、劇中に幾度となく流れるルドヴィコ・エイナウディの繊細なピアノ曲の存在が欠かせない。
ドリスの一見粗野な言動によって、既成概念が覆されてゆき、それをフィリップが楽しそうに受け容れているが、その奥に流れる微妙なリリシズムを、このピアノ曲が見事に表現しているように思えてならないのである。
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『最強のふたり』 (原題:Intouchables)
(2011仏)
監督・脚本: エリック・トレダノ , オリヴィエ・ナカシュ
出演: フランソワ・クリュゼ(フィリップ)
、オマール・シー(ドリス)他
音楽: ルドヴィコ・エイナウディ
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