9月9日(日)
イノダコーヒー本店~清水寺~河原町
河原町―(阪急京都線)―長岡天神…純喫茶フルール
長岡天神―(阪急京都線)―梅田
―(阪急神戸線・神戸高速鉄道・山陽電鉄本線)―山陽須磨
―(山陽電鉄)―板宿
(今回の記事はここから)
板宿―(山陽電鉄・神戸高速鉄道・阪神電鉄本線)―(阪神)三宮
(阪急)三宮―(阪急神戸線)―阪急御影…ダニエル
阪神御影―(阪神電鉄本線)―香櫨園…夙川公園…
夙川―(阪急神戸線)―梅田―(阪急京都線)―烏丸
四条烏丸―(京都市交烏丸線)―京都
京都―(東海道新幹線)―東京
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前回の続き。
板宿を後にする。
あちこち巡り、随分時間が経ってしまった。
既に14時半になろうとしている。
「のぞみ」の時間を後へ遅らせてもらうことにする。
JRの駅で出やすい場所は、やはり三ノ宮であろう。
板宿で、来たのは阪神の特急。これで阪神三宮へと向かう。
(阪神特急には今はこんな椅子の電車も走っている。8001/8101/8201形改造車。)
(阪神三宮駅にて。現在改良中。今年6月に奈良方面へのホームが中央に移されたばかり。段々便利になっていく反面、昔の面影がなくなっていく。阪急に続き、阪神も上り降車ホームがなくなってしまった。)
(JR三ノ宮駅コンコースにて。所々にレトロモダンな面影が残る。)
新幹線は結局1時間半後に変えてもらった。
あまり遅くしすぎると、自宅に辿り着くのが午前様になってしまう。
高速神戸へ戻り「メトロ理容」で髪を切ってもらうのはとうとう諦めざるを得なくなった。阪急三宮へ高架沿いに歩く。
(阪急三宮駅にて。ここ止まりの山陽車に会うのは久しぶりのこと。)
これから阪急御影を目指す。
2号線に来た折り返し普通の先頭に乗る。
先ほどの山陽車が、高架橋上で止まっている。
下り阪急特急の到着をやりすごした後、普通・姫路行となって3号線に滑り込んでいった。
ほどなく赤ちゃんを連れた若いお母さんと、その母親の3人連れが来た。
何気なく話を聞いていると、赤ちゃんは男の子らしく、電車を見るとご機嫌になるらしい。
「阪急電車が行くよ~、がたんがたん。がたんがたん。」
「スーパーはくとかな~、がたんがたん。がたんがたん。」
幼な子をあやすお母さんの「がたんがたん」という言い方が面白い。聞いていて、ふと谷譲次の『踊る地平線』という小説を思い出していた。
そうこうする内、電車は発車する。
やがてお隣・春日野道を出て、JRの高架と並行していたのが山側に逸れる。特急なら、ここからいよいよ猛スピードになる場所である。
次の王子公園駅で「がたんがたん」の親子は降りて行った。
代わりに乗ってきたのは、小学生と思しき男の子と父親の2人連れ。
7000系に乗りたいと息子が言っていて、丁度それが来たから良かったやないか、と父。
そうしたら息子はやっぱり9000系に乗りたかったと言っているようだ。
…私も昔はこんなだった。いつの時代も男の子の鉄道好きは変わらない。
微笑ましい気分になりつつ、阪急御影で降り立ち、乗ってきた電車を見送った。
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屋敷町を通り抜けると、ほどなく山手幹線に突き当たる。
山手幹線沿いに少し歩くと、「ダニエル」がある。
京都・伊勢丹の店がなくなってしまったので、わざわざ本店まで来てしまった。
お気に入りの「巨峰のタルト」はなかったが、代わりに「マンゴーのタルト」、「桃のタルト」、「山ぶどうのレアチーズケーキ」を買う。
ケーキを提げながら、御影の並木道の緩い下り坂を、阪神電車の御影までゆるゆると歩くのが好きだ。
宝塚大劇場の帰り、よく西宮北口から阪急の普通に乗って阪急御影で降り、ここダニエルで洋菓子を買って、阪神御影まで歩き、阪神電車で板宿の祖父母の家まで帰った。
ほどなく阪神電車の御影駅に着いた。
そのまま電車に乗ろうかと思ったが、ふとお隣・石屋川駅寄りの高架下に、レトロな商店街が続いていることを思い出し、ちょっと足を伸ばしてみる。
意外と長く続いており、端まで行くのは諦める。
ふと脇をみると、髪の毛のような模様のついた大きなロールケーキが、「どでん」とショーケース内に鎮座している。
抗いがたい魅力を覚え、この枕みたいな巨大なロールケーキを1本買った。
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阪神電車の御影駅ホームに立つ。
狭い急カーブの駅に普通車が特急を待ち、遠目に六甲山を臨みつつ、見慣れた緑色のテントに、渋い色合いの市バスが客を待っている。
上りホーム外側の、古い短いホームの佇まいさえも懐かしくて堪らない。
特急を見送り、続いて奈良へ向かう近鉄電車が、その長い車体を持て余すように、ゆっくりと御影を通過していった。
光の当たり具合によっては青紫色にもみえる濃紺と、クリーム色というよりは肌色に思える2色を纏った、旧来のジェットカー・5001形のほうが有難かったのだが、停まっていたのは新型の5500形であった。
普通車に乗り込み、香櫨園駅を目指す。
この駅は夙川を跨いでいる。
川沿いは夙川公園と呼ばれ、春は桜の名所である。
随分久しぶりに駅の南側に行ってみた。
人影のないベンチに腰を下ろし、川を眺めながら、先ほど買ってきたダニエルの洋菓子の箱を開ける。
紙皿とフォークを用意する暇がなかったので、何ともムードのない話だが、持っていた割り箸でケーキに舌鼓を打った。
夙川沿いに北上し、香櫨園駅を通り越す。
この時点で夕方4時。
このすぐ先、近年できた「さくら夙川」という駅からJRで、途中新快速に乗り換えて京都へ向かえば、ぎりぎり藤森の宝湯へ行って帰って来れるかもしれない。
だが、もう少しこの夙川沿いを歩きたかった。
結局、宝湯も断念し、夙川駅を目指すことにする。
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再び阪急電車に乗って梅田へ行き、ここから更に京都線に乗る。
今度は河原町の1つ手前・烏丸で降り、地下鉄に乗り換え、漸く京都へ戻ってきた。
宝湯を諦めた代わりに、京都駅前・京都タワー浴場へ再び入って締め括ることを思いついたのであった。
意外なほどにタワー浴場は混んでいた。
汗を流し地上に出ると、既に陽は落ち、ライトアップされた京都タワーが蝋燭みたいに灯っている。
それを背景に虹色の噴水が宙を舞っていた。
「おまけ」の積りで最後にくっつけた今回の京都探訪は、こうして京都タワー浴場に始まり、京都タワー浴場で終わった。
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「赤福」に「聖護院八ッ橋」と慌ただしく土産を買い込み、適当に買った幕の内弁当を新幹線に乗ってすぐかき込むと、疲れが出て眠りに落ちた。
気付けば新横浜。
再び眠ると品川であった。
大昔、神戸から東京へ越してしばらくは、神戸へ「帰り」、東京へ「戻る」感覚であった。
それがいつしか東京へ「帰る」感覚へと変わったのを、ある時はっきりと感じた。
東京へ帰ってきたと感じたのは、有楽町付近で速度を落とした「ひかり」から日劇が見えた時であった。
日劇がなくなって久しい。
今はマリオンをみると東京へ帰ってきたという実感が湧く。
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普段使う駅とは違う駅からタクシーを奮発して家へ帰る。
道々運転手さんと話する。
鉄道巡りの旅の帰りだというと、昔、可部線や鶴見線の旧型国電の引退の時に乗ったと聞かされた。
私自身も幼年期に、当時の東海道・山陽本線の緩行線で、辛うじて旧型国電を体験した世代である。
思いがけない旅の最後に鉄道話に花が咲き、あやうく家の前を通り過ぎそうになった。
4年半前、ジャック・リヴェット監督の『アウト・ワン』という映画を12時間かけて観た帰りも、同じルートをタクシーで帰った。
この時は、夜中の1時に運転手さんと、野生の狸がこの辺りにも住みついているという話をして帰った。
8日ぶりに帰り着いた地元の街も、我が家も、何だかよそ行きの顔をしてみえた。






