『アド街』をみていて、プリンが美味そうだなぁ…と思ったこの店。
プリンとラーメンのセットというのが、実にオツじゃぁございませんか。
先ずはお店のデータから。
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ペロケ
墨田区京島3-22-9
電話:03-3619-8352
営業時間:9:00~19:00
定休日:水曜
(「食べログ」より転載)
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「冷し中華」の貼り紙に惹かれ、ぶらりと入る。
17時前で、すいている。
「お好きなところへどうぞ~」
元気なお姉さんに案内され、座布団が敷いてある壁際の席へ。
壁には自家製ケーキ、ワンホール予約承る旨の貼り紙が。
5号、6号、7号と、サイズが号数で指定するのが何だか懐かしい。
昔のクリスマスケーキや誕生日ケーキはそうだった。
丁度私の幼年時代は、ケーキの主流がバタークリームから生クリームへと移る過渡期であった。
薄ピンクの薔薇の花に、薄緑色の葉っぱ。
大きな飾りがついたほうがバタークリームのケーキだと、経験的に知っていた。
デコレーションケーキが主流だった時代。
ケーキの形が多様化するのも、シンプルな形のケーキが登場するのも、もう少し後のことだ。
調べてみると、5号=直径5寸=約15㎝ だそうで、1号増すごとに3㎝増えるとのこと。
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料理の種類は実に豊富。
夕飯には少し早いが、小腹がすいたことだし、「冷し中華」とあと何かデザートを頼むか。
そう思って一通りメニューを見て、頼んだのは
「自家製プリン濃厚バニラ添え」
プリンにもアイスクリームにも一家言あるつもりなので、メニューで見つけた瞬間、「これだ!」と決めた。
「冷し中華」とではセットにはならないが、そんなことはこの際関係ない。
食べたいと思ったものを食べる。
「(料理の順序は)一緒でいいですよ」
といったら、先にプリンとアイスクリームが出てきた。
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まずは「濃厚バニラアイス」から。
これは美味い。
大昔から、バニラアイスといえば
「レディーボーデン」 > 「リーベンデール」
「明治エッセル・スーパーカップ」 > 「イタリアーノ」
という動かせぬ嗜好を持つ私にとって、この濃厚な味わいはまさに至福の時。
「甘さ控えめ」なんてどっかへ飛んで行ってしまえ。
これだよ、このオレンジ色がかった玉子風味がしっかり効いた濃厚な甘みが、手作り感覚のバニラアイスの真骨頂だ。
3歳の頃、母親にせがんで、アルミのラーメン鍋に作ってもらったバニラアイスはやけに黄色く、数時間おきに何度も取り出してはかきまぜ、出来上がるのを心待ちにした。
作り方が載っていた「こども図鑑」には、何故か、焼酎を入れると書いてあり、ここで「しょうちゅう」という言葉を漢字も解らぬまま覚える。
バニラアイスクリームの上等といえば、今では「ハーゲンダッツ」の一人勝ち状態だが、2000年頃まではもっともっと色々な製品があって、食べ比べると味の違いが分かって楽しかった。
「ハーゲンダッツ」の「バニラ」は独特の風味があって、美味しいし、王道だし、嫌いじゃなく寧ろ好きだが、これだけが高級バニラアイスクリームの全てだとは思わない。
もうご記憶にない方も多いだろうが、
「ビンテージ・ブルボンバニラ」(雪印乳業)
「アンリ・ヴュータン」(エスキモー(森永乳業))
「彩」(明治乳業)
「FAUCHON(フォション)・マダガスカルバニラ」
等々
20年ほど昔は、「ハーゲンダッツ」のライバル製品がひしめいていた。
あの頃が懐かしい。
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さて、今度はプリン。
柔らかくて甘い。
カラメルソースはたっぷりかかり、苦みも効いているが、甘みが勝る。
カップの材質や、滑らかさから察するに、蒸しプリンであろう。
「銀座コージーコーナー」の「ジャンボプリン」に、自家製感覚を加えた感じに思えた。
今でこそ、コンビニやスーパーで簡単に美味いプリンが買える時代になったが
30年ほど前までは、プリン事情は全く違っていた。
手軽に買えるのは、「プッチンプリン」などのゼラチンで固めたタイプのものだけで、それ以外ではハウス食品の「プリンエル」や「プリンミクス」を元に、母親に作ってもらうのが定番だった。
幼少期、牛乳が嫌いだった私は、敢えて、水で溶いて作る「プリンミクス」をリクエストしたものだ。
本格的なプリンにありつける機会といえば、たまに連れて行ってもらった喫茶店で、「プリン ア・ラ・モード」を頼んだ時が唯一であった。
喫茶店のプリンは、カラメルソースが苦み走った大人の味で、それを我慢して口に含んでいると、じわりと甘さが広がった。
当時は専ら焼きプリン。
子供が恐る恐る横からスプーンを入れようにも、簡単には入らない。
力を加えてエイヤっと掬い、口に含むと、外側の微妙に硬い膜の食感が残る。
これを噛みしめながら、苦甘いカラメルを味わう。
滅多にないが、全くないわけではない、こうした「焼きプリン」経験は、鮮烈な記憶として残った。
だから、私にとっての理想のプリン像は今でも、側面が固く、カラメルが苦甘く、カラメルの茶色が下のプリン本体にグラデーションのように染みて、ほんの少し気泡と焼け焦げた風味が残る、そんな、喫茶店の「焼きプリン」である。
これは絶対に譲れない。
喫茶店の焼きプリンには及ばないが、井村屋の夏のギフトセットなどには、缶詰になったプリンが入っている。
神戸の祖父母の家で、時たまこれを食べさせてもらえた。
折角のプリンを傷つけないよう、注意深くプルトップの蓋を開け、そっと皿にあけると、独特の甘い汁に漬かった缶詰めプリンが現れる。
缶詰プリンは、焼きプリンに次ぐ“ご馳走プリン”であった。
大人になって方々で食べた中で、一番理想像に近いと思ったプリンは、胡桃の入った「チョコレート・ケーキ」で有名な、赤坂トップスのプリンであった。
黒っぽい陶器に入った、やけに値の張るプリンである。
この入れ物は、食べた後、蕎麦猪口か、ぐい飲みとしてそのまま使えそうな器であった。
(レア?な蕎麦猪口もといトップス・プリンの器。大切にとってある。)
後年、甘めと苦めの2味に分かれ、容器も簡易なものになってしまったが、暫く後、トップスのプリンそのものがなくなってしまうとは、夢にも思っていなかった。
…すっかりプリン話の迷宮に入り込んでしまった。
そんな自分のプリンの理想像とは少し異なるものの、それでも、ここ「ペロケ」のプリンはかなりいい線行っている。
万人に愛される親しみのある味だ。
それでいてキラリと光るものがある。
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すっかりデザートを堪能しつくしたところで、「冷し中華」が来た。
今年初めての冷し中華はこの店で味わうことになった。
錦糸卵にキュウリ、モヤシに鶏肉。それとワカメ。トマトはなし。
タレが別皿で出てくるのが珍しい。
好みでかける量を調整できるのが良い。
が、結局全部かけた。
酸味の効いたサッパリ味。いい口直しになった。
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プリンが気に入ったので、更に持ち帰りで3個包んでもらうことにする。
「プリン、とても美味しかったです。」
お勘定のとき、お姉さんにそういうと、とても喜んで下さった。
「どうも遠い所をわざわざ有難うございました。」
…あれれ、どうしてわかったんだろう?!
よそ者オーラが出ていたのか…?
Tシャツに麦わら帽子、サンダル履きといった出で立ちのほうが地元の人っぽかっただろうか?
…そんなことを思いながら、店を出た。
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出たところで、ふと思い当った。
「お持ち歩きのお時間は?」
そう訊かれて、
「1時間くらいです」
何のことはない。
よそ者だって自白していた。








