高速神戸駅西口改札を出た先、お隣・新開地駅までの短い距離を「メトロこうべ」という地下街が結んでいる。


昭和43年、神戸高速鉄道が開業した当初、東から来る阪急・阪神は高速神戸止まり、西から来る山陽は新開地止まりと、まるで意地悪するように、この2駅間の列車は少なく、しびれを切らした乗客は、よくこの「メトロこうべ」を歩いて隣り駅へと向かったそうだ。


やがて列車の接続が改善されてゆくにつれて、この「メトロこうべ」をわざわざ歩いてみる客が減ったのか、現在は、『不思議の国のアリス』の壁画、ゲームセンター、卓球場、古本屋街などが並ぶ、場末の雰囲気漂うレトロな地下街の趣となっている。


時折ここの古本屋をのぞいてみるが、安い文庫本に、成人男子向DVDに安雑誌などが並び、正直興味を惹かれるものは少ない。


この古本屋の並びの斜向かい、高速神戸駅西口改札を出たすぐのところに、「メトロ理容」という名の床屋がある。

洗髪、髭剃り付で850円と、破格の安さである。


ikekatのブログ-メトロ理容


スタッフは皆おっちゃん床屋、仄かに漂ってくる髭剃りムースとシャンプーの匂い、待合いに置いてあるのは専ら『週刊大衆』と、とことん男性向けに徹した店なのである。


私が初めてこの店を訪ねたのは今夏のこと。


ゆかりの地である板宿で、東方に聳える「五位の池」という、丘というよりは山に登るという俄かハイキングを朝から強行。

須磨浦公園のカーレーターという、全国でここだけらしい、珍しいが、恐ろしく乗り心地の悪い乗り物に乗り、夕方、他に誰も居ない休憩所で、蜩の声を背に、高校野球中継を見たりして、全身汗だく、足には靴ずれ、身体はヘロヘロの状態で、新開地から「メトロこうべ」を歩いた末に、ふと目に留まったのがここ「メトロ理容」の看板。


ikekatのブログ-カーレーター2

この時担当してくれたのは、ひょろっとした、色浅黒い、スキンヘッドに片耳ピアスという、一見怖そうなおっちゃん。


意外に人懐こい方で、髪を切りながら、色々話しかけてくれる。


「お客さんは、ここ初めてですかぁ?」

「元町で50年以上やってましてなー」

「理容師と美容師は違いますねん」


東京から旅行中であることはあえて言わず、終り際に


「また寄せてもらいますワ」


昔取った杵柄で、ちょっとソフトな神戸弁で応える。


10月にも再びこの店の客となった。


今回は日曜朝から。


さすがに客は少ない。ベテランそうなおっちゃん床屋は、流れるような手さばきで髪を切ってくれる。

短い時間ですっかり気持ち良くなった。


次、神戸に来るときにも、また訪ねようと思う。