ガン闘病中は、ほんと悲喜こもごもです。
私の最初の抗がん剤投与中、忘れられないのが親しかった闘病仲間の死でした。
彼女は悪性リンパ腫の中でも「セザリー症候群」という希少なタイプのガン。
セザリー症候群の説明はこちらです↓
https://medley.life/diseases/54f81f716ef458bb3885ce24/
説明にあるように、5年生存率が10%~20%という、非常に予後不良なガンです。
私の抗がん剤投与入院、2回目(2クール目)の時、彼女と同じ病室になりました。
彼女をSさんとします。
Sさんと私はすぐに打ち解けて、お互いの病気談義で盛り上がりました。。
そこで私は「セザリー症候群」という病名を聞き、彼女との話のあと携帯で調べて、はっとしたのです。
この病気、なに、えっ・・・。
セザリー症候群はこれといった有効な薬がなく、発病後は数年でほとんどの方が亡くなってしまう現状。
明るいSさんからは想像もつかない非常に困難な状況でした。
Sさん自体も会話の中で「私の病気、治療法がないのよ」とさらっと言うようになりました。
私は彼女の強さに感心すると共に、何とか薬はないか、必死で願い始めました。
「何か、薬が出てほしいよね」
「海外で治験中の薬でも、いいのがあったら、取り寄せできないのかな」
といった感じで、毎日話をしていました。
Sさんはあくまで希望を持っていた。
私もSさんに心から同調していた。
Sさんと私は主治医が同じで、主治医は非常に有能で患者思いの先生でした。
Sさんが少しでも長く延命できるよう、主治医は「その時使えそうな薬」を必死に選んで使っていたようです。
そんな主治医の姿を見てSさんも、「ほんと頑張ってくれて、いい先生よね」と笑顔で話していました。
そのかたわら、「(治療する)薬があるだけまだいいわよ。」と私やまわりに声をかけていました。
その年の年末、Sさんは一時帰宅を主治医に申し出ました。
実はSさんのガンはかなり進行していて、感染症などに罹患したらもうアウトという状態でした。
そのため主治医は即答できなかったのですが、Sさんの願いにOKを出さざるを得なかったのでしょう。
迎えに来たご主人と一緒に、意気揚々と一時帰宅(退院)するSさんは、ほんと、嬉しそうだった。
私に「これ、使ってねえ~」と院内で使用するテレビカードをくれて「もう病院には来たくない」と言った。
迎えに来たご主人は、少し複雑そうな表情をしていたのを覚えています。
病院の1Fロビー。
年が明けて、その一か月後くらい、私はまた抗がん剤投与入院をし、Sさんと隣りの病室になりました。
Sさんは「一時帰宅は楽しかったけど風邪ひいちゃって、また病院に逆戻りよ」とこぼしていました。
その時も高熱が出ていたSさん。
私が退院する前の日にSさんのベッドに行ったら、「治療薬がない。ほんと薬があるだけまだいいのよ」
と、励ましてくれながらも、自分の病気についてぼやいていた。
Sさんときちんと会話したのはそれが最後でした。
私が退院するとき、隣の病室のベッドにSさんはいなかった。
「あれ、検査かな・・」と思っていたのですが。。
次の月、また私が入院をしたとき、Sさんの姿はいつもの病棟にはなかった。
私はイヤな予感がして、Sさんと同じ病室で長期入院していたKさんに聞いたところ
「Sさん、あのあとすぐ無菌室病棟にいっちゃって、帰ってきていない」との事。
病院では無菌室でも2段階あって、準無菌室と、さらに強化されて管理も厳しい無菌室があります。
そちらの無菌室は移植後の患者さんか、かなり状態の悪い患者さんが入るところです。
Sさんは、そこに入ったのでした。
私はダメでもともと、主治医にSさんの事を聞いてみました。
主治医は答えませんでした。
もう一度聞いてみたら、主治医は背を向けながら
「Sさんは今、ここの病院にはいません」とだけ答えたのです。
私は背筋に何か走った思いでした。
Sさんにとって、この病院は最後の砦。他の病院に行くわけはない。
主治医やKさんの返答の感じで、私は全てを了解したのです。
Sさんは、亡くなってしまった。・・・
(のちほど、とある方との会話でやはりそうだと判明)
私はしばらくの間ベッドで無言で座っていました。
Sさんの「薬があるうちはまだいいのよ」という励まし。
「私は治療する薬がないからイヤになっちゃう」というぼやき。
最後まで気丈で明るかったSさん。
感染症になるかもしれないとわかっていながら、一時帰宅した時の思い、いかほどだったか!
あの時のSさんのはしゃいだ様子と、ご主人の複雑な表情は、ずっと目に焼き付いています。
それ以降私は、治療薬があるうちは、まだ「延命」できる。
希望がある。と思うようにしました。
私に教訓を残してくれたSさん・・・・
セザリー症候群は今もって、有効な治療薬が出ていません。
そういった希少ガンへの研究や治療薬の進捗を切に願います。
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