キーンコーンカーンコーン。
チャイムがなる。
今日もまた一日が始まる。
最悪な1日だ。
深くため息をつきながら由里子は席へとつく。
私はこの空間、この時間がとてもきらいだ。
別に友達がいないわけでもない。
ただ仲がいい友達がいるわけでもない。
『あー、由里子またため息ついて〜』
隣の席の景子が言う。
『うーーん、昨日ゆっくり寝れなかったんだよね〜』
私は下手くそに笑顔を作り明るく答える。
景子は小中から一緒で家も近所だ。
クラスもずっと一緒で腐れ縁だねと笑ったこともあるが実際に遊んだことは一度もない。
『え〜そうなんだ〜なんかあったの?』
話しかけて欲しくないオーラを全く感じない景子にはもう慣れた。
『えっとね〜、夢を見た気がするんだけどあんまり覚えてないんだよね〜』
そうだ。
私は昨日夢を見たんだ。
だけど、よく思い出せない。
『夢か〜!うちも見たよ昨日! ケーキ食べ放題の夢〜!』
景子は幸せ者だ。
景子は私とは真逆の人間。
彼氏もいて親友もいる。
私との関係は家が近いのと、クラスが一緒ってだけで特には何も。。。
そんなことはどうだっていい。
私は昨日の夢のことをどうしても思い出したかった。
『ケーキか〜、私も食べたいな〜』
軽く流す。
『すんごくおいしかったな〜』
高校2年生にもなると甘いものには目がないのがJKと言われる生き物の特徴の一つでもある。
密かに私も。。。
私には年の離れた5才の弟がいる。
唯一私が心から素直に大好きと言えるそんな存在である。
『そう言えば由里子ちゃんて弟いるって言ってたよね!?ケーキ好きだって前に話してのなんか急に思い出しちゃった!!』
景子が言う。
『うん!すんごく可愛いんだ〜』
私が答える。
『うちも弟欲しいなぁ〜!』
景子が言う。
そう言えば、今朝は弟の顔を見ていない。
ふと思い出す。
昨日の夢には弟がいた。
夢の中で弟はぐっすり眠っていた。
『あ、弟で思い出した!昨日ねうち!ケーキの他にも怖い夢見たんだ~』
景子が言う。
ゾクゾクと私はなにか虫が体を走るような妙な寒気を感じた。
『えっ?どんな夢?』
私は違和感を覚えた。長年付き合ってて問いかけたのはこれが初めてである。
それほどに内容が気になった。
『気づいたらうちはベッドにいてね!うーんでも、全然知らない部屋だったなぁそこ〜、でも女の子の部屋だったのは確かなんだ!』
景子は一時間目の授業の準備をしながら話をつづけていく。
『知らない部屋だなぁって思ったんだけど、とりあえず体を起こして、まわりをキョロキョロしたの!!』
私は食い入るように景子に顔をむけ話を聞く。
『でも夢というより、映画見てる感覚だったなぁ〜、なんかね!からだが勝手に動いてた感覚だったんだ!』
教科書を見ながら器用に景子は話していく。
『起き上がったうちはね!そのまま隣の部屋に行ったの!そしたら小さな男の子がいてね!すごくかわいいの!! 』
何もしないで話を聞き入ってしまっていた私もふと授業の準備をしながら景子の話を聞き始めた。
『かわいい男の子だったんだけどね、なぜかうち、片手にシャーペン持っててね。』
私はドキッとする。
『その男の子の顔に向かってシャーペンを握った手を思いっきり振り下ろしてたの。』
『えっ...』
『そこで夢は終わったんだけどね〜なんだったんだろあの夢〜気持ち悪かったな〜』
同じだ。
私は思った。
ずっとさっきまで忘れていて、でもうなされた夢。
私は今日、景子と全く同じ夢を見ていた。
『変な夢だね〜、じゃあそこで起きたんだ?』
『うん〜起きた時ね!なんか涙出てたんだ〜!何なんだろね!疲れてんのかな〜うち』
とてもじゃないけど同じ夢を見たなんて言えなかった。
たぶんその夢の男の子は私の弟である。
そう私は夢で弟の顔に思いっきりシャーペンを突き刺していた。
とても恐ろしい夢。
それにうなされ私は昨日ぐっすりと寝ることが出来なかった。
景子も同じ夢を見ている。
なんだかとっても不気味でいやな気持ちになった。
キーンコーンカーンコーン
それでは国語の授業を始めます。
あっきたきたと言わんばかりに景子は席に座り直し、ノートを開く。
私もこの奇妙な体験をしたことを、切り替え授業を受けようとした。
たかが夢だ!
たまたま同じ夢を見ただけだしその内容が怖かっただけ。
自分の中で消化し教科書とノートを開く。
今日は古文の授業です。
先生が言う。
しっかり気持ちを入れ替えて頑張ろう。
さっきまではそう思ってた。
筆箱から血だらけのシャーペンが出てくるまでは。
(完)
