とんねる? | ikegogo2

とんねる?

トンネルに入ると、そこは常夏の島であった。


主人の胃癌療養目的、本人みずからのたっての希望ゆえ、二の句もつがず同伴した。


三月の中旬だったと記憶している。


東京はまだ肌寒く、羽田空港までのタクシーの暖房は不快な程であったが主人は丁度よいとカナリアのような優しい声で私をいさめた。


向日葵の造花が季節にミスマッチで、不思議にもタクシードライバーと主人の間の足元に横たわっていた。


さきゆきの生暖かさを療養と主人はいい、向日葵にはちらっと一蔑視をやったのみであって、多くは、否ほとんど羽田空港までの間、東京の朝の景色に眼をやっていた。否、そのそぶりをしつつ閉眼状態で思考の整理をしていたのかも知れない。ともかく、ことが白馬や妙高や中軽へのバカンスでないことだけは明らかであった。(続く)




HSIUT 2派 複伏福歓拝