こんにちは、池上校講師の木村美那子です。

再び新型コロナウイルスの勢いが増してきて、不安を感じている方も多いかと思います。
池上校ではレッスン日の土曜日はもちろんのこと、他の曜日にも換気とお掃除をこまめに実施していますので、安心してお越しください。(スタジオの手指消毒はアルコールタイプですので、小さいお子さまで手を口に入れる可能性のある場合は、お手数ですが自前のハンドジェルなどをお持ちください。)

今回は「The Happy Price」というお話をご紹介いたします。
日本では「幸福の王子」「幸福な王子」、「幸せの王子」「幸せな王子」、と少しずつ違うタイトルがつけられています。
細かいことを言えば、日本語の「幸福<の>王子」と「幸福<な>王子」では意味合いが異なるので、ここでは原題の「The Happy Price」というタイトルでのご紹介となりました。
(三大バレエ作品である「眠れる森の美女」でも同じようなことが言えます。ペローの原題は「La Bell au bois dormant」であり、修飾の「眠れる」は美女にも森にも使うことが出来ますが、英語タイトルの「The Sleeping Beauty」を考えるとやはり美女の方にかかると考えられます。)



「The Happy Price」はアイルランド出身の作家、オスカー・ワイルドの作品です。
オスカー・ワイルドは「ドリアン・グレイの肖像」や「サロメ」でも有名ですが、木村は「The Happy Price」におさめられている「バラとナイチンゲール」というお話も子どもの頃によく読みました。





ある街の柱の上に「The Happy Price」と呼ばれる像が立っていましたが、その身体は金箔で包まれ、瞳の代わりに二粒のサファイアが、腰にさげた剣にはルビーがはめ込まれており、その美しい姿は街の人々の自慢でした。
ですが、この王子の像にかつて若くして亡くなった王子の魂が宿っていて、街の様子をずっと見つめ続けていること、そして自身が宮殿にいた時は目にすることの無かった、街の人々の貧しさや不幸に心を痛めていることを、街の人々は知りません。

ある日、南の国に渡ろうとしていたつばめが、王子の像の足下で休んでいると、上からぽたりぽたりと滴が落ちてきます。それは街の様子に悲しむ王子の涙でした。
王子はつばめに頼んで、貧しい人々に、自身の身体に付いている宝石や金箔を届けてもらいます。
つばめはこの街の寒い冬を乗り越えることは出来ませんが、王子の言葉や、助けられた人々の様子を見て、王子を助け続けようと決めました。

そうしているうちに、王子の美しい姿はぼろぼろになり、つばめも死んでしまいました。
街の人々はぼろぼろになった王子の像と、つばめのなきがらを捨ててしまいます。
その時、天から街の様子を見ていた神様は、天使たちに「あの街で最も尊いものを2つ持ってきなさい」とお命じになり、天使たちは王子の像の中に入っていた鉛の心臓とつばめのなきがらを天に持ち帰りました。
神様は王子の行いとつばめの働きをご存じだったので、良い選択をした天使たちをお褒めになり、天に迎えられた王子とつばめは天の国で永遠の幸せを得たのでした。

王子のあたたかい思いやりにももちろんですが、つばめの良い行いを続ける覚悟にも胸を打たれますし、強い共感を覚えます。
そしてその一方で、美しい姿の王子を自慢にし、その姿がみすぼらしものになったとたんに柱から引き下ろしてしまった街の人々の振る舞いに残念な気持ちになってしまいます。

本当の美しさとは何なのか、何が良い行いなのか…?
バレエは努力を積み重ねてようやく輝く美しい芸術でもあり、人間の気持ちを表す手段でもあり、その技術はダンサーの自己肯定感を満足させるものでもあります。
ですが、王子の思いやりに気付かずに柱から引き下ろしてしまった街の人々のように、「自分達のため」の願いを真っ先に思い浮かべ、行動してしまうことのないように、心がけていきたいものですね。(木村)

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