自分探し
ドラマ冒頭の白石(新垣結衣)によるモノローグ。
本当の自分って何?
この問いかけを縦軸に第2回の物語は進められていました。
本当のお前は偉そうな口を利いても、婆ちゃんのことが気になってしょうがない永遠の婆ちゃん子だ。〔藍沢(山下智久)に対する藤川(浅利陽介 )の台詞〕
普段は威勢のいいこと言ってるくせに、自分のことになると、子供のように震えている臆病者。それが本当のあなた。〔緋山(戸田恵梨香)に対する白石の台詞〕
患者のことを思っている振りをして、本当は自分の意のままにならないことに我慢のならない傲慢な医者の典型。それが本当のあんた。〔白石に対する緋山の台詞〕
お前は自分をよく知っている。〔藤川に対する橘(椎名桔平)の台詞〕
青年期の迷いと自信喪失による自分探しは、青春群像劇に見られる典型的なテーマのひとつです。
自分自身を見つめることの難しさと恐れは、それが真剣なものであればあるほど、その者の内面をえぐるような苦しみを伴います。
年老いて変貌する本当の自分を受け入れるのが怖くて、アンチエイジングに狂奔する女性。
妻に対してぶっきらぼうな態度で接していた男性から、脳腫瘍除去手術後に現れた本当の姿は、実は大変な愛妻家だったという事実。
「本当の自分って何?」というテーマから次々と紡ぎ出されるストーリーの多様さに、脚本の林さんの円熟味を感じました。
その林さんが描こうとしているのは、あくまでも前向きに生きようとする若者の姿と人間の本質に対しての信頼だったように思います。
エンディングで白石は言います。
自分探しで見つけるのは、大抵は嫌になるような惨めな自分。が、そんな自分と向き合って愕然として立ち止まるか、一歩進むかもまた自分次第だ。向いている方向が前なのか後ろなのか、それすらも確かでないけれど、私たちは一歩足を踏み出したい。駄目な自分と一緒に。
どこまでも歩みを止めないというこの決心こそが、このドラマの持つ本質的なメッセージであり、そこにある普遍性が多くの視聴者の共感を呼んでいるのでしょう。
レビューの最後に(ワンポイント感想)
私の年齢から来るものでしょうか。
橘啓輔という人物に大変興味があります。
もし私がシニアであったなら、森本でも三井でも黒田でもなく、橘に一番近いスタンスでフェローに接していたように思います。
もちろん、彼ほどは軽くはないですけれど。
既に『2nd season』における私の関心の大部分は、橘に向かおうとしています。
それにしても、橘を演じる椎名桔平さん。
私が彼を最初に見たのは、映画『夜がまた来る』でした。
その頃から怪演振りが大変目を引いていましたが、素晴らしい性格俳優になられたと思います。
これからも注目したい役者さんです。