糖尿病には、1型と2型、更にはその発症には自己免疫性、突発性、遺伝子、環境因子など様々な要因があり、これらは複雑な絡み合いをしており、完全な治療法はまだ無いと言わざるを得ない状況です。
まず根本的な問題は、インスリン(ホルモン)の作用不足によって起こります。
血液中の血糖が慢性的に高くなり、口の渇き、多飲、多尿などの初期症状に始まりますが、完全な治療を目的とした治療法は無く、血糖値コントロールを行う事が最も重要な治療法となる事から、食事療法・運動療法による生活習慣の見直しがまず必要となります。
生活習慣の改善による血糖のコントロールが難しくなりますと、インスリン注射など薬剤を組み合わせた方法、重症化しますと人工透析などの処置を取らざるを得なくなります。
まず、最初に申し上げるべきことは、『水素摂取』により糖尿病が治る、という過剰な宣伝文句には騙されてはいけない。
という事です。
語弊があるかも知れませんが、糖尿病は『水素摂取』により「治った」、または「治る」という明確な検証結果はありません。
ただ、少し踏み込んで申し上げるならば、「改善に向け寄与する可能性はある」という程度でしょうか?
もう少し踏み込みますと、作用の機序は明確ではないけれども、「改善を示すタイプの方が居る」という事も分かり始めている様です。
まず、糖尿病を患い必須となる食事療法ですが、これはバランスの取れた食生活により慢性的なマグネシウム(ミネラル)の摂取不足を解消し、食物繊維の豊富な食事により腸内環境を整える事も目的の一つとなっています。
腸内環境やミネラル不足が、糖尿病に関係があるの?
という方も居られるかも知れませんが、実は腸内常在菌も環境因子の一つであり、マグネシウムの慢性的な不足もインスリン抵抗性の共通因子として腹部肥満と同じ様に大きく関わっている事が知られる様になってきました。
折角、運動により痩せても、食生活の乱れ(偏食)によりマグネシウム不足を招く事で、結果糖尿病に至ってしまっては、折角の努力も無駄なものに終わってしまいます。
食事と運動をしっかりと管理する事で、2型糖尿病の発症は予防され、また1型の場合であっても重症化を防ぐ一手段となるのです。
さて『水素摂取』と「糖尿病」の関係ですが、最近の日本の医学者による研究が注目に値する内容として「気志語」に掲載されていましたので、「氢思语」2019.05.26②「2型糖尿業の水素処理にかんするヒトによる検証」掲載文を引用しながらお話をしたいと思っています。
詳しい内容は、中文ですが「氢思语」をご参照ください。
これは世界有数の権威ある医学雑誌The Lancetへの応募のプレリリースで、まだ最終版ではありませんので、修正や編集が必要行われる可能性もありますが、基本的な内容は問題ないはずなので、読者にこの情報についてできるだけ早く知らせるために、記事の要約に焦点を当ててご紹介いたします。
糖尿病の水素治療に関する研究は数多くありますが、それらのほとんどは動物実験や細胞診研究に属しており、人間による研究は比較的まれです。
2008年に、何人かの学者たちは、8週間水素水を飲むことによる初期糖尿病の治療について報告しました。
後に、メタボリックシンドロームに関する臨床試験もいくつかあり、それらも関連分野です。
水素摂取が糖尿病に治療効果があるかどうか、明確な結論はありません。
しかし、宣伝用(商品)の資料の中には、水素水が糖尿病を治療できるという考えに特に重点を置いているものもあります。
しかし、私達研究者は水素や水素水で糖尿病を治療できるとは考えていませんが、効果があるケースがみられることも分かり始めていますが、多くの場合効果がない糖尿病もたくさんあり、糖尿病に対する水素水または水素吸入の効果はあまり明確では無いと申し上げるしかありません。
最大の可能性はいくつかの種類(原因)に対して、効果が優れているという可能性でありますが、現状では効果的な患者の特徴は何なのか、私たちは未だ明確に理解していません。
そのため特定の用途に向け、試みる態度を保持することしかできません。
現段階では、水素が糖尿病を治療できるという概念を盲目的に信じて誇張したり、他の薬の代わりに水素を使用したりしないでください。
最近行われた水素水による糖尿病への影響試験
2型糖尿病患者における電解水素リッチウォーターのインスリン抵抗性改善効果に関する臨床試験多施設前向き二重盲検ランダム化比較試験
この論文の著者は、日本の東北大学教授の小川進教授です。
この研究における非常に重要な概念はインスリン抵抗性です。
インスリン抵抗性とは、様々な理由でインスリン促進性グルコースの取り込みおよび利用の効率が低下することをいい、過剰なインスリンの体による代償性分泌は高インスリン血症を引き起こして血糖安定性を維持する。
インスリン抵抗性はメタボリックシンドロームと2型糖尿病を引き起こしやすい。
1985年、ターナーのオックスフォード大学の研究チームは、最初にインスリン感受性HOMA-IS、インスリン抵抗性レベルHOMA-IRおよび膵島β細胞機能HOMA-βの臨床評価に広く使用されるようになったHOMAの概念を提案した。
HOMA-IRは、個体のインスリン抵抗性のレベルを評価するための指標です。
計算式は次の通りであった:空腹時血糖値(mmol / L)×空腹時インスリン値(mIU / L)/22.5。正常な個人のHOMA-IR指数は1です。
インスリン抵抗性のレベルが上がるにつれて、HOMA-IR指数は1より高くなります。
小川教授らが行った試験
2型糖尿病患者50人を飲水電解水素水試験群と正常濾過水対照群に分け、インスリン抵抗性HOMA-IRを主要評価項目として使用し、酸化ストレス指標と臨床データも評価した。
結果:ろ過水対照群のHOMA-IRは+ 0.04増加し(95%CI:-0.48〜0.59、p = 0.850)、水素水試験群は-0.27減少した(95%CI:-0.69〜0.09、p = 0.105)。2群間に有意差はなかった(p = 0.282)。
コメント:この結果から、水素水群指数は対照群より優れているが、インスリン抵抗性の程度が低下しているため、この低下は対照群と比較して統計的に有意な標準p <0.05に達していない。
2型糖尿病では水素水はインスリン抵抗性に影響を与えません。
もちろん、これはこの研究から得られた結論であり、患者数が増えると、2つのグループ間に統計的に有意な差があります。
この研究はわずか50人の被験者しかいません。
しかしながら、患者のグループ比較は予想外の利益を生み出しました。
重度のインスリン抵抗性(基礎値HOMA-IR> 1.73)を有する患者では、インスリン抵抗性指数は有意に改善しています。
異常な酸化ストレス指標を有する対象はまた、水素リッチ水を飲んだ後に酸化ストレス指標の有意な改善を示した。
活性酸素酸化ストレス指標の阻害と血清乳酸レベルの間に強い相関があることを強調することは特に重要です。
水素を多く含む水を飲んでも、副作用は明らかになりませんでした。
分析:水素リッチ水の飲用は、重度のインスリン抵抗性と酸化ストレスを有する患者にのみ有効であり、比較的健康な患者にはほとんど効果がありません。
この効果は糖新生を抑制することによって達成されるように思われる。
グルコースは糖新生としても知られています。
乳酸、グリセロール、生糖アミノ酸などの単純な非糖前駆体から糖(グルコースまたはグリコーゲン)への変換プロセス。
この推定は、有効な患者の血液中の乳酸の減少に基づいています。