宙組『カジノ・ロワイヤル 〜我が名はボンド〜』観劇 | 茶々吉24時 ー着物と歌劇とわんにゃんとー

 

 宙組『カジノ・ロワイヤル〜我が名はボンド」観劇

本日2回目の更新です。

 

昨日は予定外で宙組を観劇させていただきました。

トップコンビ真風涼帆さん、潤花さんのさよなら公演ということもあり、入手困難な公演、とても嬉しかったです。ありがたいことです。

いつもは観劇したその日のうちに(まだ気持ちが熱いうちに)感想を書くのですが、昨日は睡魔に負けてしまいました。

遅まきながらアップさせていただきます。

 

 

さて、ちょっと時間を遡りまして、宙組トップコンビの退団公演が007シリーズなのだと知った時の私の感想は「ふーん」。

イアン・フレミングさんの原作を読んだこともなければ、世界的に人気の007シリーズの映画も27作品中最初から最後までちゃんと見たのは一作だけ。

この時はなぜか、好きでもないはずの「007」を映画館まで見に行ったのですが、内容は全く覚えていません。内容どころかタイトルも定かではなく、エンドロールでデュラン・デュランの「A View To A Kill」が聞こえてきた瞬間に「おおお!かっこいい曲!」と思った記憶があるから、1985年の『美しき獲物たち』を見たんだろうなぁと類推する体たらく。

つまり思い入れが全くないのです。確固としたボンド像があるわけでもなく、ぼんやりと、真風さんはスーツが似合うからきっとボンド役もお似合いだろうナ、程度。

「カジノ・ロワイヤル」がどんなお話なのかも知らずに出かけました。

 

それくらい真っ平らなテンションで見始めたのに、開演してしばらくすると、なんだか面白くなってきましたよ。

だってね、出てくる人たちがみんなオカシイんですもん。

ロシア・ロマノフ王朝の末裔や莫大な財産の問題、CIA、KGB、MI6といった世界のスパイたちが登場、銃撃戦が繰り広げられ、ハードボイルドなはずなのに、随所におかしみがあるんです。

時々、登場する組織や人の数が多すぎてややこしくなるのですが、よくわからなかったとしても、目の前に繰り広げられる場面を見るだけで、なんだか面白い。007って娯楽作品なんだなぁ。

こういう軽い感じのさよなら公演、嫌いではありません。

 

それに、なんとなく『オーシャンズ11』を思い起こす場面や、『エリザベート』のパロディもあり、自然と当時の真風さんや芹香斗亜さんを思い出すことになり、真風さんを送り出す上での小池修一郎先生の温かな気持ちを随所に感じました。

 

では覚えている限りで、個々のスターさんの感想を。

その中で、なにがおかしかったのか、なども添えられたらと思います。

お時間のある方は、こちらで予習なさってくださいね。

  ↓

 

 

 個別の感想

プログラムの主なキャスト紹介の順番に、敬称略で失礼しますね。

 

●ジェームズ・ボンド:真風 涼帆

 ジェームス・ボンドは基本的にスーツにコート姿。

 煌びやかさはないのだけれど、真風さんはもう十分に舞台を経験したトップスターだけに装飾がなくてもカッコいい。

 特に後ろ姿のカッコいいこと。思うに、宝塚歌劇の男役さんって、こんなふうに後ろ姿で十二分に魅せるようになった時、退団なのかもしれませんね。下降線を感じないうちに退団、惜しいのだけどそれが美しいのかもしれません。

 

ところで、007シリーズといえば小道具。腕時計にナイフが仕込まれていたり、カバンからマシンガンが現れたり。007シリーズが始まった頃はそれがすごいハイテクだったのだろうけど、スマホでなんでもできてしまう今見ると、なんだかアナクロの極地に見えてオカシイ。

それを真風さんが大真面目にカッコよく使うのがまたツボにハマって一人ニヤニヤ。

青池保子さんの漫画『エロイカより愛をこめて』でいろいろ仕込んだ道具を得意げにひけらかすイギリスの諜報部員チャールズ・ロレンスくんを思い出してしまうのでした。

 

●ル・シッフル:芹香斗亜

 登場した瞬間、キキちゃんのあまりの貫禄にびっくり。次期トップスターに揺らぎなしって感じ。

 そんなキキちゃんが演じるル・シッフルは大きな野望を持ち、人を駒のように動かしている人物。いつも口の端をフッとあげて薄笑いを浮かべる、悪い男…なんですけども、場面が進むに従って、なんともいえないおかしさが込み上げてくるんです。パンフレットを読むとキキちゃん自身「原作と違ってル・シッフルは冷酷な悪役ではなく、コメディ要素がある」という内容を語っています。でも喜劇というのは役者が真剣に演じてこそ面白い、ということも意識して大真面目に演じているそうです。

 

そのコメディ要素の一つが、ル・シッフルの秘密基地。

警察に追われた過激派の若者を世界中から集めてきて、自分の目的に沿うように思想教育を施し、肉体的にもハードな訓練を行なっているんですけど、これが昭和世代の私にはタイガーマスクの虎の穴を連想させました。(我ながら古いなァ)

この訓練風景を見ると、宙組には身体能力が高い男役さんが大勢いらっしゃるんだなと思いましたよ。でもそのハードな特訓が、なぜかコメディっぽく見えるんです。

この辺りの匙加減が絶妙。小池先生すごいわ。

 

キキちゃんが途中でラスプーチン姿で現れた時、『神々の土地』でラスプーチンを演じた、キキちゃんと同期の愛月ひかるさんを思い出したのは私だけではないはず。

作品中に色々なオマージュが含まれていると感じました。

 

●デルフィーヌ:潤花

 莫大な遺産を受けるはずのヒロインですが、フランスで学生運動の中心的な役割を果たしております。潤花さんは宝塚歌劇の正統派ヒロイン像からちょっと外れた、動的な女性が似合いますね。

 ファッションも可愛かったです。

 退団後も舞台のお仕事をされるのかしら?

 

●ミシェル・バロー:桜木 みなと

 学生運動の中心人物。理想に燃える好青年…と思いきや、意外と弱っちくて、二人の女性の間をフラフラ。

 私は黒い役柄より、こういう頼りなげな役を演じる桜木さんが好きです。可愛い!

 ミシェルの存在も、この作品におかしみを与えていました。

 

●ゲオルギー・ロマノヴィッチ・ロマノフ大公:寿つかさ

 自分に能力もないのに、皇帝に担ぎ上げられることを喜んでいるロマノフ大公。

 何度か出てくるキキちゃんル・シッフルに「沈む世界を救うのはお前だ♪」と祭り上げられる場面は『エリザベート』の「闇が広がる」のパロディですよね。オカシイ。

 この公演で退団される寿つかささんには常に大きな拍手が送られていました。

 本当にお疲れ様でした。

 

● M長官:松風輝

 以前にも書きましたが、私は最近主役や二番手の男役さんにポーッとならなくなりました。いえ、カッコいいとは思っているのですが、自分が歳をとりすぎてしまい「若き燕」(これまた古い言葉ですみません!)に感じられてしまうのです。

 俄然、惹かれるのが素敵なおじ様役。

 今回私がときめいたのはM長官役の松風さんでした。

 ジェイムズに指令を与える上司で、常に焦らず騒がず、冷静に指示を出していて、かっこいいんです!スーツ姿もステキっ!

 M長官がジェイムズに指示を送るデスクは上手の銀橋の付け根あたりにセットされることが多く、センターブロックのやや上手よりのお席から拝見していた私は、M長官が登場するたびにガン見していました。

 

●フェリックス・ライター:紫藤りゅう

 ああ、退団してしまわれるのねぇ。

 私は紫藤さんが星組にいらした時から、憂いを秘めた目元が大好きだったんですよ。

 オールバックにした時の頭の形、小さなお顔とすんなりとした首、スーツでの後ろ姿などはそのまんま漫画の等身でした。

 次から紫藤さんが見られないなんて。寂しい。

 フェリックスはCIAの諜報部員。後半、瑠風さん演じるルネと力を合わせてジェイムズ・ボンドを助けに行くのですが、2枚目の諜報部員なのに、なぜかオカシイ。

 寂しさとおかしさのハーモニーが絶妙でした。でもやっぱり寂しいわ。

 

●ルネ・マティス:瑠風輝

 登場された瞬間「あれ?瑠風さんってこんなにカッコよかったんだ!」と思いました。

 すみません。以前からカッコよかったのでしょうが、今回のスーツ姿が特に素敵に見えました。

 上にも書きましたが、ジェイムズ・ボンドを助けに行く場面では、素敵な外見とコミカルさのギャップを見せてくれます。

 

●アナベル:天彩峰里

 前半、アナベルのキャラクターが今ひとつ掴めないのですが、後半、ムチを持ち出したあたりから生き生きしてきます。

 可愛らしい外見の天彩さんが猛獣使いのように鞭を振るう…それだけでオカシイ。

 そしてミシェルと共に逮捕されかかった場面での、二人の掛け合いがおかしすぎる。

 二人が真剣に愛を語らい、相手を庇い合うのを「やれやれ」という面持ちで見ている警官たち。吹き出しました。

 

●イリヤ:鷹翔千空

 去年あたりからでしょうか(もっと前からかもしれません)、すごく飛躍されている男役さんですね。

 ちょっとスレた役や、悪い役をやっていただきたい、そんなビジュアルの方。

 この作品ではソ連の影の組織(暗殺部隊?)の一員で、それはそれはキザっているのですよ。「真の主役は最後に登場するもんだ」みたいなことを言って、実際、最後に美味しい場面で出てくるのですけど、鷹翔さんのキザっぷりがおかしくて、イリヤがカッコつければつけるほど笑えちゃう。

 この方はきっと、本当に真っ黒な悪役もできるのだと思いますが、今回はキザな悪役だけど、カッコつけすぎてちょっとズレてみたいな部分がすごく自然で、面白かったです。

 

●ヴェスパー・リンド:春乃さくら

 宙組の次期トップ娘役さんですね。

 とても落ち着いた感じの娘役さんに見えました。

 声が綺麗でセリフが明瞭。

 芹香さんとの並びを楽しみにしています。

 

●ドクトル・ツバイシュタイン:若翔りつ

 おかしい人おかしい場面がいっぱいのこの作品において、見かけも中身も一番おかしな人だったのがドクトル・ツバイシュタイン。

 ナチスドイツ下で研究。ライバルだと思っていたアインシュタインがノーベル賞を受賞したことに嫉妬し、次こそ自分が、とメラメラしているんですけど、名前がアイン(1)シュタインではなくてツバイ(2)シュタインというところからして、一番にはなれなさそう。

 最初はマッドサイエンティストかと思ったけれど、本当はそこまで突き抜けていない、ただの出来の悪い科学者っていうのがオカシイ。

 白髪のウィッグとすごいメイクで、どなたかわからず。

 パンフレットを拝見してやっとわかりました。

 若翔さんだったんですね!

 すごく魅せていただきました。

 

●アナトリー:亜音有星

●グレゴリー:風色日向

 ロマノフ大公の息子たち。どちらかが、ロマノフの莫大な遺産を受け継ぐデルフィーヌと結婚し、その財産を自分たちのものにしたいと計画。

 ただ、この二人は見目麗しいアホボン(アホ坊)なので、デルフィーヌには全く相手にされず。何度冷たくされても懲りずに追いかけ回すおバカっぷりが可愛い。そして両親がル・シッフルに殺されけたときに、必死で親の命乞いをしながら走り回る姿がめちゃくちゃ可愛い。でも「親の命だけは助けてくれぇ」と叫ぶばかりで、何の役にも立っていないところがおかしくて笑えるんです。体は大きいのに何をしているのよ、と。しかも、容姿端麗な役立たずっていうのがなんともオカシイ。

 

と、ここまで何回「オカシイ」と書いたことやら。

でもどの「オカシイ」も、小馬鹿にしたような気持ちではなく、くすくす笑えるというおかしさなのです。

誰も傷つけない笑いが起こる舞台って素敵だと思います。

 

このおかしさをフィナーレナンバーが綺麗に払拭し、グランドフィナーレへ。

宙組さんは本当に身体能力が高い方が多いですね。

歳のせいか最近お顔と名前が一致しないのですが、その代表格は多分、優希しおん さんだと思います。


ラインダンスの振り付けもすごい。

体が柔らかい!脚がすごい角度で上がる!

すごいわ。。

 

本当に楽しいと思えた『カジノ・ロワイヤル〜我が名はボンド〜』。

ワタクシ、東京公演のチケットが取れているので、もう一度拝見します。

しかも東京のチケットは3列目なんですよ。

想像しただけで、ニヤけます。

 

 

あれこれ長文失礼しました。

最後までお付き合いくださってありがとうございました。

 

 

 

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