- なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか―信用バブルという怪物/チャールズ・R. モリス
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- 初版が出たときに買ったけれど、本棚に埋もれて読んでいなかった一冊。
要約
第一章「リベラリズムの死」
1970年代、人々が政府の力を必要以上に信じていたために、ケインズ型のリベラリズムによる大きな政府が失敗に終わった。それによりミルトン・フリードマンの「マネタリズム」によって、自由市場資本主義へとパラダイムシフトするようになった。
第二章「ウォール街の新たな宗教」
自由市場資本主義が中心となった1980年代だが、LBOブームとS&L危機から市場の限界を知ることができる。これらは金融規制が緩ければ、倫理など気にせずに金儲けに徹する人々によって引き起こされた。もっとも、自由市場資本主義は、1980年代初期・90年代の景気回復をもたらしたことから(90年代においては他の幅広い要因と重なったという事情もある)金融市場の緩和が重要であるということを明らかにした。
第三章「バブルの国への道」
自由市場資本主義下の1980年代・90年代においてデリバティブの登場・発達により金融市場の地殻変動が起こった。もっとも、このデリバティブにより87年の株式暴落、98年のLTCM危機が引き起こされることとなる。こうした危機は①金融規制当局の監督権限の及ばない範囲で起こり、②エージュエンシー問題の悪化、③投資判断において数学モデルに頼る傾向が強まったという点に原因がある。そしてこの3点は2000年代に信用バブルを招くことになる。
第四章「資金の壁」
住宅バブルは通常、人口構成の変化によって引き起こされるものである。しかし人口構成が変化していないにも関わらずに住宅バブルが生じたのは金融機関が呼びだした。このサブプライム問題は価値の創造ではなくリスクの移転に過ぎなかった。FRBはこれまで流動性供給のポンプを動かしすぎたために介入することができなかった。
第五章「ドルの津波」
アメリカの膨大な経常赤字は海外の投資家やSWFによって支えられている。もっともこうした支えも政策的な理由で行われているに過ぎず、この支えがなくなり、ドルの下落が続くことでFRBは身動きがとれなくなっている。
第六章「大規模な清算」
大規模な清算をするにあたり、①景気後退、②信用の崩壊が起こる。アメリカの金融セクターは1970年代より強くはなっているが、これを隠そうとすれば苦痛に満ちた数十年を招くことになる。
第七章「勝者と敗者」
勝者と敗者という格差がはっきりと生じてきたのは、金融業界がアメリカ経済を支える点で突出した地位を占めるようになったからである。
第八章「均衡の回復」
金融規制と医療制度の規制を行う。市場の限界を知り、GDP成長率や生産性といった指標で評価するのではなく、趣味で判断すべきである。
感想
サブプライム問題についてこの問題が生じた歴史的背景まで遡り、簡潔かつ簡略に記されていてわかりやすい。振り子の揺り戻しでこれからは政府中心型となるという文章で本書は締めくくられている。こうした揺り戻しの議論は分からなくはないのだが、振り子が静止するような事態にはならないのかと疑問に思う。つまり、本書で言えば市場重視型と政府中心型のハイブリット型の政策が行われるようになるということである。
「歴史は繰り返される」と言われるが、それは人間が進歩していないことの裏返しではないかと思う。「人間は繰り返し過ちを犯す愚かな生き物なのだ」と言ってしまえばどうしようもない。
過ちを侵すかもしれないが、それを進歩に変えれるようにしていってほしい。また自分の日々の生活でも、過ちを進歩へと変えれるようにしていきたいと思った。