長いタイトルですが、

「説明責任の輪」これが本書のキーワードです。


まずは要約を



これまで株式は、特定の少数の者にしか所有されていなかった。

しかし、近年、集団貯蓄や集団投資を行う機関を通して、株式を所有する非富裕層(中産労働者階級)が増加の一途を辿っている。これは、市民が労働者であるとともに、株主であるということを示している。

こうして生まれた、労働者でもあり株主でもあるという市民=新資本家の登場により非市民経済が市民経済へと変質している。


つまり、


従来型の資本市場構造-従順な株主、利益相反を抱えるか無力な監視機関、市民団体の不在、偏狭な会計基準-によれば近視眼的な利益追求に走らざるを得なかった。

こうした従来の資本主義は放っておくと暴走をした。

そこで、市民株主が活性化し、監視機関の利益相反防止策を整備し、経営者・投資家が真のバリュードライバーを評価できる業績指標が登場し、市民団体が建設的な市場参加者となり、新たな会社が発展する市民経済が必要となった。


こうした市民経済がより発展するためには、市民社会において民主主義の根幹をなす法治主義に基づき説明責任を果たす政治機構とパラレルに考えて、法治主義に基づいて説明責任を果たす会社が必要である。


この説明責任を果たす会社が必要とされるのは、以下のように説明責任の連鎖において会社が重要な機関(民主主義の根幹をなす法治主義に基づき説明責任を果たす政治機構と同等の位置)と考えられるからだ。


この連鎖は具体的には


機関投資家である株主は受託者である市民に説明責任を負っている。

取締役会は株主である機関投資家や市民投資家に説明責任を負っている。

取締役会は監査機関や格付け機関に対して説明責任を負っている。

監査機関や格付け機関は機関投資家や市民投資家に説明責任を負っている。

この他にも、政府・規制当局、情報仲介機関、マスメディアや市民社会団体などの各機関は、それぞれの機関を監視し、市民に説明責任を負っている。


こうした連鎖を途切れないようにつなげることが必要である。



こうして市民経済は、会社の株主である機関投資家(及び市民投資家)が貯蓄者への説明責任を果たし、会社に対して、責任ある経営を通じて、持続可能な繁栄を追求するような会社に迫る。そして市民はその説明に基づいた投資という選択により、会社を淘汰することが可能となる。

こうして会社は市民経済を支える上で大きな役割を担うことから、会社には特に次の宣言を遵守することが求められる。


資本家宣言

①利益を上げること、すなわち、価値を創出すること

②価値創出が可能な領域だけで成長すること

③社員の正しい行動に正当な報酬で報いること

④資本を消費しないこと

⑤自社のスキルが誰にも負けない事業領域に専念すること

⑥会社組織を更新すること

⑦顧客、サプライヤー、社員、コミュニティーを公正に扱うこと

⑧自社の活動による副次的な害悪の発生を防ぎ、競争相手に不当な優位性をあたえないような規制を求めること

⑨政治的偏向を避けること

⑩自社活動に関するコニュニケーションと説明責任を保つこと


こうした宣言を念頭において、「説明責任の輪」により信用が創造されなければ金融市場は成立しない。



感想

説明責任を通して健全な資本主義を構築しようという考えには納得できた。

本書の中でもそうして説明責任を果たしていくためには、どうすべきかという方法が言及されていたが、それが本当に実現可能かと疑問が残った。

しかし、そうした方法論に対して、自分がそれ以上有効と思われる方法論を考えることができなかった。そうしたことから、最終的にはそうした方法論は現時点において、ベストな方法ではないのかと思った。