要約
資本主義とはねずみ講である。
産業資本が金融資本に変質することにより、富(利益)が蓄積される仕組みも変質した。
産業資本により、生み出された利益は、集積されるに従い、産業資本を離れ、資本として独立した金融資本となる。こうして生まれた金融資本は独自に利益の機会を求めて移動を行う。収益機会を見つけて、収益を上げることで金融資本は自己増殖を加速させ、この自己増殖の機能は金融資本の特徴となる。
金融資本が支配する社会においては、資本の自己増殖本能を満たすために経済が存在することになる。
金融資本が増殖するためには、常にフロンティア(新しい需要)が必要であるが、自己増殖を重ね、その余地もなくなったため、金融資本が自己増殖のために実体経済を利用する主客逆転が起きる。
こうして、金融資本によって発生したリスクテイクバブル(多くの投資家がリスクを求めてリスク資産に殺到し、それによりリスクがリスクではなくなり、結果的に全ての投資家が儲かることになり、さらに他の投資家も含めて他のリスクに殺到する状況)はキャンサーキャピタリズムの発現である。
こうした過程をたどるため、キャンサーキャピタリズムは金融資本市場に構造的に組み込まれており、除去することは不可能である。
キャンサーキャピタリズムの治療法は金融資本の価値が低下し、実体経済が力を持ったときである。
こうした具定例がサブプライム問題である。
サブプライム問題の本質は、リスクテイクバブルの生成と加速と崩壊である。
Ⅰ 生成
バブルとリスクテイクバブル
まず、バブルの生成には必然の論理はないが、リスクテイクバブルには必然の論理がある。
プロは(ヘッジファンドや投資銀行)はバブルだということに気づいたからこそ、「儲かれば何でもいい」という投資の王道に従った。そもそもプロはバブルをいつも探している。そしてプロにとって重要なことはライバルよりも高いリターンを残すことであり、利益を生むだけでは駄目である。
これにより合成の誤謬が生じ、市場全体がリスク過多となってリスクテイクバブルは膨張する。そうした中リスクがリスクでなくなることにより、リスクテイクバブルが加速される。
Ⅱ 加速
サブプライム関連証券が値上がりを続けたのは、
①予測された数字よりも低い貸し倒れ率という予測と現実の差
②住宅市場のバブル
③リスクなしで儲けることのできるサブプライムローンというビジネスモデル
の3つの要因がある。
そして、サブプライムローンという高速回転自己増殖型のビジネスモデルを、証券化という技法がさらに自己増殖を加速させた。
『証券化』
証券化によりキャッシュフローは切り分けられ受取人が変わるだけで、リスクの総量も変化はしないが、リスクの所在地は変わる。こうして、リスクが変質したり減少していないにも関わらす、証券化という投資家の嗜好(リターンとリスクという二つの軸により標準化され合成)に、合わせた商品が組成されることにより、投資家が最も重視する「流動性」という価値が生まれる。それにより、同じリスクの総量なのに、各投資家にとっての価値は増加している。流動性が加わることにより、投資リスクのシステマテックな低減が起こり、これが価格上昇志向をもたらし、保有を目的とした投資から転売を目的とした投資へと変質した。
もっとも、最終的にはその資産を保有する投資家がいなければ、売り手と買い手が存在しないことになったしまうから、投資家の関心の対象は流動性のリスクから収益性のリスクへともう一度変質が起こる。
こうして証券化の最も本源的な機能は「原資産を金融商品に変質させる」メカニズムであり、これによりリスクは本質的に変質し、収益性のリスク→流動性リスク→収益性リスクとなった。
Ⅲ 崩壊
バブル崩壊の要素
①誰もがバブルであることを知っており、一旦売りとなれば、暴落する②バブル崩壊の合図が鳴ること③市場全体のムード
暴落局面の示唆
①ファンダメンタルズは無力②株価の変動及び市場のうねりは、群集心理によって支配される③群集心理に支配された株価を動かすために、群集心理を支配しようとする投資家が動く
感想
サブプライム問題に関する本を読んだ中で一番分かりやすく、しっくりきた。
名著だと思う。
