本書はサブプライムローン問題について投資銀行の視点から焦点をあてたものである。


まず前提として著者は商業銀行と投資銀行の相違として


①商業銀行の本質は利鞘で稼ぐことが本業であり、潜在的リスクに対してはきわめて保守的に対応する。

投資銀行はその潜在的リスクの中に収益性を嗅ぎ取っていく。

②商業銀行のメリットはM&Aアドバイザーの獲得においてはBridge Financeなどバランスシートを使うことができる。

投資銀行のメリットは企業が資金調達をする道具や普通社債から転換社債、優先株や資本の再構成案も提案できるなどの幅広い裾野。投資銀行はバブルを創出することにより生き残る


と特徴付けている。


次に商業銀行が投資銀行化した原因として


間接金融から直接金融へという時代背景

ローン⇒債券⇒スワップ・オプション⇒デリバティブ⇒証券化 (より高収益の商品を求める投資家の存在)


しかしこの過程においては


・商品の現在価値により交換価値が現される。しかしこの交換価値は何で担保されるべきか。

・証券化においては交換価値=利用価値と捉える。モデルと格付けが本来は別々である交換価値と利用価値をフィクションとして結びつける。

・投資銀行と格付け機関による現在価値の決定⇒信用ではなく信仰に過ぎない⇒格付けの偶像崇拝

・高収益体質にするために商業銀行のバランスオフ化現象⇒商業銀行は資本の取次ぎ者に過ぎなくなる⇒窓口としての役割のみ⇒審査が甘くなる


といった問題点があった。


こうしておこったサブプライムローン問題の本質は


投資銀行化した金融機関が、金融市場における共通言語である利益のみを追求し、利益優先の病巣を拡大⇒利益と理念のバランスの崩壊


にあるとした。


そして著者は


日本のバブル崩壊の不良債権問題は商業銀行的損失

サブプライム問題は投資銀行的損失


と捉え、最終的には経済社会が安定するような金融システムが必要不可欠と考える。


著者は行き過ぎた投資銀行について批判しながらも、投資銀行の存在自体は肯定する。

個人的にはこうした著者の見解に賛同できる部分が多い。


また著者は今後の投資銀行の在り方について何らかの制限がかかると考えているが、現時点においてベアスターンズはJPモルガンチュースによる買収、リーマンブラザースは破綻、メリルリンチはバンカメによる救済合併。

今後モルガンスタンレーとゴールドマンサックスの動向が気になるが、昨日の日経では商業銀行の買収に乗り出すのではないかと報道されている。

こうしたことから厳密な投資銀行はなくなる方向で、商業銀行と投資銀行が混在した形になると考えられる。


本書はこうした現在最も大きな問題であるサブプライム問題についての異なった視点を提供するものであり、有益な一冊である。