今回はキャッシュフロー計算書について書いてみようと思います。

 

平成10年(1998年)にキャッシュフロー会計が導入されるまで、決算書といえば主に損益計算書と貸借対照表を指していました。

 その当時、キャッシュ(資金)に関する情報としては貸借対照表において決算日時点における現預金の金額というストック情報を提供するのみで、その会計期間中においてどれだけの資金が流入し、そして流出していったのかという資金の動きに関する情報までは提供していませんでした。

 損益計算書においても会計期間中の収益や費用の発生をフロー情報として提供するものの、その会計期間において実際にどれだけの資金を事業に投下し、それがどの程度回収されたのかという情報までは提供していませんでした。

 それに対してキャッシュフロー計算書では、貸借対照表や損益計算書では提供することができない会計期間中におけるキャッシュの流入と流出、損益を度返ししたところでの投下資本とその回収状況という収支に関する情報をダイレクトに表示することができます。

 

 それでは、「利益」と「現金」の関係についてですが、「利益」の量は、損益計算書でモニターできます。しかし、「現金」の量は、損益計算書ではモニターできません。「利益」とは「自己資本」の増減であり、「現金」の増減とは全く関係がありません。【図表1】

 そして、「損益(利益)」と「収支(現金)」がズレる理由は4つあります。

①     発生主義と現金主義の違い

・・・損益計算書は発生主義のルールで作成

②     現金を支出していないが費用が計上できるケースがあること

・・・減価償却費や引当金など

③     現金を支出したが費用とならないケースがあること

・・・建物などの固定資産を購入した場合など

④     現金の増減はあるが損益に関係ないケースがあること

・・・借入や資本金の変動など

 

 以上のような要因によって、「利益」と「現金」の乖離が生まれるわけです。よく言われている『勘定合って、銭足らず』ですね。

 

 次に、キャッシュフロー計算書の構造について簡単に説明します。現在日本で一般的に使分けているキャッシュフロー計算書の方式は“間接法”です。国際会計基準では“間接法”ではなく、もう一つの方式の“直接法”を重要視しています。

 ここでは、“間接法”方式で説明します。

 

 キャッシュフロー計算書は全体として3つのブロックに大きく分かれていています。

①  営業活動によるキャッシュフロー
(本業でいくら現金を増やせたか)

②  投資活動によるキャッシュフロー
(設備投資等にいくら使ったか)

③  財務活動によるキャッシュフロー
(借金をしたのか、返したのか)

です。

 

このうち、営業活動によるキャッシュフロー計算書を示すと様式は以下の通りです【図2】。

 前述のとおり、営業活動によるキャッシュフローは“本業で幾らの現金を増やせたのか”を確認するものです。企業経営にとっては根幹ともいえるもので、この項目で赤字が続くということは事業そのものを見直さざるを得ないということになります。

 

 では、その構造にご注目ください。

 まず、スタートは利益金額からです。前述の図表1を思い出してください。利益金額からスタートとてし、現預金の増減にかかわる絵解きをしていくのです。

 ざっくりと利益金額にB/S上の流動資産・負債の勘定科目の増減額を加減算することで、営業活動によるキャッシュフローが求められることにお気づきだと思います。

 なぜこのようになるのかを説明したのが【図表3】です。

 利益金額から出発して、流動資産科目の増減を加減算することで、営業で幾ら現金を増やせたのかを計算することができるのです。

 

 このことを逆に捉えれば、日々の営業活動は、最終的には「損益」としてその成果が示されますが、様々な勘定科目の増減を同時に招いています。その勘定科目の増減をうまくコントロールすることによって、お金を増やしたり、減らしたりすることができるということです。

 

 利益と現金の乖離に悩んでいる経営者の皆さん、一度真剣にキャッシュフロー計算書を覗き込んで見られてはいかがでしょうか。

『稼いだお金は、いったいどこへ消えたのか?』思わぬ勘定科目にその答えが隠されているかもしれませんよ。