コロナ禍でも大変頑張っている企業もあります。個人事業を卒業していよいよ「法人成り」へと。『役員は?』『資本金は?』『名称は?』『事業目的の追加は無いか?』と色々決めて行かなくてはなりません。
そして、結構検討を後回しにされるのが『決算期は?』です。
法人の場合決算期は自由に選択することができます。『令和2年度の国税庁統計年報』によりますと、国内の普通法人の決算期を見て見ますと、以下の図の通りです。
3月決算法人は予想通り多いものの、各月々に散らばっているのが分かります。
よく、『3月決算は会計事務所の繁忙期となるからやめておいた方が良い』とか言われます。麻雀で言う「スジ」ではないですが、3月決算、6月決算、9月決算は、法人の決算ラッシュとなっていて、会計事務所では超繁忙期を迎え、マンパワー的にも限界に近づくのも事実です。
また、親会社や取引先などの決算月に合わせた方が良いのではと考えられている人も中にはおいでます。
ただ、単にそれだけの理由で大切な決算期を決めてよいものでしょうか。決算期の決め方のコツを考えて見たいと思います。
◆“最も美しい顔”の決算書を作る
法人が決算期を迎えると必ず「決算書」が作成されます。この決算書は、税金の計算や、銀行から融資を受ける際にも必要となるものです。
この決算書、どうせ作るなら見栄えの良いもの、金融機関からすれば「金を貸したくなるような」ものにしたいものです。いわゆる“美しい顔をした”決算書です。
それでは、1年のうちで二つの時期に着目して、「貸借対照表(B/S)」がどのようになるかを見て見たいと思います。
まず、最初の時期は、繁忙期(トップシーズン)である月を決算期とした場合です。
仕入は増加し、棚卸商品も増加します。売上高は1年で一番大きくなり、売掛債権は通常の月の倍以上に膨れ上がったりもします。この時のB/Sは、説明の通り、売掛債権・棚卸資産・仕入債務が膨れ上がり、現預金が小さく縮んだものになっています。おまけに、純資産高も大きく膨れ上がってしまうのです。
経営分析データ的には、売上債権回転率や棚卸資産回転率の悪化が指摘されてしまいます。人体になぞらえて言えば『血圧130超え』です。
また、いくら利益を出したとしても、元手(総資産)が増えた状態ですので、経営指標で注目されがちのROA(総資産利益率)が悪化してしまいます。
ROA=『当期純利益÷総資産×100』
次に、このトップシーズンを経過した月(トップシーズンの翌月若しくは翌々月)で決算書を作成したとしましょう。
トップシーズンで増加した売掛債権は順次回収され、その一部は仕入債務の支払いに回され、残りは現預金として蓄積されます。
売掛債権・棚卸資産・仕入債務が縮小して、現預金が増大します。B/S全体の総資産額が減りますので、全ての回転率や利益率がトップシーズンを決算期とした時より改善します。
※損益計算書上の売上高等は、トップシーズンを通過していますので、さほどの違いは生じないと思われます。
図で表すと以下のようになります。
よく、繁忙期を決算期にしてはいけない理由として、実地棚卸の実施や決算にかかる様々な書類の整理に人手を割くわけにはいかないことが語られますが、財務面から見れば、『一番顔色が悪くなる月』だと言えるのです。
そのような理由から、法人の決算期を決めるコツの一つとして、繁忙期を少し超えた時期を決算期とすることが上げられます。
決算期から2ケ月後には納税が待っています。資金が潤沢に現預金に蓄積されている時期を決算期とすることの合理性を今一度考えて見てください。