今から100年前、世界で5億人もの感染者を出したスペイン風邪ですが、日本では、大正7年から8年にかけての第1次流行期で感染者=2116万人、死者=25万7000人でした。さらに、大正8年から大正9年にかけての第2期流行期では感染者=241万人、死者12万8000人だったそうです。
ウィルス自体が未発見の時代でしたが、当時も今と同じく「学校の一斉休校」「マスクの着用やうがい手洗いの実施」「イベントの自粛」が施策として行われたらしいです。してし、結果として多くの人が感染してしまい、結局終息に向かうには集団免疫を獲得するしかなかったようです。
さて、現在の「コロナショック」ですが、飲食・宿泊業などや菓子製造業その他の業種で売上高が蒸発するように無くなるという現象が現実に起こっています。
では、極端な想定ですが、突然売上が無くなってしまった場合、何が起こるのかを考えて見たいと思います。
たとえば、観光業に携わる事業者さんや、自社や得意先が休業要請を受けたなどのケースが考えられます。
このブログでも何度か書いたことなのですが、売上高が減少した場合には、一時的に資金繰りが楽になったような現象が生じます。
これを貸借対照表(以下B/S)の動きで説明したものが下の図表です。
正常な経済活動下である【コロナ流行前】の図にあるようなB/Sで、突然売上がゼロになるわけです。その後の活動としては、
① 買掛金を現在有る現金・預金で決済します。
② 得意先から売掛金を回収します。
③ 手持ちの在庫を売却して現金化します(投売り的な売却となるかも知れませんが通常の価格で売却できたと仮定します)
以上のような取引の結果、B/Sからは売掛金・棚卸資産・買掛金が姿を消し、大きく現金・預金が残る結果となります。これが、売上が減少していく過程で、なんとなく資金繰りが楽になったようになるという現象なのです。
それでは、この逆を考えて見ましょう。
いずれ、新型コロナウィルスに対応するワクチンが開発され、通常の経済活動が再開される時はきっと来るはずです。
アフター・コロナです。再びお得意様から注文を受けて、売上高が戻る過程で何が起こるかを見て見ましょう。
下の図を見てください。【コロナ終息時のB/S】からスタートです。
上の図の【コロナ流行中B/S】時に貯まったように見えた現金・預金は、その後のランニングコストとして半分に減少していると仮定しての事業再開です。
まず、商品や原材料を仕入れます。品物を仕入れても買掛金が発生するだけで直ちに仕入資金が出て行くことはありません。
その後の活動としては、
① 商品を仕入れたり作ったりして棚卸商品が発生します。
② お客からの注文が入り、品物が売れて行き売掛金の発生です。
③ 買掛金の支払いで現金・預金が出て行きます。
ここではたと、社長は気づくのです。『お金が...無い‼』
※売掛金を回収しない限り、買掛金が支払えない‼
※売上を拡大するために棚卸商品を増やそうとすると資金が詰まってしまう‼....などなど。
『運転資金』=(『売掛金』+『受取手形』+『棚卸資産』)-(『買掛金』+『支払手形』)の式を覚えていますか?
結論から申せば、『売上高が増加していく際には、十分な資金を必要とする』ということなのです。
新型コロナウィルス感染拡大を受けて、売上高が大幅に減少した、若しくは今後減少が予想される事業主が多くいます。政府も公庫をはじめとする金融機関に対して、そのような事業者に対して実質無利子融資などの提供を勧めています。
『いくら借りるのが良いのか?』などの質問があります。『資金をいくら持てばよいのか?』などという質問もあります。
気を付けたいのは、この嵐が過ぎ去るまでの間を乗り切るだけの額ではないという事です。
アフター・コロナで立ち上がるために必要な運転資金を十分に確保しておくことが大切なわけです。
何とか嵐を乗り切ったのに、最後の最後の立ち上がりにコケてしまっては、元も子もありません。
今は非常時です。借入は躊躇なく、十分な資金を借りることです。仮に、余れば返せばよいだけのこと。
資金施策には、必ずアフター・コロナの立ち上がり資金を含めて行ってください。
先月も書きましたが、『明けない夜はない』し『止まない雨はない』のですから。