今回は経営者が認識しておかなければならない“三つの分岐点”についてのお話です。

 「分岐点」と聞くと真っ先に頭に浮かぶのが『損益分岐点売上高』でしょう。自社の売上高がどの位であれば利益が黒字化するのかを知る指標です。この『損益分岐点売上高』がわかれば、必要最低限自社が達成しなければならない目標売上高が見えてくると言われます。

 例えば、A社の損益計算書が上のようであったとします。費用をそれぞれ固定費と変動費に区分して、損益計算書を作り変えます。

 すると、A社の限界利益率(限界利益÷売上高)は30%であることが分かり、現在営業利益が赤字のA社が固定費(人件費+減価償却費+地代家賃)1,700を賄うために目標としなければならない売上高(損益分岐点売上高)は、5,666以上であることが計算できます。

 

◎損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率=1,700÷30%

 現在5,000の売上高を5,666に13%アップを実現すればよいことになります。しかし、世の中それほどうまく行くとは限りません。「机上の空論だ」なんて言われそうです。

 

そこで、少し視点を変えて、さらに別の分岐点を探してみましょう。

売上高を増加させるのは大変な苦労がある場合、コストに着目してみるのも一つの方法です。コストには変動費と固定費がありますが、固定費をいじるのはさすがに難しいと思われます(当然固定費のコストカットもやる必要はあります)。

ここでは変動費に着目して.....『損益分岐点限界利益率』なるものを探してみたいと思います。

 

 限界利益率を変化させてみて、固定費を賄える売上高を求め、現在の売上高と比べてみます。結果限界利益率34%が損益分岐点であることが分かります。

 

 

 

こ のように、『損益分岐点売上高』のみに捕らわれるのではなく、限界利益の改善にも取り組むことも経営には必要なことと言われています。

 

 さて、もう一つ経営者にとって欠かせない“分岐点”があることをご存じでしょうか。

 

 三つ目の“分岐点”それが『キャッシュフロー分岐点(収支分岐点)』です。

 この分岐点は損益ではなく、お金が絡みます。事業をしていてお金が残るのか、それともお金をロスするのかの分岐点となるものです。

 今回はこの分岐点を売上高を利用して計算してみましょう(キャッシュフロー分岐点売上高)。

 

 最初のA社の損益計算書をご覧ください。費用の中にキャッシュアウトを伴わないものがあるのが分かるでしょうか。そうです、「減価償却費」がそれにあたります。

 それでは、最初に計算した「損益分岐点売上高」の計算式の中の固定費から「減価償却費」を除いたもので、必要な売上高を計算してみましょう。

 

◎キャッシュフロー分岐点売上高=(固定費-減価償却費)÷限界利益率=(1,700-400)÷30%

で、4,333の売上高があればすべてのキャッシュアウトを賄えることが分かります。これが、現金がマイナスとならない売上高であり、つぶれない為の売上高ということができます。

 

 実際には、この計算式にキャッシュアウトするもののなかで最も重要な「借入金の返済額」を加えたもので計算をします。

 

 計算式を示すと、

◎キャッシュフロー分岐点売上高=(固定費+借入金返済額-減価償却費)÷限界利益率

 

 いかがでしたでしょうか“三つの分岐点”。

 

 様々な視点で自社のあるべき姿を計算してみてはいかがでしょうか。