NKKの朝の連続ドラマ『まんぷく』、これは即席めんの誕生や成長を題材としたストーリーが好評を博したドラマでした。
即席めんが日本でどのようにして生まれて、成長していく過程などが面白おかしく描かれていました。どのようなドラマでもサクセスストーリーは見ていても楽しいものです。
当ブログでも『まんぷく』にあやかって、即席めんの話題を論じて見ることにします。
即席めんが日本でうぶ声を上げたのは昭和33年(1958年)のことです。まず、日清食品が「チキンラーメン」を発売。その直後サンヨー食品から「ピヨピヨラーメン」、「サッポロ一番」が発売され、東洋水産から「ハイラーメン」、エースコックから「エースラーメン」などが登場して行きます。
さらに、各社が市場に新商品を投入して行く過程で、「出前一丁」や「チャルメラ」などのヒット商品が生まれ、即席めん市場は拡大の一途を辿りました。
しかし、昭和45年(1970年)に日清食品が「カップヌードル」を市場に投入すると、即席めん市場の様子が一変します。それまで拡大の一途を辿っていた袋めんのシェアがカップ麺に喰われていったのです。
このカップ麺の市場でも激烈なシェア争いが繰り広げられました。平成5年(1993年)のトップ5を上げると、
第1位:カップヌードル (日清)
第2位:日清どん兵衛 (日清)
第3位:赤いきつね (東洋)
第4位:スーパーカップ (エース)
第5位:緑のたぬき (東洋)
となっいてました。
カップ麺の次に市場に投入された商品は、生めんタイプのカップめんでした。
平成元年に島田屋が「真打ちうどん」で生めんタイプを発売、次いで平成3年には加ト吉がラーメンを当市場に投入しました。これが、平成4年の日清食品の「日清ラ王」発売のきっかけとなったのです。
以下のグラフは日本即席食品工業協会の公表データから即席めんの生産数量の推移を表したグラフです。
昭和33年袋めんが誕生し世に出ました。最初は徐々に生産が拡大して行くものの、2年目からは爆発的に生産拡大が続きます。続いて登場するカップめんの生産量も同じような経路を辿るのです。さらに、前述した通り、カップめんの登場が袋めんの運命に大きな影響を与えたことを理解するのはこのグラフをご覧になれば一目瞭然ですね。
今回のお話のキーは、製品や商品・サービスなど(これをプロダクトと呼びます)の将来性などの分析に使うツールのご紹介です。
簡単に言えば、
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市場の成長率:将来性が有るのか、無いのか
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市場における占有率:儲かっているのか、いないのか
この二つの軸でプロダクトを分析するものです。
プロダクトポートフォリオマネジメント(Product Portofolio Management)と呼ばれ、省略して「PPM」とも言います。
自分たちが取り扱っている商品や製品、サービスなどが、
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「将来性もないし、儲かっていない(負け犬)」
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「将来性はあるけど、儲かっていない(問題児)」
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「将来性はないけど、儲かっている(金のなる木)」
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「将来性はあるし、儲かっている(花形)」
のどこに該当するかを考えて、
「もっと金を突っ込もうぜ!」や「儲からないから、やるの止めようぜ!」などの経営戦略を立案するのに使うものです。
即席めんでこのPPM分析を行うと、いろいろと面白いストーリーが出来上がります。
昭和33年日清食品が袋めんを世に出します。その時はまだ、将来性も未知数ですし、当然儲けもありません。ですから、「負け犬」です。
これが、将来性がだんだんと見えてきだします。でも設備投資などの費用ばかりが掛かり、儲けはまだ出ません。「問題児」です。
その内、しっかりとした将来性が見え、次第に儲けが出てきます。売れ筋への進展がそこにはあります。「花形」へ昇格です。
そして、広告宣伝などしなくてもしっかりと儲けを維持できる「金のなる木」へと駒を進めるのです。
しかし、新商品(代替商品)のカップめんの登場が「金のなる木」の地位を脅かすのです。
最後には、新商品にシャアを奪われ「負け犬」へと....。
朝ドラの『まんぷく』のモデルとなった日清食日を例にとり、日清食品の中期事業計画などからPPMを推察してみると、
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カップめんのうちノンフライめんを「花形商品」
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カップめんのうち生めんタイプを「金のなる木」
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袋めんについては既に「負け犬」としての位置づけである。
今の日清食品の広告宣伝とうの経営資源の投入量からすると、上記はあながち間違っているとは言えないかも知れませんね。
どこに、どのような商品に自らの経営資源を投入して行けばよいかを考えるための手法としては、このPPM分析は有用な方法なのかもしれません。
AI(人工知能)の出現が様々な分野で語られだしてきました。いつ今までなかった製品やサービスが世の中に出現するか予断を許さない状況です。自社のどの製品やサービスが、今どの象限「問題児」「花形」「金のなる木」「負け犬」にあり、今後何に注力して行けばよいかを素早く考え行動しなけばならない時代だと思います。
自社の次の「花形」や「金のなる木」となるべき製品やサービスを育てるための努力は惜しむものではないと思います。