「財政状態」と「財産状態」との違いは何なのでしょうか。今回は、少しややこしい内容から始めたいと思います。
 

「財政状態」を辞書で引くと、

・国や自治体などの財産の状況。広義では、企業や家庭、個人などの財産の状況。

と書かれています。

 

「財産状態」と同義語なのでしょうか。

 

 実は、「財政状態」とは会計学風に申せば、

・企業などの組織がどのように資金を調達し、どのように運用しているかを表す。

 

と、されています。

 

 ここで、前回の歴史スペクタクルの復習となりますが、
 

・大航海時代は、一つの航海が終了した時点でその時の財産の状況を全て現金で換価できる状態にして財務諸表にまとめました。

 この時作られたのが、「清算貸借対照表」と呼びます。これこそが「財産状態」を表す財務諸表なのです。時価主義会計の究極なものとなります。

 

・英国で誕生した産業革命では、企業は継続して事業活動を続ける存在として財務諸表が作成されたのでしたね。

 まず、企業が資金を調達し、その調達した資金を運用して収益を上げる活動をその途中である一瞬の資産・負債の状況を記したものが「決算貸借対照表」と呼ばれるものです。これが「財政状態」を表す帳票なのです。

 ですから、「財政状態」を表す「決算貸借対照表」には、売掛金・買掛金といった未決済残高や、建物・機械装置のように使用途中の固定資産、さらには利益の増減とは無関係の貸付金・借入金などが並ぶのです。

 このようなものを一括りにして「財政」と呼ぶのです。

 

 会計の世界で言う所の「財政状態」と「財産状態」とは明らかに異なる概念だということです。

 

 現在、財務諸表作成基準として日本基準と国際会計基準(IFRS:アイファースと呼びます)が存在しています。それぞれの基準で作られる財務諸表の名称を記したものが以下の表です。

 

日本基準

国際会計基準

貸借対照表

財政状態計算書

損益計算書

包括利益計算書

株主持分変動計算書

株主持分変動計算書

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書

 

 国際会計基準では私たちが日頃使い慣れている貸借対照表(バランスシート)を財政状況計算書(A statement of financial positionF/P)として表します。

 こちらの名称の方が実態を表しているような気がしますが、いかがでしょうか。

 

 貸借対照表とは本来「財産」ではなく、「財政」を表現するための帳票だということです。