福岡空港で今月10日、旅客機が離陸に向け高速走行する滑走路に、日本航空機が停止線を越えて接近し、誤進入しそうになるトラブルがあった。両機は管制官の指示で緊急停止し、けが人はなかった。国土交通省は、管制官とのやり取りで日航機側が滑走路前での停止を認識しておらず、両者に「行き違い」が生じたとみて、当時の交信状況などを詳しく調べている。


 国交省と日航によると、福岡発羽田行きの日航312便(乗客乗員176人、ボーイング787―8型機)は10日午後0時20分頃、北に向けて離陸するため、駐機場を出て誘導路E6を地上走行中に、管制官の許可がない状態で滑走路手前の停止線を越えた。


 滑走路では当時、福岡発松山行きのジェイエア3595便(同48人、エンブラエル170型機)が許可を得て南へ向け離陸滑走を始めており、日航機の停止線越えに気付いた管制官が両機に停止を指示。ジェイエア機は時速100キロを超えていたが急ブレーキをかけ、日航機の数百メートル手前で止まった。

 その後、日航機は予定通り運航し、機体点検が必要になったジェイエアは3595便を含む計3便が欠航した。日航は「心配をおかけしおわびする。今後、国交省の指導の下、管制との交信内容を含めて原因を分析し、再発防止に取り組む」とコメントした。

 複数の関係者によると、管制官は「滑走路手前のE6の停止線で止まれ」との指示と併せて、「その後、滑走路を通った上で(別の)誘導路から出て地上走行せよ」とも日航機に伝えていた。管制官が滑走路を 迂回うかい 路にして日航機を通そうとしたのは、最短距離となる路面に別の旅客機がいたためだった。

 日航機のパイロットはその際、「滑走路を経由した迂回指示」を復唱するなどして管制官に繰り返し確認。管制官も同じ内容を伝えて滑走路上の走行を改めて指示した。

 滑走路を迂回路とした地上走行は珍しくないが、一連のやり取りの中で、管制官が最初に伝えた「E6の停止線で止まれ」との指示について、日航機側は認識しないまま停止線を越えたとみられる。一方で、管制官側もパイロットの復唱内容を十分に確認できていなかった疑いがあるという。

 国交省によると、今回のトラブルは、航空法の定める航空事故や重大インシデント、「安全上の支障を及ぼす事態」には該当しない。ただ、日航機が停止線を越えた経緯に管制官とパイロットの「行き違い」があった可能性があるとして、録音済みの交信内容の確認や管制官、パイロット双方への聞き取りを進めるなどして、再発防止を図る。

 日航機を巡っては、今年2月にも米サンディエゴ国際空港で停止線を越えるトラブルがあった。

読売新聞から(引用)
2024/5/13