五輪女王が落選した理由とは――。日本卓球協会は5日に都内で会見を開き、2024年パリ五輪代表候補の男女各3選手を発表した。女子シングルスは早田ひな(23=日本生命)と平野美宇(23=木下グループ)が選出され、注目を集めた女子団体戦要員の3枠目は15歳の張本美和(木下グループ)が名を連ねた。東京五輪混合ダブルス金メダルの伊藤美誠(23=スターツ)は無念の落選。経験豊富な伊藤を推す声もあった中、なぜ3大会連続の五輪出場を逃したのか。


 伊藤のもとに吉報が届くことはなかった。団体戦要員の3枠目をめぐっては、伊藤と張本による一騎打ちの構図。女子日本代表の渡辺武弘監督(62)は「選考では悩みに悩んだ。比較というより、伊藤選手は(五輪)金メダリストで非常に優秀な選手」としながらも「張本選手はダブルスも組めるし、パリ五輪では海外の選手と戦うことになる。いろいろ戦いぶりや上位選手との成績を総合的に見ながら、今回はふさわしいと思って選出した」と選考の経緯を説明した。

 前回の東京五輪で団体では3大会連続のメダルを獲得する一方、決勝で中国に敗れて悲願の金メダルには届かなかった。表彰台の頂点を目指す上で、多くの卓球関係者が「ダブルスが一つのキーポイントになる」との見方を示している。

 伊藤は早田とのダブルスで抜群の相性を誇り、全日本選手権で5度の優勝を達成。平野ともかつてペアを組むなど実績は申し分ない。ただ、張本も右肩上がりに成長を遂げており、早田や平野とのペアリングに大きな問題はないという。馬場美香強化本部長(58)は本紙の取材に「張本選手が平野選手と組むかどうかは(渡辺)監督の考えだが、いろんなことを想定して、いろんなペアリングを考えたいと話していた。ダブルスは練習をすればするほどコンビネーションが良くなる」との見解を示した。

 さらに、張本の存在がチームに相乗効果をもたらすとの声もある。卓球関係者の一人は「伊藤選手が3枠目だと早田選手、平野選手、伊藤選手の3人がともに同級生のチーム構成になる。それよりも、15歳の張本選手がいる方が、今回シングルス代表になった早田選手、平野選手が『自分がやらないと』というような気持ちになると思う」と指摘した。

 銅メダルを獲得した2016年リオ五輪は、伊藤が15歳で出場。当時27歳の福原愛、23歳の石川佳純の20代コンビにも刺激となり、チームが活性化した。今回も張本が加わることで、新たな〝化学反応〟が期待できるというわけだ。

 渡辺監督が「伊藤選手は日本卓球界の宝」と語るように、残してきた功績は世界トップクラス。実力も十分に兼ね備えているものの、さまざまな要因が重なって代表入りはならなかった。一方で、逆転で選出となった張本は「ここまで来られたのは自分でもびっくりしている。選んでもらったからには、しっかり責任感をもって頑張りたい」と力強く宣言。絶対女王・中国撃破への〝切り札〟となるか。

東京スポーツから(引用)
2024/2/6