75回目の終戦記念日を迎えた15日、政府主催の全国戦没者追悼式が東京都千代田区の日本武道館で開かれた。戦没者遺族ら参列予定者は約530人。日中戦争と第二次世界大戦で犠牲になった約310万人を悼んだ。天皇陛下は、式典でのおことばで新型コロナウイルスの感染拡大を「新たな苦難」と表現したうえで、「皆が手を共に携えて困難な状況を乗り越え、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願う」と述べられた。

 正午からの1分間の黙とうの後、天皇陛下がおことばを読み上げた。先の大戦に関連して、「深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い」と不戦の決意を表明。昨年に続き、「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」との表現で平和を祈念した。

 安倍晋三首相は式辞で「私たちが享受する平和と繁栄は戦没者の尊い犠牲の上に築かれた」と、哀悼の意を表明。同時に政権が掲げる「積極的平和主義」にも言及した。

 遺族代表の追悼の辞は、父をフィリピンのルソン島で亡くした静岡市の杉山英夫さん(82)が述べた。

 昨年は約6200人が参列したが、今年は新型コロナの影響から規模を縮小した。厚生労働省によると、感染リスクを回避する観点から参加を辞退する動きも広がり、20府県が参列をやめた。遺族は12~93歳の224人が参列予定。来賓などを含めた参列者数としては、追悼式が始まった1963年以降、最少となった。戦没者の妻は、平成が始まった89年には3269人が参列していたが年々減少。父母の参列は2010年を最後に途絶えている。

 感染防止のため全参列者のマスクの着用や事前の検温などを徹底。国歌斉唱は行わず、奏楽のみとなった。参列できない人のためにインターネット中継も初めて実施した。

 追悼される戦没者は、37年に始まった日中戦争と、その後の第二次世界大戦で犠牲になった軍人と軍属など合わせて約230万人と、民間人約80万人。【村田拓也】

毎日新聞から(引用)
2020/8/15