最近社会的に注目を集めている主な事件に対する検察の捜査が遅々として進んでいないとする指摘が検察周辺から聞かれる。特に現政権関係者に関係する事件の場合、参考人の事情聴取も行われていなかったり、「法理検討」などを理由に結論が先延ばしされていたりする状況だ。検察幹部出身の弁護士は「今年1月の秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官による『検察大虐殺人事』の影響が第一線の捜査に作用しているようだ」と話した。検事らは秋長官が7月に大規模な検察人事を断行するとみている。

■法務部長官の息子の軍未復帰疑惑捜査

 ソウル東部地検は秋美愛法務部長官の息子が軍の休暇から復帰しなかったとされる疑惑を巡り、告発を受理してから半年近く事件を棚上げし、告発人による催促でようやく参考人を呼んだ。自由韓国党(現未来統合党)は今年1月、疑惑を検察に告発した。捜査を担当するソウル東部地検は2月、告発人である自由韓国党の弁護士を一度呼び、事情を聴いた。そして、4カ月後の6月15日に統合党の金度邑(キム・ドウプ)議員が弁護士を通じ、検察に進行状況を照会。東部地検は「捜査を準備中」だと回答した後、参考人の呼び出しを開始した。

 秋長官の息子が休暇から復帰しなかった当日、当直を務めていたA氏(26)は6月19日、参考人として初めて聴取を受けた。告発から5カ月半が経過していた。統合党の弁護士によると、捜査チームは6月17日、弁護士に軍刑法30条1項(現地離脱)、30条2項(未帰隊)のうちどちらを適用するのかや関連判例について尋ねた。弁護士は「法律の専門家である検事が法律条項の適用について尋ねてくるのは異例だ。早期に進行可能な事件に長時間がかかっているようだ」と話した。

■正義連の寄付金流用疑惑捜査

 正義記憶連帯(正義連)と韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の会計不正疑惑などを捜査してきたソウル西部地検は6月26日、正義連の会計担当者を参考人として呼んで取り調べた。それを最後にこれ以上を捜査は行われないもようだ。仮に捜査が大詰め段階だとすれば、次の手順は疑惑の中心にいる尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員(共に民主党)の召喚だ。しかし、捜査チームは5月11日に告発を受理して以降、2カ月がたつにもかかわらず、尹議員の召喚日程を決めていない。この事件はソウル西部地検長が警察に捜査を任せるのではなく、検察が直接捜査すべきだとして、大検察庁に報告した事案だった。

 これに先立ち、捜査チームは6月16日、慰安婦被害者、吉元玉(キル・ウォンオク)さんの息子、H牧師(61)夫妻、17日には故イ・スンドクさんの娘、22日には故アン・ジョムスンさんの親族をそれぞれ取り調べた。H牧師サイドは本紙の電話取材に対し、「一度の聴取以降、特に出頭要請は受けていない」と説明した。

 李成潤(イ・ソンユン)ソウル中央地検長は先月、オプティマス資産運用のファンド買い取り中断事件を同地検調査1部に割り当てた。事件は政府機関や公共機関が売り出す債権に投資するとうたいながら、実際には非上場企業の社債などに投資を行い、5000億ウォン以上の被害が予想される事態となったものだ。この事件を巡っては、「与党の関与疑惑まで指摘される大規模金融犯罪事件を反腐敗捜査部ではなく、一般的な告訴事件を担当する調査部に任せたことは理解に苦しむ」との指摘がある。

 事件の割り当て当時、捜査の実務責任者である調査1部のチョン・グァンス副部長は別の事件に駆り出されていた。チョン副部長は刑事1部が担当していた「検察・メディア癒着」事件の捜査を支援し、チャンネルAのイ・ドンジェ元記者の取り調べも行ったという。検察内部からは「権力型不正事件が専門の反腐敗捜査部は手が空いているのに、異常な割り当てだ」との声と共に「イ・ヒョクチン元オプティマス代表に対する与党の庇護(ひご)疑惑は捜査しないと誤解される恐れがある」との指摘も聞かれる。

イ・ミンソク記者

朝鮮日報日本語版から(引用)
2020/7/9