新型コロナウイルスの緊急事態宣言が14日に39県で解除されたが、今も宣言が続く東京都でも人出に増加の兆しが見えてきた。営業を再開した店舗も少なくない。買い物や子どものストレス解消など外出目的はさまざまだが、自粛の緩みは感染の「第2波」につながりかねず、不安を口にする人もいた。

 15日午前8時、JR東京駅前はマスク姿の会社員が目立った。通りの人影はまばらだったが、駅の改札口では列をなして歩くサラリーマンの姿も。インフラ系の会社に勤める50代女性は「4月後半と比べると今週は人が増えたと感じる」と話した。

 百貨店や貴金属店などが建ち並ぶ銀座。休業を続ける店も多いが、ソフトバンクの子会社「アグープ」が推計したスマートフォンの位置情報をもとにした人口データによると、平日(5月11~14日)の午後2~3時の人出は、ゴールデンウイーク前の平日(4月20~23日)の同時間帯に比べ14・1%増えていた。

 臨時休業していたユニクロ銀座店は、入り口での検温など対策を講じた上で今月11日に営業を再開した。

 15日昼、次男(6)とともに来店していた中央区の女性会社員(42)は、店内に多くの客がいることに驚いた様子を見せた。「もっとガラガラかと思っていた」。宣言が出た4月7日以降、食料品以外の買い物で外出したのは今回が初めてという。夫とともに在宅勤務を続けるが「オンライン会議もあるので、次男は家でも静かにして我慢している。ストレスのたまっている次男のため気分転換もかねて来た」と話した。

 一時期は閑散としていた渋谷のスクランブル交差点も人通りが戻りつつある。夫と日用品を買いに来た練馬区の女性会社員(44)は「緩む時は一気だなと感じる。全国の緊急事態宣言はもう少し長くてもよかったのでは。このままでは第2波は絶対に来ると思う」と危機感を口にした。

 サラリーマンや若者が行き交うJR町田駅周辺。夕方過ぎになると、酒を楽しむ客の姿も散見された。

 駅近くにあるバーは宣言以降、臨時休業に入ったが、8日に営業を再開した。店主の男性(33)は「経済的に厳しく再開を決めた」と話す。以前の客入りにはほど遠い状況だが、訪れた客からは「自粛は疲れた。家ではなく、そろそろ外で飲みたかった」などと喜ぶ声があがったという。

 一方、宣言後もずっと営業を続けていた別の飲食店の40代男性は「2次会や3次会として利用されることが多い店には今はほとんど客が来ない。『夜の街』が活気を取り戻すのは、早くて年末になってからだと思う」と悲観的だった。【竹内麻子、林田奈々、李英浩】

毎日新聞から(引用)
2020年5月16日