のだめss第二弾。
だいぶ前に書いたものなので、ネタが古いです・・・。
でもせっかくなので読んでやってください。
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「あっ」
オレは思わず声を上げ、座ったままテレビに向けて軽く身を乗り出した。
映っているのは、ここ数日、何度となく流れているオリンピックの映像。
画面では一人の女性が、氷上で美しい舞を披露していた。
「やっぱスゲーキレー」
オレはもう何度目になるかわからない、その映像を飽くことなく見つめる。
トゥーランドットの曲に乗り、しなやかに体をそらし、回転させ、見るものを魅了する。
「なっ、すごいよな、やっぱ!」
そういって隣へ顔を向ける。
が、先ほどまで横顔を見せていた彼女は、今は背を向けて座っていた。
「・・・のだめ?」
オレは、気持ち猫背なその後姿に(クッションをかかえているらしい)声をかけた。
返事はない。
「なに?どーした」
オレは這うようにのだめに近付き、横から顔をのぞく。
クッションを顔面に押し付けられた。
「お酒臭いですよ!!」
俺は思わず身を引き、ごめん、と小さく呟いた。
なんなんだこの機嫌の悪さは。
まるで毛を逆立てて威嚇している猫みたいだ。
確かに酒は入っているが、この位はいつもの事だし量も多くない。
普段は酒臭かろうがなんだろうが、かまわずくっついてくるくせに・・・。
オレは憮然としてしばらくのだめの背をにらみつけた。
さてどうしてくれようか。
ご機嫌を取るようなまねなんて絶対にしたくないけど、このままでは癪に障る。
そうだ。
オレはふと思いつき、口元をゆるめた。
また這うようにしてゆっくりとのだめの背に近付く。
そして体の向きを変え、のだめの後ろに腰を下ろし背中をつけた。
「な、何ですカ!」
のだめは首を半分回してこちらを振り返りかけたが、オレはさえぎるようにのだめの方へ体重をかけた。
首の後ろがのだめの髪でくすぐったくて、ちょっと笑った。
「もー重たいデスヨー」
非難しながらも、のだめの口調は柔らかい。
どうやら機嫌は直ったらしかった。
それなら、とオレはさらに背中をそらすようにして後ろに体重をかける。
「イナバウアー」
両手も挙げてそう言ったとたん、ふっと背中の感覚がなくなった。
「うわあっ!」
とっさに受身の態勢をとり、後頭部の打撃はまぬがれた。
「いってーな!」
打った背中をさすりながら、体を起こし、横でしゃがみこむのだめに文句を言った。
後ろにいたのだめが急に横に移動したもんだから、完全に体を預けていたオレはひっくり返ったのだ。
オレがのだめにつかみかかろうと手を伸ばすと、さっと立ち上がってオレを見下ろす。
「バカじゃないですか!なにがイナバウアですか、スケベ!」
「はぁっ!?」
スケベって・・・。立ち上がったときにスカートの裾からピンクのレースが見えたのは、オレのせいじゃないだろ!?
「どうせ、足とか胸とかスカートの裾とか、そんなところばっかり見てるんでしょ!」
あの角度で立ち上がられたら、そりゃ見えるだろって!
つか、そんなトコばっかみてねーって。
まあ・・・たまに露出が多い服着てれば・・・つい目が行く事もあるけど・・・。
オレ、そんなにみてんのか?ちらっとしか見てないつもりだけど・・・バレてんのかな・・・。
「そんなに見てたって、どうせ先輩を相手になんかしませんよ、静香ちゃんは!」
何でそこまで飛躍する!
誰が相手しろって・・・え?
「静香ちゃん・・・?」
オレは呟く。静香ってまさか・・・。
「もしかして今の、スケートの荒川静香の話?」
「先輩の好きな静香ちゃんの話ですヨ!」
のだめははき捨てるように言った。
オレはその不機嫌な顔を見つめた。何?コイツ・・・
「お前、荒川静香相手に妬いてんの?」
「うぬぼれないでくだサイ!」
のだめは言いながら、持っていたクッションを勢いよくオレの腹にたたきつけた。
う、と思わず声が出る。
何でコイツはこんなに暴力的なんだ!!
そんなオレを冷たく見下ろし、のだめは言葉を続ける。
「のだめは、静香ちゃんがせっかく頑張ってるのに、そんなエッチなところばっか見てる先輩に腹が立つんですよ!」
「見てねえ!」
「見てますヨ!静香ちゃんが出てるところばっかり録画して、何度も何度も!」
「そりゃ・・・お前だって、すごいすごいって騒いでたじゃねえか」
「先輩は目がやらしいんですよ、目が!」
「普通に見てるだけだろ!」
なんなんだコイツ。わけわかんねー。
オレが荒川静香をあんまりほめるから拗ねてんだと思ってたけど・・・違うのか?
でも、本当にそんな風に思われてるなら、ちょっとショック・・・かも。
「先輩?」
急に黙ったオレに、のだめはいぶかしげに声をかける。
「怒っちゃいました?」
「別に。オレはどうせ芸術のわからないスケベジジィですから」
「怒ってるじゃないですカ・・・」
のだめは少々困惑気味に呟いた。
オレはのだめに背を向け、ひざを抱えるように座った。
もういい。のだめがどう思ってようと、オレには関係ない。
投げやりな気分で、オレはグラスに残っていたワインをあおった。
荒川静香の演技を見た感動は、すっかりうせてしまっていた。
オレはただ単純に、美しい、と思っただけだ。
自分とそう年齢の違わない彼女が、堂々と世界の舞台で自分の力を出し切った事を。
そして、自分もいつか世界の舞台で自分を表現したい、と思った。
その時には良きパートナーと共に・・・。
オレはそこまで考えて、無性に腹が立ってきた。もちろん、後ろにいるはずののだめに対してだ。
人がこんなけなげな事を考えているというのに、こいつはスケベだとかそんな風にしか見えてないのか。
のだめにとってオレのイメージはそんなものなのか!!
妙に悲しくなり、オレはひざの上に顔を伏せた。
顔を見られたくなかったし、のだめの反応も見たくなかった。
テレビの音がくぐもって聞こえる。
そんな中で、のだめがぽつりと言った。
「音楽でも、金メダルってあるんですかね?」
オレは思わず顔を上げる。
「・・・は?」
「ほらー、音楽でもオリンピクみたいに、国同士で競ったりするのかなーって」
オレはのだめを見つめた。
テレビに視線を向けた彼女の横顔は、少しだけ微笑んで、まっすぐな目をしていた。
何をいきなり言い出すかと思えば。
オレは苦笑いを漏らした。
コンクールにろくに興味も示さないやつが、音楽のオリンピックだなんて。
しかもかなり本気で言ってる様子。
「あったら、出たいのか?」
オレの問いかけに、のだめは顔をこちらに向けた。
「もしのだめと先輩が出て金メダル取ったら、まさに“ゴールデンペア”ですヨ!」
力強く笑って、のだめは言う。
その瞳はきらきらとしていて。オレもつられて笑った。
その発想がおかしくて・・・でも、うれしい。
オレの表情に気付いたのか、のだめが、あっ、という風に口をあけ、すぐに満面の笑みを浮かべた。
オレは笑いを抑え、のだめの頭を手で軽くこづいた。
「んなもんあるわけねーだろ」
「えー?そうですかー?」
なあんだ、と唇を尖らせてのだめが言う。
その様子に、なんだかくすぐったいような気分になる。
図らずも、先ほど自分が思っていたことと似たような事を言われてしまった。
オレは自分の表情を見られないよう、のだめに背を向けて立ち上がった。
「・・・とりあえず、もしそうなった時のためにちょっと練習しとくか?」
のだめははじめきょとんとしていたが、オレが肩越しに振り返ってピアノを指差すと、ぱっと立ち上がってピアノの前に座った。
軽く鍵盤に指を滑らす。
オレは再びのだめに背を向けると、バイオリンを取りに隣の部屋へ移動した。
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のだめは真央ちゃん好きそうです。