―――寂れた路地に男女の人が居る。
近づいてみれば分かるのだが、好い人同士と見るには少し殺伐としていた。
女性は地面に倒れていて、服はよれて、顔は怯えた様に隣に立っている段税に向けられている。
男性の方は、常人では着こなせないであろう深紅のスーツを身に着けている。
歳は見た感じだと、青年に近い気がする見た目だ。
「……美しい物を見ると、守りたくなるか?
美しいままで、などと思ってしまうのは何故か……。」
と、独り言のように呟き始める。
「私はね、美しい物を見ると歪めたくなるのだよ。
破壊でも良い、侮辱でも良い、崩すしても……とにかく、何としてでも歪めたくなるのだよ。
美しい人は貶めたくなる。美しい物は切り刻んで燃やしたくなる。
なぁ、貴様はどう思う?」
そばに倒れている女性の顔を覗き込みながら、どう考えても狂気に満ちている質問をしている。
が、答えを待っていないのか、反応が無いのも気にも留めず。
「我等の種族ならば当たり前なのだ、当たり前の思考なのだが……。
バード家の面汚しめ、何が『大切な人』だ、何が『心が美しい』だ。
大切ならば食らえば良い、美しいなら壊してしまえ!
……下らん。」
路地にこだまする大声に誰も気にする人は居ないのか、青年以外の声は聞こえず。
「親父は諦めたようだが、私は許さんぞ……。
種族を否定した生き方。同属に対する侮辱。
今はのうのうと生きてるが良い……リスキイ・バード。
いや、今は倭だったか……?」
足元の女性にはもう興味が無いのか、見向きもせず歩き出し。
「この私、貴様の実の兄。
ブラッド・バードが貴様を連れ戻す……。」