音輪

~主催者による過去出場者インタビュー~


【第8回】2017年6月25日


髙瀬葵子様(ヴァイオリン) 

ウィ―ン国立音楽大学合格


《コンクールご出場》

第3回弦楽器高校生部門第2位、コンチェルトオーディション合格。

コンチェルト演奏会ご出演。

全日本ジュニアクラシック音楽コンクール全国2位


現在兵庫県神戸市在住

ご両親様、妹様の4人家族


《プロフィール》

兵庫県神戸市出身。関西学院大学継続校啓明学院高校を卒業。3歳の時楽器の美しさに魅了され以来その熱意は今日に至る。鈴木メソードで板垣登喜男氏、松本尚蔵三氏に師事。9歳で父の仕事の為上海に移住し、ロシア系アメリカ人、ジョージ・マキシマン氏に師事。12歳で帰国し、現在はイタリア人ヴァイオリ二スト、マウロ・イウラート氏に師事。15歳からオーストリア・ザルツブルク、モーツァルテウム大学サマーアカデミーにてM・フリッシェンシュラーガー教授のマスタークラスを受講し、毎年アカデミーコンサートに出演。2017年10月よりウィーン国立音楽大学に入学予定。

第3回いかるが音楽コンクール 2位 コンチェルト演奏会出演

第21回 KOBE国際音楽コンクール 弦楽器部門奨励賞

第31回 全日本ジュニアクラシック音楽コンクール本選1位・全国大会2位


 

葵子様、妹の礼子様とミント神戸でインタビュースタートです♪

 

奥谷:本日はお忙しいところどうも有難うございます。どうぞよろしくお願い致します。

髙瀬様:よろしくお願い致します。

 

奥谷:まず葵子さんと音楽との出会いをお聞かせ頂けますでしょうか?

髙瀬様:3歳頃からバレエや音楽教室に行ったようなのですが、それには興味を示さず、ある時五嶋みどりさんだったと思いますが、メンデルスゾーンソロをテレビで観て「これをしたい!」と言いだしたそうです。母が知人からヴァイオリンをすると頭が良くなるときいたらしく、3歳から鈴木メソッドの先生に習いました。この頃はヴァイオリンが好きで一日中CDに合わせて思いつくままに遊び弾きをしていたようです。


奥谷:ヴァイオリンは最初から興味津々だったわけですね。

髙瀬様:ヴァイオリンの音色に魅了されたのかとても興味をもったようで、習っている曲を耳で聴いて遊んで弾いていました。

 

奥谷:それから幼稚園小学校とヴァイオリンは続けられたのですね。

髙瀬様:小学校の低学年から卒業まで父の仕事で上海に住んでいました。それまでも父の転勤があり、その先々で鈴木の先生に習っていましたが、上海の時初めてロシア系アメリカ人、ジョージ=マキシマン先生に習いました。鈴木では主に基礎をしていましたが、音楽的な面が足りず、先生からは「ロボット弾きでおもしろくない」と言われました。普段はとても優しいのですが、音楽的には大変厳しい先生で、その上英語でのレッスンでしたが、そこでは表現力の大切さを学びました。


奥谷:小学生の時期に海外生活をご経験されたのですね。帰国されてからは如何でしたか?

髙瀬様:中学に入り、マウロ=イウラ―ト先生の門を叩きました。お世話になり今年7年目になります。

 

奥谷:イウラート先生のレッスンで多くのことを学ばれたのですね。

髙瀬様:日本の先生からは正確さを学びました。鈴木で練習の習慣がつきました。鈴木ではまず型から入ります。これは勉強をする上でも生活習慣が身に付き人間形成に役立つと思います。マウロ先生からは音楽的なものをオリジナル練習法を通して分かりやすく教えて頂き、深く表現も学びました。

 

奥谷:当コンクールにご出場頂いたきっかけは何でしたか?

髙瀬様:上海に住んでいた時に、ジョージ先生から国際音楽コンクールに出るよう勧められましたが、中学受験の準備をしていましたし、帰国後中高一貫の関西学院大学継続校である啓明学院に進学したので、コンクールをほとんど受けたことがありませんでした。帰国してマウロ先生の推薦で、中学時代に、プロの皆さんとアンサンブル神戸のオーケストラで、定期的に演奏させて頂きました。マウロ先生とヴィオラのザザ=ゴグア先生、チェロの林裕先生方と淡路島の小学校を周る企画も楽しく勉強になりました。そんな中、コンチェルト演奏のチャンスがあるこちらのコンクールに出てみたいと思い 挑戦しようと思いました。マウロ先生は音楽を知らない方にも興味をもたせる音楽家で生徒想いの素晴らしい先生です。全てはマウロ先生とのご縁から今に至ります。

 

奥谷:中学生時代素敵な経験を積まれたのですね。その頃プロの道にと考えられていましたか?

髙瀬様:この頃はまだ迷っていました。

中3にモーツァルテウムのサマーアカデミーで、ミヒャエル=フリッシェンシュラーガー先生のクラスを受けました。

奥谷:いつ頃から本格的にプロの道を目指そうと決意されたのですか?

髙瀬様:高2の春までは、そのまま関西学院大学に進むか、日本の音大に進むか、ウィ―ンに行くか、決めかねている状態でした。勉強も好きなので、関西学院大学の国際学部を考えていました。高2でいかるが音楽コンクール(現あおによし)を受け、コンチェルトオーディションに合格し、コンチェルト演奏会に出演したことにより、これで辞めるのは勿体ない、続けようと決意しました。この時ヴァイオリンをプロとしてするのか別の道に進むか究極の岐路にありました。毎年受講していました、モーツァルテウムも継続するのか辞めるのか、プロの道を目指すのであれば続けようと思いました。


奥谷:当コンクールのコンチェルト演奏会では素敵なシベリウスを演奏して頂きました。

あの演奏会がきっかけとなり人生の大きな選択をされたということで、大変嬉しく共に大きな責任を感じます。

毎年いらっしゃるサマーアカデミーはどのような内容なのでしょうか?

髙瀬様:毎年3期あるセミナーで、そのうち2ターム参加しています。各国から受講生が来ていて、オーディションがあります。本場の音楽に触れる事ができ、参加者の演奏を聴く機会も多く、とても勉強になります。私は毎回幸運にもフリッシェンシュラーガー先生のレッスンを受ける事ができました。

奥谷:フリッシェンシュラーガー先生はウィーン国立音楽大学の学長もされていますね。

髙瀬様:最初中学の時はこわいなと思いましたが、毎年サマーアカデミーを受けていました。この曲はこう弾くという理論が確立されておられて、ご自身の理論があり独特です。バッハはこう、パガニーニはこう、モーツァルトはこうという風です。違う場合はっきりと違うと仰います。バッハやパガニーニは一行ずつ止められます。これまであやふやだったことが、先生の理論を学ぶと根拠をもって演奏できます。こういう感じとか形容詞ではなくて納得行く説明をして頂けます。理論が分かると考えて弾くようになり安心して弾けるようになりました。


奥谷:サマーアカデミーでの印象的な出来事は何かございますでしょうか?

髙瀬様:毎年、モーツァルテウムのサマーアカデミーコンサートの演奏者に選んで頂けました。また、政界の方々が来られる美術館での演奏会で、演奏をする機会を頂いたり、先生からとても良い席でオペラ・フィガロの結婚のチケットを戴いたりもしました。


奥谷:そしてこの度、フリッシェンシュラーガー先生のいらっしゃるウィ―ン国立音楽大学を受験され見事合格されましたね。おめでとうございます。

 髙瀬様:ありがとうございます。


奥谷:コンクールでのエピソードをお聞かせ頂けますでしょうか?

髙瀬様:本選ではうまく弾けなかったと思いましたが、結果が良くて良かったです。

コンチェルトオーディション合格の知らせを戴き、これまでオーケストラと弾いたことがなくて、良い挑戦だと思いました。


奥谷:シベリウスの選曲についてお聞かせ下さい。

髙瀬様:この曲は先生から戴きましたが、自分の性格に合っていました。特に第3楽章の民族のリズムが自分に合っていて、この曲を全部弾いてみたいと思いました。

 

奥谷:この演奏会では何を学ばれましたか?

髙瀬様:技術も勿論大切ですが、精神力のコントロールが大切だということも学びました。母より斑鳩のコンチェルトが決まってから、座禅に行ったらと薦められました。西宮のお寺へ月1回行き、呼吸を整えました。これは斑鳩の本番の2か月前から始めました。

邪念を無くし精神統一ができます。これを続けると落ち着いて弾けて、不安になることが無くなりました。


奥谷:お母様のアドバイスが功を奏しましたね。オーケストラと合わせるというのは初めての場合、前日リハーサルと当日ゲネプロ本番ではなかなか厳しいですね。コンチェルト演奏会指揮の安野英之先生はいつもソリストに寄り添い熱心に打ち合わせして下さり助かります。

髙瀬様:そうですね。コンチェルト演奏会本番1週間前にピアノと合わせて演奏会をして頂きました。この時ピアニストの先生よりオーケストラと合わす際のポイントやスコアについてご指導頂きました。音楽が立体的に聴こえ勉強になりました。


奥谷:このコンチェルト演奏会のコンサートマスターは師匠のマウロ=イウラ―ト先生でちょうど良い記念になりましたね。

髙瀬様:はい。熱心にご指導頂き、指揮の安野先生にも打ち合わせに神戸にお越し頂きました。

 

奥谷:そしてコンチェルト演奏会を無事終えられた高2の夏にプロの道を決意されたのですね。

髙瀬様:そうですね。その年の夏のアカデミーには決意していました。

そして今年2017年5月末に試験があり6月頭に合格発表がありました。ウィ―ンへは中3の旅行以来でした。


奥谷:合格のご連絡を戴いて、本当に嬉しかったです。

髙瀬様:ありがとうございます。今回日本人が9人いて19歳は私だけで、日本の音大卒業された方が多いようでした。


奥谷:ドイツ語はいつから準備されましたか?

髙瀬様:高校1冬から始めました。ドイツ語の先生に2017年5月までにB1の資格を取得したい、2年弱で取りたいと伝えました。結果2017年3月に取れました。


奥谷:いよいよウィ―ン生活が始まりますね。

髙瀬様:10月に入学で、7月末からウィ―ンへ発ちます。


奥谷:コンクールは全般的に如何でしたでしょうか?

髙瀬様:奈良にこれまであまり行ったことがありませんでした。小旅行みたな気分で受けられたのも良かったです。大阪周辺だとピりピリしていますが、良い雰囲気で弾けました。またコンクールを通じて人との出会いがあり、応援頂く方も増えて良かったです。

 

奥谷:コンチェルト演奏会ソリストの方同士同窓会をされると伺いましたが、プロもアマチュアも音楽による輪が広がり嬉しく思います。これからどんな演奏家を目指して行かれたいですか?

髙瀬様:演奏家同士はお互いの欠点が分かってしまいますが、より正確に、音楽性をもってそうした欠点が分からないように弾けるようになりたいです。


奥谷:これからコンクールに出場される方へメッセージをお願い致します。

髙瀬様:私は高校も普通校で深く知り過ぎていなかったのが良かったのかもしれません。色んなことを知り過ぎると深く考えてしまったり。不安になるとチャンスを逃してしまうと思います。思い切りが大事です。上海に子供時代住んでいたので、日本人がいかに丁寧でサービスが良いか分かりました。中3でザルツブルクにセミナーを受けるため一人で行きました。そうした子供時代からの国際的な経験も良かったと思います。


奥谷:お話を伺っていますと19歳でしっかりと自立され自主性をお持ちなのに感心します。ご両親様もそうした子供の自由を尊重する子育てをされて来られたのでしょうか?

髙瀬様:私達の両親は音楽のこと以外のどんな事でも、私の話を真摯に聞き、受け止めてくれます。いつも自由にのびのびとした環境を作ってくれ、いつも私達姉妹を信じて応援してくれています。父はコンチェルト演奏会が終った昨年冬に、新しくヴァイオリンを買ってくれました。本当に感謝しています。

奥谷:それは良かったですね。ご両親様妹様とご家族の応援が心強いですね。今後の抱負をお聞かせ下さい。

髙瀬様:ウィ―ンは日本人も多いですが、まずはウィ―ンの生活に慣れて、より音楽性を身につけ、演奏家としていい仕事に繋がるのもが探せたらと思います。


奥谷:ウィ―ンでのご活躍を期待しています。何かを得て帰って来て下さい。また演奏を楽しみにお待ちしています。本日は素敵なお話をどうも有難うございました。

髙瀬様:どうもありがとうございます。頑張りますので今後ともどうぞよろしくお願い致します。

{F6862B10-E17B-499E-89A0-CB21FB79B0AA}
左から礼子様 葵子様