音輪
~主催者による過去出場者インタビュー~

【第6回】2017年5月14日

谷川俊介様(京都大学大学院理学研究科修了)
《コンクールご出場》
第4回アマチュアSectionピアノ一般最上級部門第2位
コンチェルトオーディション合格
2017年5/28コンチェルト演奏会ご出演

愛媛生まれ  小学校1年まで奈良在住
その後神奈川に引っ越され、大学・大学院時代は京都、現在大阪在住

第5回竹村秀一様に続き、5/28コンチェルト演奏会ソリストの谷川俊介様にあべのハルカスにてインタビュースタートです♪

奥谷 : 本日はコンチェルト演奏会前の貴重なお休みにどうもありがとうございます。本日はどうぞよろしくお願い致します。
谷川様 : よろしくお願い致します。
奥谷 : 谷川様は昨年第4回アマチュアSectionピアノ一般最上級部門で見事2位を受賞され、コンチェルトオーディションにも合格されました。おめでとうございます。
谷川様 : ありがとうございます。
奥谷 : 谷川様は3月に京都大学大学院を修了され4月から新社会人になられたところですよね。部門は大学・大学院生でなくて一般最上級でエントリー頂きましたね。学生さんも飛び級で一般最上級にご出場頂けますが、結果的にコンチェルトオーディションにも合格され良かったです。
谷川様 : 当初違う部門に申込みどうしようかと思いましたが良い結果が出せて良かったです。
奥谷 : 新社会人生活は生活環境も一変し、色々慣れるまでが大変ですね。
谷川様 : もう4月も終わり初任給を頂き親にプレゼントをしました。1週間もあっという間に過ぎますね。
奥谷 : 素敵な息子さんですね。20代後半から時の経つのがはやくなり、30代はあっという間でした。京都から大阪に引っ越されたばかりでピアノの練習も大変な中素晴らしいですね。
谷川 : 自宅にピアノがないのでスタジオを借りて練習しています。毎日は難しく週に2,3回1回1〜2時間練習という感じです。
仕事が終わり23:30までとかですね。
奥谷 : お仕事帰りですか!両立され凄いです。限られた時間の中の練習だと、いかに効率的に練習できるかですね。
谷川様 : そう思います。
奥谷 : 理学部物理学科ご卒業とのことですが、本職は何をなさってるのでしょうか?
谷川様 : 再生可能エネルギーに関することで、太陽光発電とか風力発電とか、照明をLEDに替えるとか、省エネに関することをしています。
奥谷 : 最先端ですね。それで仕事帰りはピアノスタジオにいらして本当に音楽がお好きなのですね。音楽との出会いについてお聞かせ下さい。

谷川様 : 5歳ぐらいにクラシック愛好家の父とゲームをしていまして、格闘ゲームでキーが6つあって私は強かったんです。父がそれを見てピアノしてみたらと薦めてくれました。
それから同じマンションのピアノの先生に習いに行きました。
奥谷 : きっかけはゲームからだったのですね。意外です!ご両親様もピアノを弾かれるのですか?
谷川様 : 両親はバイエルを終わってピアノは辞めたようです。
奥谷 : それからはメキメキと上達されたのですか?
谷川様 : 小学校2,3年頃ツェルニーは30番あたり、バッハインベンションやシンフォニアがしんどくて。面倒臭くなって来ました。
ここから6年ぐらいまでかなり厳しい時期でしたね。
奥谷 : 分かります。バッハとツェルニーは私もあまり好きではなかったです。もうツェルニー50番とかになってくると嫌な感じでした。
谷川様 : そうですね。うちは父が厳しくて、練習してると今の音は死んでるとか汚いとか批評してくれたんです。父は耳が良いようで、今あるのは父のお蔭なのですが、当時全く分からなくて泣きながらピアノをしていました。
奥谷 : 泣きながらは厳しいですね。しかしお父様は親身にアドバイスをして下さっていたのですね。お父様の存在は大きいですね。
谷川様 : 褒められたことは一度もないです!
奥谷 : 厳しいですね。それだけ谷川様に想いを託されていたのかもしれませんね。
谷川様 :中学に入り自分で楽譜を買い出してショパンやリストを勝手に弾きだしました。
発表会では先生に頂いた曲を弾いて、普段はショパンバラード1番とか遊びで好き放題弾いていました。
奥谷 : ショパンとか曲を色々弾きたくなりますよね。私はベートーヴェンが大好きだったのでベートーヴェンやショパンとか好き放題弾いていました。ツェルニーとバッハはどうなりましたか?
谷川様 : ツェルニーはレッスン3日前、バッハはレッスン1日前にして行ったりでしたね!
奥谷 : お父様はそれに対しては?
谷川様 : やはり厳しくて。高校生になり厳しくはなくなりましたね。

奥谷 : 大学受験に際し音大は視野にありましたか?
谷川 : 音大に行きたいと思いましたが、父が反対でした。演奏家として生計を立てられるのは一握りだし、男子が音大に行き失敗したらどうなる?と。将来の幅が広がる一般大学の道を選びました。当時私はコンクールを受けたりもしましたが結果を出せていなくて。父がそう言ったのも今から思えば無理もないです。
奥谷 : 私も親に同じことを言われました。
何故京大を選ばれたのですか?
谷川様 : 私は研究者になりたくて、ノーベル賞を取っている方の多い京大が研究するなら良いと思い選びました。受験時代も高校2,3年ずっとピアノは続けて当時はカワイの先生にずっとみて頂いていました。
奥谷 : 受験期に辞めたりもよく伺いますが、ずっと続けられたのは凄いですね。
高校生あたりポップスを聴いたり男子だと途中ピアノを辞めたりもされるのを聞きますが、クラシック一筋だったのですか?
谷川様 : 演歌が好きです!分かりやすい歌詞を並べるだけでなく旋律も良くって。
奥谷 : お若い方で渋いですね!例えばどなたがお好きですか?
谷川様 : 八代亜紀さんとかです。
奥谷 : 意外です。舟唄とか?
谷川様 : 良いですね!
奥谷 : クラシックでは好きな作曲家とかはいらっしゃいますか?
谷川様 : 特に好きなのは、モーツァルト、ショパン、ラヴェル、プロコフィエフです。
楽譜を買って見てるのが好きで、当時テレビでスーパーピアノレッスンが放送されていました。
奥谷 : 私も観ていました!カツァリスとか、モーツァルト、ショパン、チャイコフスキーコンツェルトもありましたよね!
谷川様 : ありましたね。ルイサダもありましたね。これをきっかけに目標が出来てきてクラシックがどんどん好きになって来て、ちゃんとやりたいなと思うようになりました。

奥谷 : 京大に入学されてからは如何でしたか?
谷川様 : 京大音楽研究会に入り、1年間先生はなしでした。そこでの出会いは非常に大きかったです。凄く上手い方が多くてびっくりしました。ピアノだけでなくヴァイオリンとかもいるんです。自分の演奏が雑なことに気づきました。この頃父の言葉がはっきりと分かりだしました。
奥谷 : 京大音楽研究会はよく伺いますね。第1回グランプリ栗本康夫様も確か京大音楽研究会に所属されていましたよね?
これまでも京大OBの方にコンクールにご出場頂いていますね。
研究会はどんな活動内容なのでしょうか?
谷川様 : 70〜80人くらい入っていて毎日来てるのが10人ぐらいでした。京都アルティで年2回発表会があり、どちらか1回出られます。毎回大きい曲をするんです。
ショパンソナタを1回生に譜読みを始めて1年間で駄目なところがいっぱい出て来ました。3月にOBに聴いて頂いたら、先生についてもらったらとアドバイス頂きました。
京芸や堀川の先生で最初怖かったです。
これまで好き放題やって来たのがバレて、基礎がなってない!と。基礎を1からやり直し楽譜を1から読み直せと言われました。
奥谷 : 結局好き放題弾いていても遊びの域で、弾きたい大曲は基礎があってのもので難しい曲に憧れる前に基礎が大事なんだなと私自身も痛感しています。
谷川 : そうですね。サークルの先輩や先生の影響は大きく、必死で自分の演奏も聴いて、人の演奏を聴く大切さに気づきました。
自分の耳で色んな人の演奏を聴いて、何故この演奏は心打たれるかとか分かることが大事と気づいたんです。
奥谷 : 自分が弾いたら終わりで人の演奏に興味ない方も多いようですが、谷川様のようにコンクールなどでは様々な方の演奏を聴ける機会なので、どんどん色んな方の演奏を聴いて学んで頂けたらと思います。
谷川様 : そうですね。今も人の演奏を聴くのは好きです。音の好みはありますが。

奥谷 : ソロ以外アンサンブルもされているようですが?ブラームス良いですよね。
谷川様 : 雨の歌良いですね。大学4回生から修士1年にはチェロの上手い子がいてショパンやラフマニノフのチェロソナタをしました。
毎年1曲大きいものをして、弦の息の仕方を学びました。それがまたピアノソロにも活きています。
奥谷 : デュオばかりしているとソロが怖くなったりしますが次にソロを弾く勉強にもなりますね。
谷川様 : そうですね。弾く幅が広がって、モーツァルトとかあまり以前は聴きませんでしたが、ピアノカルテットをしてから好きになりました。京大同好会の仲間の薦めで色んな曲を聴いてみてすごく幅が広がりました。自分の音を突き詰める過程で、モーツァルトは凄い、良い曲だなと思うようになり、今は大好きな作曲家です。嫌いな作曲家はないですね。
奥谷 : 仲間との出会いは大きいですね。様々な作曲家に興味が広がり新しい世界に出会えて素敵ですね。
谷川様 : 大学時代はラフマニノフを弾いたり、デュティユーとかロシアの現代物が好きで。ショパンとかも良いですがプロコフィエフとかも何度も聴いてると頭に残る旋律で不協和音の響きを使うのが巧く、ソナタ8番とかも弾きました。
奥谷 : 受賞者披露演奏会のシューベルトもまた新鮮で良かったですね。
谷川 : これまであまり取り組んでいない作曲家で大変でした。ベートーヴェンもドイツものはしてなくて、提示と展開の繋がりとか難しいです。
奥谷 : 大学院時代も精力的にご活躍だったのですか?
谷川様 : 群馬草津国際アカデミーでは音大生やピアノ講師とプロのレッスンを受けました。その方々との交流も大変勉強になりました。

奥谷 : コンクールご出場のきっかけは何でしたか?
谷川様 : 昨年コンチェルトを弾かれた大阪府立大の中西聖嗣くん、一昨年コンチェルトを弾かれた阪大の中川愛子さんとも知り合いで、阪大主催の弾き合い会にも参加していました。コンチェルトをしたいという気持ちと、修士2年の腕試しに出ました。
奥谷 : 今回何故シューマンでしたか?
谷川様 : 新社会人なのと本番まで半年なのを考えると、昔1楽章を弾いたラヴェルかシューマンが弾きたいと思いました。

奥谷 : コンクールにご出場頂き如何でしたか?
谷川様 : コンチェルトが目標ではありましたが、順位より自分で楽しんで弾けて講評ももらえるので良かったです。
本選時にはコンクールというのを意識せず、いつも通りを審査員に聴いてもらう気持ちで臨みました。
いつもより上手く弾きたいと欲が出ると力んで空振りとなります。1日前2日前は緊張しましたが、コンクールだけど人に聴かせると思って、演奏会の意識で今弾けるように弾こうと思いました。そういう意識になったのは今回が初めてでした。
審査員と話せる機会は貴重だと思います。

奥谷 : コンクールにこれから出場頂く皆様へメッセージをお願い致します。
谷川様 : とにかく力まず、練習は大変ですが絶対上手くなれるチャンスだから、コンクールを1つ設けて技術的にも詰めて自分で出来る限り頑張って下さい!
周りの同世代の人など積極的に聴いてみてもらうと率直な意見が貰えて良いです。
同時に人の演奏も聴いて一緒に考えるととても勉強になります。
京大音楽研究会でしてきたことですが、演奏会前に練習会を昼から夜までして思ったことを少人数で言い合うんです。1人だけではどうしても独りよがりになりますし、その点京大はストイックな方が多く、皆さん突き詰めるのでレベルが高いです。仲間とは録音してラインで送ったり聴き合っています。
奥谷 : 学生時代からのそうした仲間はこれからの人生にとっても宝ですね。今後の抱負をお聞かせ下さい。
谷川様 : 室内楽ではブラームスクインテット、ラヴェルトリオ、メンデルスゾーントリオ2番など挑戦したいです。ソロではアルベニスのイベリアも弾いてみたいです。

奥谷 : 最後になりましたが、5/28コンチェルト演奏会に向けて、皆様にメッセージをお願い致します。
谷川様 : 楽しんで頂けるよう頑張ります!
一生に1回かもしれない機会なので全力でやりたいと思います!
奥谷 : 今回谷川様のピアノの原点だったお父様も神奈川からお越し頂けるようで有難いですね。お身体に気をつけて斑鳩でお待ちしています!本日は良いお話をどうもありがとうございました。
谷川様 : どうもありがとうございました。
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