小学生の頃、彼の家に遊びに行った時にプリンタから出力されたもの凄い量の連続用紙(1枚毎にミシン目入っていて山折りと谷折りが交互に入っている)があったのを覚えている。当然ながら何が印字されていたのかは全く分からなかったが、彼の父親の仕事に関係するものであることは何となく分かった。彼曰く「うちには紙(恐らく裏紙)がいっぱいあるからメモでも落書きでも書き放題」と言っていた。今思えば、それは何かを自動で動かすためのプログラムが印字されているものだったに違いないが、彼の現在の仕事がIT会社の社長なのだから、それは間違いなく彼に宿っていた父親のDNAなのだと思う。

 

1年ほど前に彼を含めた4人で飲む機会があった。その時に「美術を極めるつもりは無かったのか?」と聞いてみたところ、やはり芸大に入学したかったそうだ。別の国立大学に入学した後も2年間は芸大を目指して勉強していたらしい。類い稀なるマルチな才能を持つ彼故、その希望が叶わなかった時、それならということで今後必ず必要となるであろう技術が「IT」であることを早々に見極め、その世界に入っていったのだと思う。

 

その飲み会に同席していた雅彦くん曰く「一緒にスナックへ行って自分が一生懸命話題作りをしていても、何も話さない山崎くんが女性の似顔絵をスマホへ描くだけで結局彼の周りに女性が集まる」とボヤいていた。彼のスマホに残っていたタッチペンで描いたその絵のひとつを見せてもらったが…、あんな感じで描かれたら誰だって嬉しくて舞い上がってしまうと思った。その為だけでは無いが、彼は今でも絵は描き続けているらしい。

 

彼とは幼稚園から高校1年まで同じ学校で同じクラスだったが、彼が東京へ転校したことを知らなかったので、それは恐らく高校2年で別のクラスになってからのことだと思う。もし彼が、もっと早くから刺激の多い東京で暮らしていたのなら、芸大へ進学して今とは違う世界で輝いていたのかもしれないと思うこともあるが、自然に囲まれたストレスフリーのあの田舎で育ったからこそ今の彼があるのかもしれない、う~ん難しいところだ…。

 

彼のことだから、使う側にとって優しいソフトウェアを作る多くの優れたIT技術者をこの日本へ送り出してくれるに違いない。