その「Q.V.B.」の私の発音が日本的だったせいか「Q.V.B.」がなかなか伝わらず結局「Queen Victoria Building」と言ったらやっと「オ~ォ、Q.V.B.!」と理解してくれた。何度もそう言った(発音した)はずなのに…。するとそのオジサンは「途中まで一緒に行ってやる」と言ってくれた。この明るい雰囲気の繁華街での拉致監禁はまず無理だろうと判断して案内してもらうことにしたが、路地からオジサンの仲間が突然出てきたりしないか…等、周囲に気を配りながら並んで歩いて行った。

 

10分ほど歩いて「ここを真っ直ぐ行けば大丈夫」と言ってくれたところまでくると、オジサンは笑顔で握手をし、そして大きく手を振ってから今一緒に来た道を引き返して行った。その背中を見ながら結局本当に優しいオジサンだったことが分かり、それを疑ったことをとても申し訳なく思った。そしてもしあの時オジサンの家に上がり込んでいれば、もしかしたら楽しい思い出が出来たかもしれないと後悔した。

 

ヨーロッパの何とか調とか何とか様式とかは全く分からないが、「Q.V.B.」は外観も内装もとても言葉では言い表せない程に壮大で繊細だった。私がここを訪れた何年か前には老朽化を理由に取り壊しの危機に直面したことがあったようだが、地元住民の反対を受けて老朽化への対策を施して今に至っているらしい。何かしらの理由をつけて新しいビルに建て替えたがるどこかの国とは大違いだ。

 

「Q.V.B.」での食事は、地下にあるベトナム系の店に入って麺のようなものを食べた。私にお洒落なカフェ系は似合わないので、それ以外ということで探していたらその店が目に入っただけであり、何かの思いがあった訳では無い。シドニーというかオーストラリアで有名な食べ物が「ミートパイ」であることを最近知ったが、当時それを知っていたとしても食べたかどうか分からない。おいしいものは好きだし、身体つきの割には結構食べる方だと思っているが何故か食べ歩きのようなことはやらない。況してや並んでまで食べるなんてことは付き合い以外でやった試しが無い。