Q.V.B.とはQueen Victoria Buildingというショッピングモールのことだ。勿論ショッピングに興味は無いが、世界一美しいと評判の港を持つ都市にある、これまた世界一美しいと評判のショッピングモールへ見てみなければなるまい、ということとで行ってみることにした、ついでに食事も。

 

その日はシドニー鉄道網の中心であるセントラル駅までは行かずにその手前のキングスクロス駅で下車した。南半球最大の繁華街という触れ込みの地区を歩いてからQ.V.B.へ行くことにしたためだ。「南半球最大」と言っても南半球はオセアニア、南アメリカそれとアフリカしか無いので、その触れ込みは微妙な表現かもしれないと思っていた。駅を降りると各通りを表す標識があるが、これを見ただけでも海外へ来たという気分に浸れる。

 

駅を出るとその繁華街がある「Darlinghurst Road(ダーリングハースト・ロード)」という標識は直ぐに見えてきた。歩き出したら横から恐~いお兄さんが出てきたりするのか?なんて少しドキドキしていたら、薄暗い雰囲気は全く無く楽しそうなエリアのような感じだった。そしてあっという間にその繁華街は終わったので、そんなはずはないと思い近くを歩いていた優しそうな初老のオジサンに聞いたらやはりここだけという返事だった。繁華街で遊ぶつもりは全く無かったが少々気が抜けてしまい「あぁ…そうなんだ…」という私の落胆振りをそのオジサンは感じ取ったのか「私の家に寄って行くか?」と言ってくれた。

 

相変らず優しい人が多いなぁ…と思ったが、「ちょっと待てよ」ここは南半球最大の繁華街だから、もしかしたらそのオジサンの家(と言う拉致監禁場所)に入った途端に身ぐるみ剥がされ…なんてことになったら日本への帰国も儘ならない…と思い、「Q.V.B.」へ行かなければならない、という理由をつけて丁寧に断った。