「インド洋を見たかった」これがフリーマントルという港町を行先のひとつにした理由だ。

 

パース駅から電車で約30分、その終点がフリーマントル駅である。そこへ向かっている途中に降ってきた結構な雨はフリーマントル駅へ到着しても止まなかった。仕方が無いので、改札を出た待合室で雨宿りをしていたが数分後には空が明るくなり若干だが雨も小降りになってきたので、駅前のロータリーへ出てみた。(頭頂部が薄くなった)今なら僅かの雨でもあっと言う間に落ち武者のようになるので傘は手放せないが、当時はそんなことは無かったので帽子も被らなかった。雨が上がる前に駅を出たのは駅の待合室が予想していたよりもかなり狭く、電車を降りた沢山の人たちがそこで雨宿りをしていて混みあっていたから、というのもある。

 

起床してから何も食べずにそこまで来たので、電車に乗っている時から「駅に一番近い店で先ずは何かを食べよう」と決めていた。駅から真っすぐ伸びている道路の左側一番手前に喫茶店のような店があった。外観的にはさして特徴の無い店だったが、とりあえず何か食べたかったのでそこへ入った。新しい建物では無かったし、何となく内装がしっくりしていなかったので居抜き物件なのかもしれないと思った。でもでも、オーダーを聞きに来てくれた女性はとても愛想が良く、一目で「アジア人旅行者」と分かる私に「どこから来た?」と聞いてくれたし「ここはとても良い所だ」と色々教えてくれた。そして出てきた食べ物の味も私好みだった。駅に最も近かったからという理由だけで入ったこの店の印象がとても良かったので、またしても好感度ポイントが上がった。

 

空腹も収まったのでインド洋へ向かうべく外へ出た。食事をしている間に雨も上がり、青空が見えてきた。そう言えばフリーマントルだけでは無いが、地図を見ているととにかく直ぐに声を掛けてくれる人いる。ここでもひとりで道路の埋め立てのような仕事をしていた中年のオージーが、その手を止めて私の傍へやって来て「どこへ行きたい?」と聞いてくれた。地図を見せて「ここ」と言うと、「それならあの角を右に曲がれ」と教えてくれた。優しいなぁ…。