既に面接を終えた人の中に、自分のスラックスの色に合いそうな上着を着ている優しそうな人が居たので、恐る恐る借用を頼んでみると快く貸してくれたので、それを着用して面接に臨んだ。

 

面接で唯一覚えているのは「どのような気持ちで仕事に取り組みますか?」という質問とその回答だ。何日か前に寮の友人の部屋にあった先人達の名言集を何となく読んだときに心に残っていた「賢明な思想より慎重な行動」をそのまま言ったら、面接官は少し笑いながら「哲学者みたいですね」と言った。もしかしたら私のその回答は、実は殆どの人が知っているような名言で私がそのことを知らなかっただけだったのかもしれない、と恥ずかしくなった。

 

全員の面接終了後接に担当者から「本日の参加者全員に残暑見舞いを送ります。内定か否かは差出人の名前で判断してください。差出人が社長名なら内定、私(渡辺)ならそうではなかったということになります。」。面接での回答が前述の通りであったこと、それと筆記試験の結果も「出来た」という満足感が無かったことから、帰宅後早々に次の面接先を調べ始めたが私を受け入れてくれそうな会社はなかなか見つからなかった。

 

そのため就職先を「県内⇒東北圏」へと広げようと考え始めた頃、社長名での残暑見舞いが届いた。「へぇ~、あれで内定になったんだ…」と大した就職活動もせずにその活動を終えることができたことに安堵した。そして、その残暑見舞いには「入社までの準備等」の説明があるので次は2月の最初の日曜日に集合するようにと書かれていた。