アルバイト先が九段下だったことから、その練習コースは皇居の周回だった。アルバイト終了後にその日走るメンバーと一緒に地下で着替えをしたら、武道館や科学技術館のある北の丸公園の中を通って「北桔橋門」へ到着するまでの約500Mをウォーミングアップ目的で軽くジョギングをする。

 

初めて武道館を見るまでは武道館と国技館の外観の区別がついて無かったが、一度見た後はその重々しい存在感が記憶に焼き付き、以来忘れることは無かった。ミュージシャン達の成功を意味する「武道館コンサートの会場がこれか…」と思ったと同時に、その外観が寺院のようでもあり富士山のようでもある、そんな日本古来の各武道を極めたい武道家の憧れのその場所で、楽器を鳴らしてみんなで大騒ぎをしても罰が当たらないのか、と余計な心配をした記憶がある。

 

武道館でコンサートを開催できるミュージシャンはかなりの人気者なので、コンサートが行われる日は周りの駐車場もそのお客さん達が乗ってくる自動車で一杯になるのだが、その駐車場に停まっている自動車群の雰囲気からその日のミュージシャンが予想できる場合がある。一番分かり易かったのが「矢沢永吉さん」だった。私は自動車に全く詳しくないのでメーカーや車種は分からないが、車体へのデコや社内の飾りが凄まじかったからだ。

 

「北桔橋門」がスタート・ゴールだと、スタート直後の500Mとゴール直前の300Mが結構な上り勾配なので、皇居の周回としてはどちらかと言うと若干タフなコースかな、と思いながら走っていた。