土曜日の夕食は寮では無く金野さんとビールを飲みながらの外食だった。金野さんは飲むと顔が薄っすらと赤くなる程度だが、私は少しでも飲むと直ぐに体中が真っ赤になるので基本的には飲めない体質である。

 

「次は何処へ行く?」と言われたので「この赤顔が目立たないところ」と言ったら「花嫁学校」というキャバレーに連れて行かれた。店の前で「扉を開けてみろ」と言われたので、店の扉をそーっと押し開けて中の様子をうかがおうとしたら、その途端に中から強い力でその扉が引っ張られ、「いらっしゃいませー!」という大きな声をあげている数人の女性達の足元に転がってしまった。薄暗くてピンク系の照明がキラキラしている店内は、なるほど私の赤顔など目立ちもしない。

 

ここでも金野さんは「顔」のようで、案内された席に座る間もなく直ぐに店の女性たちと楽しそうに話をしている。「こ、これが大人の世界か」と思った。「お前も座れ」と言われて金野さんの隣(の女性)の隣に座ったら、その場所から店の奥の席に日本史の野崎先生が楽しそうに女性と話している姿が見えた。店内は暗かったが今でも両目の視力が1.2の私には間違いなく野崎先生であることが分かった。そして一瞬だが目が合ったような気がしてドキリとした。でも黒縁の分厚いレンズの眼鏡をかけている野崎先生だから私とは気がつかないはずだ、と自分に言い聞かせるようにした。

 

週明けに校内の廊下で野崎先生とすれ違うことがあったが、なんとなく気まずい雰囲気を感じたのは私の方だけだったのだろうか…。

 

金野さんは今どこで何をしているのかなぁ…。