それから10年。

母は裁判を続け、事実が認定され、Aさんは大手物流会社からの休業損害や慰謝料等を勝ち取り、暮らしていけるようになった。

 

 裁判の間にも時々、病室へAさんを見舞っていた母。

 母が病室へ行くと、Aさんにも

 

「この人だけが頼りだ」

 

という思いだけはあるようで、母の存在だけは認識できた。

いつも手を握ってきたらしい。

奥さんの事もお子さんの事も分からなくなってしまったのに。 

 

相手がどんな状態でも、

「こちらの誠意は伝わるんだな」

という事。 

 

そして、母が人生を通じて、背中(行動)で教えてくれたことなので、母のように「誠意を尽くして、その生き方を貫く」道を、私も歩んでいきます。 私から見た祖父は作業着をきたカーネルサンダースみたいな優しい印象でしたが、確かに寂しさのようなものも感じました。51歳の今では、祖父の気持ちもよく分かります。ただ、他人には他人の選択がありますが、それを自分が選ぶことは出来ません。 

 

自分自身がどちらへ進むかは自分の選択。