12/3 LEGEND -S- 洗礼の儀
そこでみたものの衝撃が大きければ大きいほど、祭りのあと、心にぽっかり空いた穴が大きくなる。このブログを書きながら、まさにそれを実感している。彼女達のライブには、毎度、非日常から日常へのリハビリが付き物だが、今回のライブの、特別な状況が引き起こした効果だろうか、私の心は未だ現実世界に戻れずにいる。
本当にそこにいたのか、あれは実際に起こったことだったのか、一歩会場の外に出ると、現実に薄められてしまう記憶を手繰り寄せたくて、頭の芯を冷たく保とうとしたライブもあった。しかし、12/3、SU-METAL生誕の地、広島で行われたライブLEGEND-Sは、そういった姑息な手段を許してはくれなかった。
17時20分を過ぎた頃、黒いローブに怪しげなマスク、魔法陣を思わせるペンダントを身に着けた、約一万人が見守る中、厳かな雰囲気の映像でライブはスタートした。その内容から、すぐに今回のステージが、広島の悲しい歴史を下敷きにしたものであることが分かる。一万人が固唾をのんで見守る中、突如、メインステージの向こう正面、巨大なキツネの口の中から、煙に包まれたSU-METALがゆっくりと姿を現す。床に突き刺さった怪しげな錫杖を、力を込めて引き抜き、六匹のキツネの頭部が支えるサークルステージへと歩みを進める。手にした杖でステージをリズミカルに叩きつけ、舞台を引くSLAVE FOXを鼓舞するSU-METAL。舞台はゆっくりと花道を進み、メインステージへと近づいていく。目の前ほんの数メートル先には、等身大の20の女の子の姿は無く、SU-METALとして完全に覚醒した姿があった。
突如として、歪んだギターサウンドが空気を裂き、かつて耳にしたことのない暴力的な音の洪水が会場のボルテージを一気に急上昇させる!気づけば、和太鼓をたたくSLAVE-FOXも!"BABYMETAL DEATH"に代わって、新たな時代の幕開けを告げるovertureだろうか?非常にbrutalだが、最高にかっこいい!この曲気に入ったよ!
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今回の一大スペクタクルショーについて、語りたいことは多いが、この日、最も印象に残ったのはSU-METALの歌唱だった。ここでは、特に"no rain no rainbow"について語りたい。以前から、この曲のテーマとBABYMETALの世界観が私の中で一致せず、それなりにいい曲ではあるが、ノスタルジーが過ぎるんではないかと、いまひとつ飲み込めずにいた。歌詞の内容が恋愛をイメージさせすぎるのもその理由のひとつだろう。10代の歌にしては重過ぎると思っていたのだ。しかし、恥ずかしながら、この日ようやく、この歌が伝えようとしているものが分かった。爆心地のすぐ傍で、そしてYUIMETALが居ないステージでこの歌を歌う意味が心を揺さぶり、胸に熱いものがこみ上げた。
"no rain no rainbow"
雨が降らなければ虹は出ない。
大切な誰かとの永遠の別れの歌が、広島に起きた破壊と再生の歴史を思い起こさせる。もちろん、YUIは健康を取り戻して復帰するだろう。だけど、SU-の20歳のステージはただ一度、この瞬間だけ。どんなに無念だったろうか。
"どうして眠れないの?どうして夜は終わるの?"
歌いだしから、言葉の意味が胸に突き刺さるのは、彼女の思いが十分にメロディーに乗せられていたからだろう。いつにも増して、とても丁寧に、丁寧に歌っていることが伝わってくる。歌唱力の向上だけではない、成熟した大人の内面を歌に乗せられるようになったことに気づかされ、また熱いものがこみ上げてくる。この地で歌うことで、この歌とともに、彼女もまた生まれ変わったのだろう。本物のスターがそこにいた。
もうひとりの主役、MOAMETAL
ちょっと想像してみてほしい。いつもそばにいてシンメトリーに踊っていた相棒が、本番直前で居なくなる状況を。相棒の動きをきっかけにして踊っている部分、歌っている場面はたくさんあると思うんだ。普通はとてもじゃないが完遂できないと思う。
show must go on . 普通じゃない状況、なのにやり直しは効かない。正直なところ、メインシンガーSU-以上のプレッシャーが襲ったと思う。しかし、まさに"no rain no rainbow"彼女は困難を見事に乗り越えた。私が目撃した12/3のステージからは、余裕すら感じられたように思う。我々凡人のいる此岸から、彼女もまたこの日、彼岸へとたどり着いたのだろう。ショーのラストシーン、冠を戴いた彼女の自信あふれる姿が、目に眩しかった。
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熱かった会場の外には冬の夜空。またしても胸にぽっかりと開き始めた風穴を、その夜はさわやかな風が吹き抜けていった。
ありがとう、広島
ありがとう、BABYMETAL
心からおめでとう、SU-METAL
