本書は2009年1月10日に文春文庫として刊行された。

作品は映画化されていた。映画を観てから原作を読んだことになる。

  読んで驚いたのは、映画のままの登場人物であったことである。

  主人公はまほろ駅前で便利屋を開業している多田啓介。バツイチで自動車の営業をしていたのだが、いまは多田便利軒の主に納まっている。

  仕事ぶりはまじめで、業務拡張を考えている。

  そこに、高校時代に因縁のある同じバツイチの行天春彦が入り込む。

  春彦はまるでやる気はないのだが、洞察力があるので、啓介の行動力を助ける。

  この二人が便利軒に仕事を依頼しにくる人びと助けるわけである。

  この二人を中心にして物語は展開するわけなのだが、しをんさんの人間描写は的確にして精確。物語に引き込んでいくわけである。

  今年の秋には『まほろ駅前狂騒曲』と題して続編が映画化される。

  人間には妙なきっかけで巡り会いがあり、その縁が強すぎて離れられなくなることがある。

  三浦しをんの世界は、人間の魅力を語ることにより物語に引きずり込むという魔性があるような気がする。