本書は新潮文庫として昭和26年7月5日に刊行された。
長年夢に見、憧れていたフランスを訪れた熱気が伝わる力作である。
筆者がなにゆえ、4年滞在したアメリカを後にリヨンまで出かけたのか。
本人に聞いてみないとわからないが、フランスはパリを見たとたんに筆者は舞い上がる。
フランス人の詩を読み、文学を読んでフランスに恋い焦がれた筆者はパリとリヨンで女に恋することを控えて歩き回る。
日本人が洋行できたのは裕福であることが前提だが、日本を出たいと考える日本人は多かったようで、筆者はアメリカで知り合った日本人と出会う。
そういった出会いの描写にしろ、フランスの風光に対する描写は見事なものである。
わたしは荷風は単なる女好き、遊び好きな男性と思っていた。
わたしが荷風を知ったのは小学生の時に見た女性に囲まれた荷風の写真である。週刊新潮に掲載されていた記憶がある。
その筆力、物事のとらえ方に見直さざるを得なかった。
これで、岩波書店『荷風全集』に取り組むきっかけをつかんだと喜んでいる。何で全巻買い揃えようと考えたのかはまったく記憶にないのだが、これでつじつまが合ったわけだ。