本書は平成21年10月1日に新潮文庫として刊行された。
父の死後10年の執筆である。
父をそれだけ強い気持で愛し続けた、つまり父が全力で娘を愛した相思相愛の結果があったのだろう。
娘は人見知りし、わがままですぐ泣く。
物わかりが悪く手におえない。そんな娘像を正直に書く。
周平さんは、
「普通が一番」「挨拶が一番」「感謝の気持ちと謙虚な心を忘れない」ようにと、娘に語りかけた。
その娘さんが書いたこの作品は胸を打つ。
周平さんの娘さんと奥さんと鶴岡を愛する素朴さが胸を打つ。
つまらないテレビから出来るだけ背を向け、時代小説の執筆に全力を尽くした。
それだけに、娘さんが読者の反応や図書館での父親の著書の借りられている点数報告に微笑みで答えたり、何とも本物の人間像が明らかになる。
わたしは、なぜか山本周五郎より、池波正太郎より藤沢周平が好きである。彼が虚構の世界を描いたとしても、そこには必死に自己を貫こうとする人間が存在する。
娘が父との思い出を語れる、余裕ができなければできない。
平成21年にこの書ができたことに感謝する。
わたしが生きているかどうかわからないが、平成31年に展子さんが父の死後20年の書を出してもらいたいものだ。